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しおりを挟むジークバルト
観覧試合は、無事閉幕した。
そして今。
俺の隣りで、拗ねているハルがいる。
「僕のワクワク返して!」
始め、ハルが何を言ってるんだろう?と思ってたけど、訳を聞いて、期待を裏切って申し訳ないと、謝ったが、納得しないのか、プリプリしてる。
それは、それで可愛いのだが、、、
俺が、試合で相手を瞬殺してしまったからだ。
優勝者と俺が最後に試合をするのだが、今回の優勝者が、カインだった。
「始め!」の声がして、多分、、、
3秒くらいで、決着した。
まぁ、遊んでやっても良かったが、早く終わって、ハルに会いたかったから、剣を合わせた直後に、カインの首元に剣を当てた。その瞬間、カインは剣を捨てて降参と両手を上げた。
それで、試合終了。
「ジークの戦う所が見たかったのに、目を閉じた瞬間終わった。なんなの!僕のワクワク返して!」
と、話の冒頭に戻る。
んー?どうしたら、機嫌が治るんだ?
そう考えていたら、ハハッて笑う声が聞こえる。
ハルを見ると、俺の膝の上に座ったままぐるりと振り向いて、俺の頬を触りながら
「ジーク、ごめんねぇ。あそこで立ってるジークがさ、凄くカッコ良くてね。本当にカッコよくて、どんなふうに戦うのかなとか、色々考えてて、、、そしたらさ、パッて瞬きした瞬間、相手の人が手を上げてから、どうしたのか、お母様に聞いたら、終わったわよ。って言われて、えーーってなってね、だから、ジークは悪くないんだよ。ただジークが強かった。だけなんだよね。」
ハルが笑顔で俺の頬をむにゅりと、摘むと、今度は、両手で摘む。
ハルは、
「はははっ!こんなにしても、イケメンだね!綺麗だよねー!目が宝石みたい!」
そう言う。
目の前にあるハルの顔がめちゃくちゃ可愛い。そのままチュッとキスする。
「そっくりそのまま返すよ。ハルこそ、綺麗で可愛い。ハル、イケメンって何?」
「あっ!イケメンって言葉は、ここにはないんだね?うーんと、いけてる?ん?えっと、凄くカッコイイ人の事を向こうではイケメンって言うんだ。ジークみたいな人とか、だね?でも、この国の人?世界は皆んなそうだよねぇー!」
「そうなのか?ハルのいた所は、皆ハルみたいに綺麗で可愛い人が沢山いるんだろうか?」
「いやいや、僕は普通だよ!」
「それはない。皆ハルに見惚れる。くらい可愛い。」
ハルは、頬をピンク色に染めて、首を横に振ってる。ふふっ可愛い。
「~っもう!うーー僕は誰にどう思われてもなんとも思わない。ジークがそう思ってくれるだけでいいからぁぁ。」
と、ぎゅーと俺に抱きついた。
俺も、あまりにも可愛い事を言うハルを抱きしめる。
そして、ふっと、思い出す。
ハルの誕生日のプレゼントを届いていた事を。
「あっ!ハル?ちょっと待ってて。」
ハルを離して、素早く頬にキスして、部屋から出て、セバスを呼ぶ。
「セバス、あれは届いたか?」
「はい、こちらに」
と、小さな箱を受け取る。
「ありがとう」
そう言うと、部屋へ戻った。
部屋へ入り、
「ハル、おいで」
向かい合わせて座り、箱を開ける。
箱から出て来たのは、俺の目の色と同じ紫色の宝石が付いた指輪だ。
ハルの手を取り、左手の薬指にはめる。
うん、良く似合う。と、見ていたら、手の甲に水がポタリと落ちた。
顔を上げ、ハルの顔を見ると、ハルが泣いていた。
涙が頬を伝い落ち、手の甲に落ちていく
「ハル?」
俺は、ハルの目元を親指で優しく拭う。
「・・・ジーク、ひっ、くっ、ありがとうぅぅ、、、う、嬉しいぃぃ」
嗚咽を漏らしながら、泣きながら笑うと
薬指の指輪を口元に持って来て、そっとキスをする。
その仕草が、あまりにも、綺麗で愛しくて、見惚れてしまう。
「ジーク?これ、どうして?」
「ん?あー遅くなってごめんな。誕生日のプレゼント。」
「えっ!あっ、そう、そうなんだ・・」
ハルの少し、暗くなった声に焦る。
「ハ、ハル?嫌だったの、か?」
ハルは、首をブンブン横に振る。
「ち、違うよ!嬉しい!嬉しくて、本当に嬉しい。ありがとうジーク。」
「何か、気になる?あ、色が嫌とか?」
「ううん!色はジークの色でしょ?嫌な訳ない。あ、あのね、僕のいた所はね、結婚する人に左手の薬指に指輪を送る習慣があるんだ。だからね、そうなのかな?と思って、、、」
「ん?そのつもりだが?ん?ハルは結婚してくれるんだよな?」
「えっ!うん!そうだけど、こっちの世界でも同じ意味なの?」
「同じ、なのかな?こっちでも、結婚する相手に左手の薬指におくるぞ。俺はそのつもりで、ハルに送ったよ。」
「そっか、良かった。嬉しい。僕もジークに指輪送りたい。でも、僕、お金ないから、どうしよう。」
「ハル、ありがとう。気持ちだけで充分
だ。」
「嫌だ、送る!どこかで働いて、、、」
「駄目だ!ハルは働かなくていい。」
「でも!お金ないと、買えない。」
「金の事は心配しなくて大丈夫。俺が腐る程持ってる。」
「いや、違うよ。そう言う事じゃなくてね、んーどう言えば伝わるのかな?えっとね、家族からとか貰ったお金じゃなくてねぇ、物をあげたいって人の為に、自分の労働力で貰ったお金で買ってあげるの。分かるかな?ジークだって、自分でお仕事してお金もらって、そのお金で僕にプレゼントくれたでしょう?」
「うん、何となくだがハルが言ってる事は解る。だが、ハルは働かなくていい。」
「うーん、まぁ僕に何が出来るかって言われたら、分かんないけど。ジーク、ちょっと考えさせて。」
「えっ、なんで?」
「なんでって、僕がジークに指輪送りたいからだよ。」
「・・・わかった。」
もう、俺はそれ以上何も言えなかった。
だから、この話は保留になった。
だが、指輪を喜ぶハルを、ますます愛おしく思った1日だった。
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