[完結][番外編更新中]氷の騎士は、異世界から来た運命の番を溺愛する。

りさあゆ

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      ジークバルト

 周りの目が気に入らない。
 ハルを見るな。視界に入れるな。
 ハルを連れて来るのは良かったが、皆がハルを見る。
 黒髪、黒目が珍しいからな。
 宰相のマルクスなんかは、可愛いな、なんて言いやがるから、サッサッと視界から離す。
 ヴィーの部屋に連れて行けば、侍女達が興奮してた。
 まぁ、あれは心配しなくて、大丈夫だろう。
 本当に連れて来て良かったのか。
 ハルは、俺の腕の中で、キラキラした目で、「凄い!」と興奮する顔が可愛くて、
可愛くて、それを見ると、連れて来て良かったと思ったが、、、まぁ、護衛も付いてるから、何かあれば、すぐに連絡が来るだろう。
 ハルが近くにいるって思うだけで、心が落ち着く。
 さて、仕事をさっさと終えて、ハルを迎えに行こう。

 昼食の時間になり、早速ヴィーの部屋まで、迎えに行こうと席を立つと、
 「ジーク、俺も行くよ。」
 レオと、共にヴィーの部屋まで行く。
 レオの後ろに続き、部屋に入っていくと
 「ジーク、お疲れ様。」
 と、笑顔でハルが待っていた。
 俺は、ハルを抱き上げ、
 「ハル、会いたかった。」
 いつものように鼻先にキスする。
 僕も、と言いながらハルも同じように返してくれる。
 それだけで、幸せで額をくっつけて、笑い合う。

 その光景を見た侍女達から、キャーだの聞こえてきたが、無視して、隣りの昼食を用意してある部屋へ移動する。

 昼食を済ませて、お仕事頑張ってね。のハルの言葉に後ろ髪を引かれながら、執務室に戻り、書類を捌き、以前、ハルが現れるまでは、屋敷で鍛錬していたが、ハルとの時間が減るので、騎士団の方で、報告や内情を聴く為に机上ではなく、訓練場で指導しながら自分も鍛える。
 騎士団は、第一から第八まである。
 今日は、騎士団団長が全員揃っている。
 何故?
 いつもは、全員揃う事はない。
 「どうした?全員揃って。」
 第一の団長のカインが、
 「まぁ、観覧試合前に、総長に手合わせをしてもらいたい、らしい。」
 で、あっちもな。指差す方向を見る。
 皇国軍の軍団長他実力がある者達がいた

 俺は、軽くため息をつきながら、了承の返事をして、準備に取り掛かった。

 かかって来いと、剣の先を叩く。
 何人か相手をしていると、周りがざわつく。
 なんだ?

 この、騎士団の鍛錬場は、一般公開している。
 それは、出会いの場が少ない騎士団の者達が、少しでも御令嬢達の目に止まればとレオが言い出した為、そうなったのだが、俺からしたら、迷惑でしかない。
 なるべく視界に入れないように、団員達を相手していく。
 
 が、様子がおかしい。

 近くにいたカインに、声を掛けようとしたら、カインが固まって、ある方向を見てるので、そちらにチラッと目を向ける。

 「んなっっ!」
 俺が固まった。

 ハルが、ハルがいる。
 笑顔で俺に手を振ってる。

 可愛い。ハルの周りだけキラキラして見える。
 
 いやいや、どうしてここにいる?
 あっ!ヴィーか!あいつっ!
 こんな所にハルを連れて来るなんてっ!

 俺は、剣を放り投げ、ハルの所まで走って行く。
 そのまま、ハルを誰にも見れないように抱き込む。

 「ヴィー、何故連れて来た?」
 俺が地を這うような声を出したからか、ハルがビクッとしたので、優しく頭を撫でる。

 「兄様!ハルちゃんに兄様のカッコ良い姿を見せたかっただけですわ!ねぇ、ハルちゃん!兄様カッコ良かったわよね?」

 ハルは、俺の腕の中から顔を上げて
 「うん!ジーク凄くカッコ良かった。」
 目がキラキラして、吸い込まれそうだ。
 可愛すぎて、クラクラしそうだ。
 「そうか。それなら良かった。が、ここは、危ないから、部屋へ戻ろう?」
 「えっ!もう少し見たい!駄目?」
 上目遣いで言われて、グッとなる。
 断れない。

 「少しだけな?俺もここで見る。」
 「えっ?はっ?何故?ジークを見に来たのに、、、」
 しょんぼり顔で言われて、ヴィーに、
 「そうよね?カッコいい兄様を見に来たのに、見れないなんて、ねぇ?」

 「分かったよ。ハル、動かずここにいるんだよ。」

 ハルの額にキスして、元いた場所に戻る

 そこへ戻ると、カインが
 「番ちゃん?かーわいい!」
 と、一言、俺の殺気が飛ぶ。
 「うぅぅ、、、ごめんって、悪かったから、威圧止めて!」

  ふっと、息を吐く。

 「ほら、始めるぞ!」

 それから、何人か相手をして、訓練場をでる。
 もちろん、ハルをちゃんと、部屋に送り俺は執務室に戻る。

 定刻になり、ハルを迎えに行き、帰りも一緒に帰る。

 一緒にベッドに入ると、ハルはすぐに眠りの世界に入っていった。
 俺は、ハルの寝顔を見ながら、今日一日を振り返る。
 ハルは、俺の訓練場での様子を、目をキラキラさせながら、両親に話をしてた。
 父は、ウンウンと聞き、母は、ハルを穴が空きそうなくらい見つめて、可愛い!なんて可愛いの!って興奮してた。
 いや、話を聞いてやれよ!って何度言おうと思ったか。
 ハルを王城に連れて行って良かったのか、悪かったのか。
 まぁ、ハルが楽しかったのなら、良しとするか。
 可愛い寝顔を見ながら、抱きしめ、そっと唇にキスを落とし眠りについた。
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