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      ジークバルト

 ハルから、過去の話を聞き、怒りが抑え切れない程膨れ上がる。
 ハル以外が、ここにいたら間違いなく圧に耐えられなかっただろう。
 ハルは番だから、全く効かないけどな。

 過去に戻った所で怒りをぶつけるしかないが、かと言って戻れるはずもない。ハルが言うとおり、今から、その辛かった事などなかったように、ハルと2人で幸せになればいい。

 だから、気持ちが抑えきれなくて、ハルに結婚してくれと、願った。
 ハルは、すんなり承諾してくれた。
 可愛い、可愛い、ハル。
 愛おしくて、大事で、大切で、もうどうしようもない程愛してる。
 本当は、ハルの誕生日に結婚を申し込む気だったが、もう気持ちが押さえきれなかった。 
 番だから、一緒にいるのは当たり前だから、今さら結婚と言う形に拘らなくていいのだが、ハルとは正式に伴侶になって欲しいし、きちんと、居場所を作ってやりたかったんだ。ここがハルの家だよって。
 だから安心して俺の腕の中にいて。
 
 さて、明日は、一日ゆっくりして、ハルの誕生日を迎えなくては。
 
 朝、おはようの挨拶と共に一緒に起きる
 それだけで幸せだ。
 本当に。あぁ、可愛い。
 
 今日は、ハルとゆったり、まったりしよう。それをハルに伝えると、ピアノを弾きたいと、そうしようか。
 それだけの事にも、嬉しくて幸せ。
 ハルも同じだと、答える。
 だから、今日は、ハルを独り占めするんだ。
 
 ホールで、ハルのピアノを聞く。
 綺麗な音だ。
 優しい曲もあれば、激しい曲もあり、ハルは俺を楽しませてくれた。

 クルクル変わる表情が見てて飽きない。
 嬉しくてしょうがない、そんな気持ちも伝わってくる。
 
 途中、休憩を挟んだりしながら、本当にハルは一日中弾き続けた。
 たまに、両親が来たりしていたが、今日は、ヴィーの突撃はなかったようだった。
 皆で夕食を取り、満足顔のハルが可愛いくて、抱き上げると、さすがに疲れたのか大人しく身を預けてくれた。
 
 それから、風呂にはいり、ベッドに入る頃には、日付けが変わる時間になっていた。
 
 カチリと、時計の針が12時を差す。

 「ハル、18歳の誕生日おめでとう。」

 ハルは、嬉しそうに
 「ありがとう。ジーク。この瞬間に、ジークといられた事が1番嬉しい!」

 だから本当にありがとう。そう言うハルが可愛いくて、このまま押し倒してしまいそうになって、ぐっと我慢する。
 いや?我慢しなくていいんだよな?
 ん?あれ?そうだ、ハルはヒートになってない?いや、まだなのか?

 「あの?ハル?ハルは、その、、、えーと、ヒートってわかる?」
 
 ハルは、ビックリ顔をしたと、思ったら今後は真っ赤になった。

 「えっと、えっと、知ってますうぅぅ」

 オロオロしながら、小さな声で言う。

 「まだなのか?」
 「うぅーごめんなさい。」
 泣きそうな顔で言うから、

 「いや、いやいや、全然大丈夫!謝る事ではないから、ハル、ハルいいんだよ。ゆっくりでいいから、18歳になったばっかりだし、今まで色々な事があったんだ、精神的に大変だっただろ?俺達は、もうずっと一緒だ。だから、焦らなくていい。ゆっくり進めて行こうな?」

 「ありがとう、ジーク。ヒートの事は学校でも教えてもらったよ。それを抑える薬があるんだよね?だから、お母さんから貰ってたけど、持って来てはないんだけど、こっちにはそう言う薬ってあるの?」

 「あ、あぁあるよ。でも、ハルには必要ないと思うが?」
 「えっなんで?」
 「なんでって、俺がいるから」
 「あっ、あ、えっと、そ、そうだよね。そっか、そう、薬飲まなくていいんだよね?」
 「うん、大丈夫。何かあれば直ぐに助けるから、安心して。だから、ハルは気にせず、楽しく過ごしてくれればいいからね」

 ハルは安心したのか、俺にぎゅーと抱きついて、小さな声で、もう少し待っててねと、呟く。
 それが、可愛くて抱きしめる。
 まぁヒートが来なくても、抱けるんだけど、わざわざ言う必要もない。
 俺達は、ゆっくりでいい。
 まだまだ、2人でしたい事は沢山ある。
 まずは、明日、いや今日か、ハルの誕生日をお祝いしないとな。
 皆、張り切って準備してるみたいだしな。あーレオが来る事言ってなかった。
 ま、いっか。来た所で皆慣れてるしな。

 まぁ今は、ハルをこの腕の中に抱きしめて、眠ろう。
 おやすみ、ハル。いい夢を・・・



 
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