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しおりを挟むハル
それから、僕達は部屋を移動して、ゆっくり話が出来るように、ソファに座る。
僕の隣にはヴィーちゃん、反対側はお母様、正面にはお父様。
なんだろう、がっつり囲まれた。
僕自身の事や、あちらの世界の事を色々と聞かれて、何とか答える事が出来た。
でも、本当に皆さん優しい。
僕の両親はもういない話を聞くと、皆痛ましげな表情になり、慌てて大丈夫だから
心配しなくて大丈夫。そう話をすると、もう私達は家族だから、何でも話して欲しいし、頼ってくれていいからと、暖かい言葉をくれた。
本当に嬉しくて、早くジークに会いたくてたまらなくなる。
すると、セバスさんが
「ハル様、もうすぐジークバルト様がご帰宅されますが、お迎えしますか?」
と聞いてくれたので、急いで玄関に向かう。
玄関に着いた途端、扉が開きジークが見えたと思うと同時にジークは、僕に駆け寄り抱き上げ、ギュッと抱きしめた。
「ただいま、ハル。会いたかった。」
そう言いながら顔を合わせると、ニコリと笑い、僕の鼻先にチュッとキスした。
僕も
「おかえりなさい。ジーク。」
と、同じようにキスを返した。
2人で額を合わせて、笑い合ってると、後ろから、キャーって声が聞こえて、ハッとなり、ゆっくり後ろを振り返ると、ヴィーちゃんと、お母様が手を取り合って、飛び跳ねながらキャーキャー言ってて、お父様はニコリと笑ってた。
恥ずかしくなって、ジークに下ろしてって言ったのに、下ろしてくれなくてまた、立て抱っこされる僕。
諦めて、そこに収まると、ジークが
「父上、母上、只今戻りました。紹介はいらないみたいですね。では、これで。」
と、言いながら僕を抱き上げたまま、行こうとするので、
「おい、待て待て、ジーク!」
お父様が言ってるのに、聞こえてないように、スタスタ歩きだす。
「えっえっジーク、お父様が呼んでるよ、いいの?何か話があるんじゃない?」
「大丈夫だよ、ハル。ハルと離れてて寂しかった。今はハルを独り占めしたい。」
「っっっう、うん、僕も。あのね、ここがね、穴が空いたようになって、寂しくて
ジークに会いたいなって、思ってた。」
僕は、自分の胸を押さえながら気持ちを伝える。
すると、ジークの腕に力が入り、同じだ
と言いながら、抱きしめられる。
僕の部屋に入る扉の前まで来ると、着いて来たセシルに、ジークが何かを伝えると
セシルはそのまま礼をして、踵を返した。
部屋に入り、ジークは僕を抱えたまま、
ソファに座る。
横抱きにされた僕は、ジークの頬を撫でながら
「今日はね、沢山嬉しい事があったんだよ。ジークの妹さんの、ヴィーちゃん。凄く可愛いし、優しい子だね。僕のピアノが聞きたいって言うから、弾いてあげたんだよ。そしたら、凄く感動してくれて、ふふふ、目をウルウルさせちゃって可愛いかった。それから、お父様とお母様。本当に優しくて、僕の両親がもういない話をしたんだけど、2人共本当に悲しそうな顔するから、大丈夫ですよって言うと、もう家族なんだから守るし、頼ってくれていいんだよって。嬉しかったな。ジークに会えて良かった。こんなに優しい気持ちにしてくれてありがとう。」
ジークは僕の頭を撫でながら、そっと額にキスを落とす。
「ハル、愛してる。俺こそ、ハルに出会えて良かった。こんなにも優しい気持ちになれるのは、ハルがいるから。俺は、ハルをいつでも、この腕の中に抱きしめて俺だけを見てほしい。でも、ハルは嫌だろう?
だからハルには好きな事をして欲しい。好きな事して、毎日俺に話をして?それだけで俺は幸せだ。」
こんなに優しい人は知らない。
知らずポロリと、涙が頬を流れる。
ジークは、その涙を口に含むように唇を押し当て、チュッて音がした。
「ん、甘いな。ハル、俺の前ではいつでも泣いていいよ。俺が全て拭ってあげるから。そして、それ以上に笑って。一生俺のそばで笑っていて。」
ジークは、優しい笑顔で、僕に甘い甘いキスを落とした。
目を開けてジークと笑い合う。
凄く凄く幸せ。
と、この甘い空気を壊すように、僕のお腹が、クゥーンと鳴る。
あぁぁ……恥ずかしい!
クククッってジークが笑うと、
「お腹空いたな。皆が待ってるだろうから、行こうか?ハル?」
僕は赤くなりながらも、
「お腹空いちゃった。皆の所に行こう。あっ、ジーク僕自分で歩けるからね。はい。手、手繋いで行こう!」
「可愛いな、ハル。手繋いで行こうか」
僕達は、手を繋いで部屋から出たのだ。
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