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しおりを挟むハル
今日は、ジークに屋敷内を案内してもらうんだ。
楽しみ!
だって、このお屋敷すっごく広くて綺麗なんだよ。
お部屋の数もちょっと見ただけだけど、いっぱいあって、お庭もすっごく綺麗。
両親が生きてる時に、一緒に海外を回って、海外の色々な建物や庭園を見たけど、このお屋敷は、それら以上に豪華だ。
まだ外に出てないから、この世界はどんなのだろうと、すっごくワクワクする。
そして、僕はジークと手を繋いでお屋敷を見て歩いてるんだけど、もう本当に広くて、ちょっと僕の体力が持たない。
情け無い事に、ジークに抱っこされてます。子供の様に立て抱っこですね。はい。
もちろんジークは、とってもいい笑顔で、「ハル、軽すぎる。もっと食べてね。」ってほっぺにチュウしまくる。
立て抱っこに僕がジークの首に両手を回してるから、顔が近いんだよ。
もう、恥ずかしい・・・
しかも、カッコいいから困る。
周りの人達の生暖かい空気が・・・・
後ろを向くと、トーマスさんが苦笑しながら着いて来ていて、セシルが頬を赤らめながら微笑んでる。
すみません。バカップルで。
恥ずかしいけど、嬉しいんだ。
もちろんヴォルフも付いて来てるよ。
本当に凄いんだ。
もうなんて言っていいのか分からないくらい。語彙力がなさすぎて、「凄い」しか出てこない。
厨房なんかは、ただただ広くて何人の人が働いているの?って聞くと、「30人くらい?」って。
そこの、料理長さんが
「お初にお目にかかります。料理長をしております、ジェロームと申します。ハル様、お料理はお口に合いましたでしょうか?」
と、挨拶をしてくれたので、ジークに下ろしてもらって
「初めまして、ハルです。料理とっても美味しかったです。ありがとうございます。」
て、お礼を言ったら、料理長さんは、ビックリした顔をして
「そんな、お礼なぞっ!」
て言いながら、ワタワタしてて、それがおかしくて、ニコニコしてたら、皆がピキリと固まってて、ん?どうしたの?ってジークを見ると、ジークはそのまま又僕を抱っこして、「ハルは可愛いいからな」ってスタスタと厨房を出ようとするので、僕は慌てて料理長さんや皆に手を振った。
それから、今度は広い広いホールに着いた。ここは、ダンスホールみたいで、凄い煌びやかだ。大きな窓からは綺麗な庭園が見えてキラキラしてる。
僕は、ぐるりと見渡すと、ある所から目が離せなくなった。
「ハル、ハル、どうした?どこか痛いのか?」
ジークの慌てた声にも反応出来なくて、
ただただ僕の目からは涙が止まらない。
ジークは近くのソファに座り、僕を強く抱きしめてくれた。
抱きしめながら、背中をポンポンと、優しく叩きながら、すぐにセシルが持って来たのだろう、タオルで涙を拭いてくれる。
「・・・あ、ありがとうジーク。ごめんね。」
涙目になりながら、ジークにあやまる。
「謝らなくていいんだよ。どうした?何か辛い事でも思い出したか?」
こんな時でも優しいジークに嬉しくなる
「うん、辛くもあるけど、嬉しくもあるんだ。あれ。」
僕が指差している所を見たジークは、
「ん?ピアノか?」
「うん、僕、ピアノがあるのが嬉しくて。あっちの世界でね、僕のピアノが捨てられて・・・辛くて、もうピアノを弾くことは、出来ないのかな?って諦めてたから、、、だから、この世界にピアノがある事が本当に嬉しい。」
ポロリと涙が頬を伝う。
それをジークが優しく拭いてくれる。
「そうだったんだな。もうここではそんな辛い思いはさせないからな。」
トーマスさんから、何かを渡されて、それをジークが僕の手のひらに置く。
「ピアノの鍵だ。これはハルの物だ。好きな時に好きなだけ弾くといい。」
そう言って鍵をくれた。
「いいの?」
ジークは笑顔でいいよって、俺の為に何か弾いて欲しいな。
なんて言うから、僕の涙腺はまたも崩壊した。
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