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本編
80.白豚王子のそっくりさん?
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少し遡り、白豚王子に視点を戻す。
王都の中央広場で寄る辺なく怯える難民達の姿を見て、僕はどうにかしてあげたいと思い、協力者を求め貧民街に向かって直走っていた。
貧民街の奥地では、収穫作業を終えた男達が一息入れている所だった。
伸びをして身体を解していた一人の男が、ふと遠くから走ってくる人影に気付き、近くにいたチョコミントやチョコチップ、男達に言う。
「あれ、ラズベリーじゃないか?」
「あぁ、本当だ。帰ったと思っていたら戻って来たのか。忘れ物でもしたのかな?」
「おーい、ラズベリー! どうかしたのかー?」
チョコミントが大声で僕の名前を呼んで、手を大きく振っている。
ぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよ
僕は高速でお腹を揺らし、チョコミント達がいる場所に向かって駆け走る。
「うわああああぁぁぁぁん! みんなぁぁぁぁ、お願い助けてえぇぇぇぇ!!」
僕は大泣きしながら叫び、助けを求め飛び込むように駆けて行く。
徒ならぬ僕の様子を見て、男達は動揺し慌てだす。
「ど、どうしたんだ、ラズベリー!?」
「なんだなんだ! 敵か? 敵襲か!?」
「何処のどいつだ! この鍛え上げた拳で返り討ちにしてくれる!!」
何かを勘違いした男達が臨戦態勢になって息巻いている。
限界速度で駆けていた僕は急に止まる事ができないので、速度を落として止まるべくして、――
ぼよーーーーん、ごろごろごろごろごろごろ、ずさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ
――ジャンピング・ローリング・スライディング・土下座をかまして、男達の目前に滑り込み両手を突いて蹲った。
突飛な僕の奇行に、男達は吃驚仰天して声を合わせて叫ぶ。
「「「なにごと!!?」」」
僕は地面に額を擦り付けて、正に一生懸命に懇願する。
「一生のお願いです! どうか、みんなの力を貸して下さい!! お願いします!!!」
僕の渾身の土下座に、男達は動転して慌てふためく。
「な、なにがどうしてこうなった?」
「まずは、説明してくれないか、な?」
「とりあえず、顔を上げて立ってくれよ」
僕は貧民達を集めて貰い、難民達の事情を斯く斯く然々と説明して、難民達を助けてやって欲しいと涙ながらに訴えた。
「そうか、そんな事があったのか、よく分かった」
「そんな話を聞いたら、放っておけないよな……」
「前の俺達と同じような境遇だろうしな……」
貧民達はお互いを見合わせて頷き合い、僕の方を向いて断言する。
「よし分かった、俺達に任せておけ!」
「他でもない、ラズベリーの頼みだしな!」
「俺達がなんとかしてやる! だからもう泣くなよ」
貧民達の決断に僕は感激して、落ち着きかけていた涙がまた溢れ出てくる。
「……みんな! みんな、ありがとう!!」
感涙を拭っていると、僕はハッとある事を思い出して、しどろもどろになりながら伝える。
「あ、あとね、僕の行動が悉く裏目に出ちゃって、難民達にすごく怖がられちゃってるから、僕は姿を見せない方がいいと思うんだ……多分、僕が出て行くと、また誤解されてややこしい事になりそうだから……みんなに任せちゃう事になるけど、ごめんね……」
「任せられるのは良いんだが、誤解されたままなのは良くないんじゃないか?」
「あ、うぅん、難民だけじゃなくて、城下町の住民とか、通りすがりの貴族にも、誤解されちゃってて、誤解を解くのは難しそうなんだよね……」
「えぇ、なんでまた、そんな事になってるんだ?」
「あー、えぇーと、そのー、何と言うか……僕の、そっくりさん? ……みたいなのがいるみたいで、人違い? されちゃってて……それがなんか、王族の王子で、悪名高い『白豚王子』だったり、して……あはは、はは…………はぁ……」
貧民達の質問に僕は殊更しどろもどろになって、咄嗟に考えた言い訳をするしかなかった。
無理矢理言い訳をしているせいで、僕の目は泳いで乾いた笑いが漏れて、終いには溜息が溢れてしまう。
(我ながら厳しい言い訳だと思うけど、難民達は僕の事を『白豚王子』だと思ってるから名前が出るだろうし、ラズベリーが本当は『白豚王子』だったなんてばれて貧民達との関係を崩す訳にもいかないし、ここはもう『そっくりさん』で押し通すしかない!)
僕の言い訳を聞いた男達は暫し氷結したように硬直し、大分間が開いてから相槌が返される。
「………………あ、うん」
男達は内心思っていた。
(……あぁ、なるほどなぁ……まぁ、そうだよなぁ……)
(……やっぱりなー……そうなるんだよなー……)
(……王族かぁ……王子かぁ……)
それは、男達の想像が確信に変わり、察した瞬間であった。
言い訳を素直に信じてくれた親子は、僕の事を心配してくれる。
「ラズベリーが悪名高い王子とそっくりだなんて大変じゃないか! 何もしてないのに王子の悪名のせいで誤解されるなんて……」
「それだけじゃない、王子の名を語る不届き者だなんて誤解されて捕まりでもしたら一大事だぞ。確かに、ラズベリーは余り人前に出ない方がいいかもしれないな……」
「う、うん。……僕も目立たないようにしながらだけど、できる限り協力するから! みんなも協力お願いね!!」
僕が切にお願いすると、貧民達は快く応えてくれる。
「あぁ、もちろん、俺達に任せておけ!」
「ラズベリーの頼みなら何でも聞いてやるぞ!」
「受けた恩は倍にして返してやらないとな!」
そうして、男達は収穫したばかりの果物や野菜を持って、難民達の待つ中央広場に向かって駆け出したのだった。
◆
王都の中央広場で寄る辺なく怯える難民達の姿を見て、僕はどうにかしてあげたいと思い、協力者を求め貧民街に向かって直走っていた。
貧民街の奥地では、収穫作業を終えた男達が一息入れている所だった。
伸びをして身体を解していた一人の男が、ふと遠くから走ってくる人影に気付き、近くにいたチョコミントやチョコチップ、男達に言う。
「あれ、ラズベリーじゃないか?」
「あぁ、本当だ。帰ったと思っていたら戻って来たのか。忘れ物でもしたのかな?」
「おーい、ラズベリー! どうかしたのかー?」
チョコミントが大声で僕の名前を呼んで、手を大きく振っている。
ぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよ
僕は高速でお腹を揺らし、チョコミント達がいる場所に向かって駆け走る。
「うわああああぁぁぁぁん! みんなぁぁぁぁ、お願い助けてえぇぇぇぇ!!」
僕は大泣きしながら叫び、助けを求め飛び込むように駆けて行く。
徒ならぬ僕の様子を見て、男達は動揺し慌てだす。
「ど、どうしたんだ、ラズベリー!?」
「なんだなんだ! 敵か? 敵襲か!?」
「何処のどいつだ! この鍛え上げた拳で返り討ちにしてくれる!!」
何かを勘違いした男達が臨戦態勢になって息巻いている。
限界速度で駆けていた僕は急に止まる事ができないので、速度を落として止まるべくして、――
ぼよーーーーん、ごろごろごろごろごろごろ、ずさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ
――ジャンピング・ローリング・スライディング・土下座をかまして、男達の目前に滑り込み両手を突いて蹲った。
突飛な僕の奇行に、男達は吃驚仰天して声を合わせて叫ぶ。
「「「なにごと!!?」」」
僕は地面に額を擦り付けて、正に一生懸命に懇願する。
「一生のお願いです! どうか、みんなの力を貸して下さい!! お願いします!!!」
僕の渾身の土下座に、男達は動転して慌てふためく。
「な、なにがどうしてこうなった?」
「まずは、説明してくれないか、な?」
「とりあえず、顔を上げて立ってくれよ」
僕は貧民達を集めて貰い、難民達の事情を斯く斯く然々と説明して、難民達を助けてやって欲しいと涙ながらに訴えた。
「そうか、そんな事があったのか、よく分かった」
「そんな話を聞いたら、放っておけないよな……」
「前の俺達と同じような境遇だろうしな……」
貧民達はお互いを見合わせて頷き合い、僕の方を向いて断言する。
「よし分かった、俺達に任せておけ!」
「他でもない、ラズベリーの頼みだしな!」
「俺達がなんとかしてやる! だからもう泣くなよ」
貧民達の決断に僕は感激して、落ち着きかけていた涙がまた溢れ出てくる。
「……みんな! みんな、ありがとう!!」
感涙を拭っていると、僕はハッとある事を思い出して、しどろもどろになりながら伝える。
「あ、あとね、僕の行動が悉く裏目に出ちゃって、難民達にすごく怖がられちゃってるから、僕は姿を見せない方がいいと思うんだ……多分、僕が出て行くと、また誤解されてややこしい事になりそうだから……みんなに任せちゃう事になるけど、ごめんね……」
「任せられるのは良いんだが、誤解されたままなのは良くないんじゃないか?」
「あ、うぅん、難民だけじゃなくて、城下町の住民とか、通りすがりの貴族にも、誤解されちゃってて、誤解を解くのは難しそうなんだよね……」
「えぇ、なんでまた、そんな事になってるんだ?」
「あー、えぇーと、そのー、何と言うか……僕の、そっくりさん? ……みたいなのがいるみたいで、人違い? されちゃってて……それがなんか、王族の王子で、悪名高い『白豚王子』だったり、して……あはは、はは…………はぁ……」
貧民達の質問に僕は殊更しどろもどろになって、咄嗟に考えた言い訳をするしかなかった。
無理矢理言い訳をしているせいで、僕の目は泳いで乾いた笑いが漏れて、終いには溜息が溢れてしまう。
(我ながら厳しい言い訳だと思うけど、難民達は僕の事を『白豚王子』だと思ってるから名前が出るだろうし、ラズベリーが本当は『白豚王子』だったなんてばれて貧民達との関係を崩す訳にもいかないし、ここはもう『そっくりさん』で押し通すしかない!)
僕の言い訳を聞いた男達は暫し氷結したように硬直し、大分間が開いてから相槌が返される。
「………………あ、うん」
男達は内心思っていた。
(……あぁ、なるほどなぁ……まぁ、そうだよなぁ……)
(……やっぱりなー……そうなるんだよなー……)
(……王族かぁ……王子かぁ……)
それは、男達の想像が確信に変わり、察した瞬間であった。
言い訳を素直に信じてくれた親子は、僕の事を心配してくれる。
「ラズベリーが悪名高い王子とそっくりだなんて大変じゃないか! 何もしてないのに王子の悪名のせいで誤解されるなんて……」
「それだけじゃない、王子の名を語る不届き者だなんて誤解されて捕まりでもしたら一大事だぞ。確かに、ラズベリーは余り人前に出ない方がいいかもしれないな……」
「う、うん。……僕も目立たないようにしながらだけど、できる限り協力するから! みんなも協力お願いね!!」
僕が切にお願いすると、貧民達は快く応えてくれる。
「あぁ、もちろん、俺達に任せておけ!」
「ラズベリーの頼みなら何でも聞いてやるぞ!」
「受けた恩は倍にして返してやらないとな!」
そうして、男達は収穫したばかりの果物や野菜を持って、難民達の待つ中央広場に向かって駆け出したのだった。
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