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本編
71.白豚王子からのお詫び
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「ぶひっ!?」
砂糖菓子を食べ尽くして『白豚王子』と呼ばれた事で、僕はようやく正気を取り戻した。
抗えない衝動に駆られ、僕はまたしても無意識的に砂糖菓子を貪り食べてしまっていたのだ。
(なななななんで!? どどどどどうしてこうなった!!? 城の外ではお菓子を見ても衝動的に食べてしまうような事は今まで無かったのに、なんで、なんで? ……でも、この有様は間違いなく僕が食べてしまっている……ああ、どうして僕は城の外では大丈夫だなんて思い込んでいたんだ! 全然、大丈夫じゃないじゃないか、僕のバカバカ、大馬鹿者ー!!)
予想だにしていなかった己の行動に困惑し僕が頭を抱えていると、貴族が話しかけてくる。
「何方かと思えば、これはこれは、白豚王子ではありませんか! このような所にお出でになるとはお珍しい」
城下町では目立たないようにといつも身に纏っていたローブのフードが脱げて、貴族に僕が白豚王子である事がばれてしまった。
貴族は慇懃無礼な態度で話し続け、得意気に砂糖菓子の自慢話を始める。
「私の自慢の砂糖菓子は大層お気に召して頂けたようで……仮にも、あの慈悲深い国王陛下に連なる王族の方にまでこのように夢中になって召し上がって頂けるとは光栄の至です! 白豚王子の大変見事な召し上がり方には圧倒されてしまいましたが……でもまぁ、見た目も味も最上級、最高級品の砂糖菓子ですから、夢中になってしまわれるのも当然の事と言えば当然なのですが! 何と言っても、この砂糖菓子は上位貴族の間でも大流行なのですから!!」
僕が食べ散らかしてしまった辺りの惨状を見回して、貴族は皮肉げな笑みを浮かべて言う。
「ですが、一つ残らず、一欠片たりとも残さずとは、これはまた……ふふふふ、ははははは。流石は魔法使いの端くれとでも言うべきなのでしょうか、くくくくく。やはり『魔法の使えない獣』などにこの最高級品の砂糖菓子は勿体ない、相応しくないと、施してやるくらいなら全て召し上がると、そういった意思表示なのですね! 白豚王子自ら魔法使いの在り方を示されるとは、これはまた傑作!! ふはははは」
貴族にとんでもない解釈をされて、僕は慌てて首を振り辺りを見る。
僕の目の前には、先程の小さな獣人の子供の姿があった。
獣人の子供は肩を落とし耳と尻尾を垂らして、か細い声で呟く。
「……あ、ぁ……お菓子……全部……全部、無くなっ、ちゃったぁ……」
ふるふると身体を震わせ、うるうると目を潤ませ、溜まった涙が今にも決壊して零れ落ちてしまいそうな、か弱く痛ましい姿を目の当たりにして、僕の胸は抉られる。
(うわああああ! 僕はなんて酷い事をしでかしてしまったんだああああ!! 獣人達の大事なお菓子を、貴重な食料を奪い取って食べてしまうなんて!? こんな可愛い子にひもじい思いをさせるなんて! 僕は、僕はなんて、うわああああ、ごめんなさいいいい!!)
僕は罪悪感の余り膝から崩れ落ちる。
獣人の子供の前で頭を垂れて謝り、僕は誠心誠意謝罪しようと思った。
「……ご、ごめんね……謝って許される事じゃないけど、それでも……本当に、本当にごめん……ごめんなさい……」
「……ぅ……っ……ぅん……」
下げていた頭を上げて、僕は獣人の子供と獣人達の様子を見る。
汚れた襤褸を纏う痩せこけた身体を見れば、大変な思いをしてここまでやって来た事が分かる。
やっとの思いで辿り着いた先ですら、安心できる場所も満足な食料も無く、明日も分からない不安に苛まれているのだ。
寄る辺もなく同盟国に助けを求める他になかった獣人達は、同盟国の王子である僕に対して、こんなに酷い事をされていても、怒り散らす事も泣き喚く事もしない。
人種差別されて理不尽な扱いを受けても、寄る辺のない獣人達には堪え忍ぶ他ないのだ。
今もこうして身を寄せ合い只々耐え忍んでいるその姿は余りにも悲痛で、獣人達の心情を思うと堪えられなくなり、僕の目からは涙が溢れ出てくる。
泣き喚く事もできない獣人達の前で僕が泣くなんて滑稽だと思うのに、涙を堪えようとしても溢れ出て止まらない。
ボロボロと涙を零す僕を見て、獣人の子が困惑しておろおろとしている。
涙を拭おうとして、僕はふと焼き菓子を作って持っていた事を思い出した。
「……あっ、そうだ、お菓子持っていたんだ…………さっきの綺麗なお菓子の代わりにはならないけど…………これ、良かったら受け取って、食べて……」
「……ぉ……お菓子? ……」
僕は鞄からがさごそとクッキーの入った包みを取り出して、獣人の子供の目の前に差し出した。
獣人の子供はおどおどとしながらも僕が差し出した包みを受け取ってくれる。
もたもたと包みを開けようとする獣人の子供を手伝い僕が包みを広げると、そこには美味しそうなサクサクカリカリのクッキー――だった物が入っていた。
砂糖菓子を食べ尽くして『白豚王子』と呼ばれた事で、僕はようやく正気を取り戻した。
抗えない衝動に駆られ、僕はまたしても無意識的に砂糖菓子を貪り食べてしまっていたのだ。
(なななななんで!? どどどどどうしてこうなった!!? 城の外ではお菓子を見ても衝動的に食べてしまうような事は今まで無かったのに、なんで、なんで? ……でも、この有様は間違いなく僕が食べてしまっている……ああ、どうして僕は城の外では大丈夫だなんて思い込んでいたんだ! 全然、大丈夫じゃないじゃないか、僕のバカバカ、大馬鹿者ー!!)
予想だにしていなかった己の行動に困惑し僕が頭を抱えていると、貴族が話しかけてくる。
「何方かと思えば、これはこれは、白豚王子ではありませんか! このような所にお出でになるとはお珍しい」
城下町では目立たないようにといつも身に纏っていたローブのフードが脱げて、貴族に僕が白豚王子である事がばれてしまった。
貴族は慇懃無礼な態度で話し続け、得意気に砂糖菓子の自慢話を始める。
「私の自慢の砂糖菓子は大層お気に召して頂けたようで……仮にも、あの慈悲深い国王陛下に連なる王族の方にまでこのように夢中になって召し上がって頂けるとは光栄の至です! 白豚王子の大変見事な召し上がり方には圧倒されてしまいましたが……でもまぁ、見た目も味も最上級、最高級品の砂糖菓子ですから、夢中になってしまわれるのも当然の事と言えば当然なのですが! 何と言っても、この砂糖菓子は上位貴族の間でも大流行なのですから!!」
僕が食べ散らかしてしまった辺りの惨状を見回して、貴族は皮肉げな笑みを浮かべて言う。
「ですが、一つ残らず、一欠片たりとも残さずとは、これはまた……ふふふふ、ははははは。流石は魔法使いの端くれとでも言うべきなのでしょうか、くくくくく。やはり『魔法の使えない獣』などにこの最高級品の砂糖菓子は勿体ない、相応しくないと、施してやるくらいなら全て召し上がると、そういった意思表示なのですね! 白豚王子自ら魔法使いの在り方を示されるとは、これはまた傑作!! ふはははは」
貴族にとんでもない解釈をされて、僕は慌てて首を振り辺りを見る。
僕の目の前には、先程の小さな獣人の子供の姿があった。
獣人の子供は肩を落とし耳と尻尾を垂らして、か細い声で呟く。
「……あ、ぁ……お菓子……全部……全部、無くなっ、ちゃったぁ……」
ふるふると身体を震わせ、うるうると目を潤ませ、溜まった涙が今にも決壊して零れ落ちてしまいそうな、か弱く痛ましい姿を目の当たりにして、僕の胸は抉られる。
(うわああああ! 僕はなんて酷い事をしでかしてしまったんだああああ!! 獣人達の大事なお菓子を、貴重な食料を奪い取って食べてしまうなんて!? こんな可愛い子にひもじい思いをさせるなんて! 僕は、僕はなんて、うわああああ、ごめんなさいいいい!!)
僕は罪悪感の余り膝から崩れ落ちる。
獣人の子供の前で頭を垂れて謝り、僕は誠心誠意謝罪しようと思った。
「……ご、ごめんね……謝って許される事じゃないけど、それでも……本当に、本当にごめん……ごめんなさい……」
「……ぅ……っ……ぅん……」
下げていた頭を上げて、僕は獣人の子供と獣人達の様子を見る。
汚れた襤褸を纏う痩せこけた身体を見れば、大変な思いをしてここまでやって来た事が分かる。
やっとの思いで辿り着いた先ですら、安心できる場所も満足な食料も無く、明日も分からない不安に苛まれているのだ。
寄る辺もなく同盟国に助けを求める他になかった獣人達は、同盟国の王子である僕に対して、こんなに酷い事をされていても、怒り散らす事も泣き喚く事もしない。
人種差別されて理不尽な扱いを受けても、寄る辺のない獣人達には堪え忍ぶ他ないのだ。
今もこうして身を寄せ合い只々耐え忍んでいるその姿は余りにも悲痛で、獣人達の心情を思うと堪えられなくなり、僕の目からは涙が溢れ出てくる。
泣き喚く事もできない獣人達の前で僕が泣くなんて滑稽だと思うのに、涙を堪えようとしても溢れ出て止まらない。
ボロボロと涙を零す僕を見て、獣人の子が困惑しておろおろとしている。
涙を拭おうとして、僕はふと焼き菓子を作って持っていた事を思い出した。
「……あっ、そうだ、お菓子持っていたんだ…………さっきの綺麗なお菓子の代わりにはならないけど…………これ、良かったら受け取って、食べて……」
「……ぉ……お菓子? ……」
僕は鞄からがさごそとクッキーの入った包みを取り出して、獣人の子供の目の前に差し出した。
獣人の子供はおどおどとしながらも僕が差し出した包みを受け取ってくれる。
もたもたと包みを開けようとする獣人の子供を手伝い僕が包みを広げると、そこには美味しそうなサクサクカリカリのクッキー――だった物が入っていた。
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