68 / 127
本編
66.白豚王子の知られざる力
しおりを挟む
開拓を進めるとある日、破落戸達は休憩中に何気なく話していた。
「そう言や、俺達を助けてくれたラズベリーってあの丸い子供、魔法の属性が滅茶苦茶じゃなかったか?」
「ああ、言われてみれば確かにそうだ。あんな沢山の属性を使える奴なんて、見た事も聞いた事もないな」
「大抵は一属性だよな? 複数の属性が使えるのは稀じゃなかったか?」
「……そうだ、貴族でも二属性使えれば重宝され、三属性使える者は高位貴族でも極一部だと聞いた事があるぞ」
その話を聞いていた一人の破落戸が顔を強張らせて、重々しく口を開く。
「裕福な商人のぼんぼんかと思っていたんだが……もしかして、俺達とんでもない人物に関わってしまったんじゃないか?」
「「「!?」」」
破落戸達は思い当たった衝撃に慄き、お互いの顔を見合わせ沈黙する。
「「「…………」」」
「……いやいや、待てよ! あれ本当に魔法使えていたか? 威力なんてまるで無い、不発じゃなかったか!?」
「そ、そうだよな? 不発だよな? あんな滅茶苦茶な属性が使える訳ないよな!」
「そりゃそうだ! 四属性以上なんて王族でもなければ無理だろう? それに、あんな数の魔法属性が使えたら史上最高の魔法使いだぞ!?」
「そんな高貴な身分の天才がこんな辺鄙な場所で畑耕してる訳がないさ! きっと、鬼人族を脅す為に態と装っていたんだろうさ!!」
「だ、だよなぁ? 何だよ、驚かせるなよぉ。あぁ、もう吃驚したぁ。あはははは……」
破落戸達は安堵してどっと笑い合う。
しばし笑った後、破落戸達は真面目な顔になり見合わせる。
「俺達には救われた恩がある。あの子供が何者であろうと、俺は絶対に見捨てたり裏切ったりしない。何かあればこの身を張って命を懸けて恩を返す! お前等もそうだろう?」
「「「ああ、無論だ」」」
そうして、破落戸達は固く決意し誓い合ったのだった。
破落戸達は知らなかった。
魔法が使えない事で迫害を受け貧民街に追いやられてきた破落戸達は、それ故に魔法の知識に疎かった。
魔法属性の適性が無ければ魔法は発動すらしない――すなわち、不発の初動にすらなりえないという事を、破落戸達は知らなかったのだ。
白豚王子もまた知らなかった。
魔力がほぼ無かった事で魔法の素養が無いと切り捨てられた白豚王子は、それ故に魔法教育が受けられず知識が無かった。
威力が小さくとも複数の魔法属性を発動できる者は極めて稀な存在であり、白豚王子ほど数多くの魔法属性を発動できる者は他に存在しないという事を、その能力が発揮されれば史上最高の魔法使いにすらなりえるという事を、白豚王子は知らなかったのだ。
――そしてまた、本人ですらまだ気付いていない秘密があった。
白豚王子には知られざる力が隠されているという事を。――
◆
「そう言や、俺達を助けてくれたラズベリーってあの丸い子供、魔法の属性が滅茶苦茶じゃなかったか?」
「ああ、言われてみれば確かにそうだ。あんな沢山の属性を使える奴なんて、見た事も聞いた事もないな」
「大抵は一属性だよな? 複数の属性が使えるのは稀じゃなかったか?」
「……そうだ、貴族でも二属性使えれば重宝され、三属性使える者は高位貴族でも極一部だと聞いた事があるぞ」
その話を聞いていた一人の破落戸が顔を強張らせて、重々しく口を開く。
「裕福な商人のぼんぼんかと思っていたんだが……もしかして、俺達とんでもない人物に関わってしまったんじゃないか?」
「「「!?」」」
破落戸達は思い当たった衝撃に慄き、お互いの顔を見合わせ沈黙する。
「「「…………」」」
「……いやいや、待てよ! あれ本当に魔法使えていたか? 威力なんてまるで無い、不発じゃなかったか!?」
「そ、そうだよな? 不発だよな? あんな滅茶苦茶な属性が使える訳ないよな!」
「そりゃそうだ! 四属性以上なんて王族でもなければ無理だろう? それに、あんな数の魔法属性が使えたら史上最高の魔法使いだぞ!?」
「そんな高貴な身分の天才がこんな辺鄙な場所で畑耕してる訳がないさ! きっと、鬼人族を脅す為に態と装っていたんだろうさ!!」
「だ、だよなぁ? 何だよ、驚かせるなよぉ。あぁ、もう吃驚したぁ。あはははは……」
破落戸達は安堵してどっと笑い合う。
しばし笑った後、破落戸達は真面目な顔になり見合わせる。
「俺達には救われた恩がある。あの子供が何者であろうと、俺は絶対に見捨てたり裏切ったりしない。何かあればこの身を張って命を懸けて恩を返す! お前等もそうだろう?」
「「「ああ、無論だ」」」
そうして、破落戸達は固く決意し誓い合ったのだった。
破落戸達は知らなかった。
魔法が使えない事で迫害を受け貧民街に追いやられてきた破落戸達は、それ故に魔法の知識に疎かった。
魔法属性の適性が無ければ魔法は発動すらしない――すなわち、不発の初動にすらなりえないという事を、破落戸達は知らなかったのだ。
白豚王子もまた知らなかった。
魔力がほぼ無かった事で魔法の素養が無いと切り捨てられた白豚王子は、それ故に魔法教育が受けられず知識が無かった。
威力が小さくとも複数の魔法属性を発動できる者は極めて稀な存在であり、白豚王子ほど数多くの魔法属性を発動できる者は他に存在しないという事を、その能力が発揮されれば史上最高の魔法使いにすらなりえるという事を、白豚王子は知らなかったのだ。
――そしてまた、本人ですらまだ気付いていない秘密があった。
白豚王子には知られざる力が隠されているという事を。――
◆
27
お気に入りに追加
1,286
あなたにおすすめの小説
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
腐男子(攻め)主人公の息子に転生した様なので夢の推しカプをサポートしたいと思います
たむたむみったむ
BL
前世腐男子だった記憶を持つライル(5歳)前世でハマっていた漫画の(攻め)主人公の息子に転生したのをいい事に、自分の推しカプ (攻め)主人公レイナード×悪役令息リュシアンを実現させるべく奔走する毎日。リュシアンの美しさに自分を見失ない(受け)主人公リヒトの優しさに胸を痛めながらもポンコツライルの脳筋レイナード誘導作戦は成功するのだろうか?
そしてライルの知らないところでばかり起こる熱い展開を、いつか目にする事が……できればいいな。
ほのぼのまったり進行です。
他サイトにも投稿しておりますが、こちら改めて書き直した物になります。
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
誰よりも愛してるあなたのために
R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。
ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。
前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。
だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。
「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」
それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!
すれ違いBLです。
初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。
(誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
時々おまけを更新しています。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる