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本編
52.レッド・ブラウン・ホワイト
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僕の目からポロポロと涙が零れ落ちる。
「……ぐす……うぅっ……ぐすん……ひぐっ……ふぐぅ……」
涙を堪えようとても、次々と溢れ出てきて止まらない。
僕は辛くて辛くてもう仕方なくて、耐えられず嗚咽を漏らしてしまう。
そんな僕に気付いたチョコミントが、僕に向けて風魔法の呪文を詠唱する――
『風の精霊よ、我が魔力を以てこの空間に北風を起こせ。【冷却疾風】』
――のだが、現状にそれは逆効果でしかなかった。
「うわぁ~! 目に染みるぅ~~~!! 目が、目がぁ~~~~~!?」
「ら、ラズベリー! しっかりするんだ!! ……わぁっ、俺まで目がぁ!?」
僕達は某アニメ映画のム○カ並みに目を庇いのたうち回る羽目になってしまった。
「うぅ、目に染みる……もう、こんなに大量の玉ねぎ使わなくても良いんじゃないか? 目に染みない野菜にしないか?」
「あぁー、染みる染みる……いやいやダメダメ、玉ねぎいっぱい入れた方が甘みが出て絶対美味しいから、そこは譲れないよ。ここは我慢してやるべし! 剥くべし、切るべし、刻むべし!!」
僕が涙ぐみながらひたすら作業を進めていると、チョコチップが帰って来て荷車から大きな水瓶を下ろす。
「ふぅ……これで水瓶三つ目。後どのくらい泉の水を汲んで来ればいいんだ?」
「水はもうそのくらいでいいよ、ありがとう。玉ねぎ切り終わったから、おじさんは大鍋で焦げない程度に中火で炒めてくれるかな。チョコミントが作ってくれてる生地の方、見て来るね」
チョコミントが一生懸命ふみふみしてくれていた生地の出来加減を見て、僕は上出来だとうんうん頷く。
「こんな料理の仕方があるなんて知らなかった。うどん作るのって面白いな。あ、でも、この前は手で作ってなかったか?」
「手打ちだと結構な力が必要なんだけど、足踏みだったら力の弱い子供や女の人でも簡単に作れるからね。大量に作りたい場合なんかは手打ちだけだとちょっと大変だから、足踏みができると便利だよ」
「なるほど、それでさっきラズベリーずっと生地踏んでたんだな」
そう、僕達は泉の水を使って大量のうどんを製作しているのだ。
チョコチップの土魔法で外に大きな調理台と沢山鍋の置けるかまどを作ってもらったので、僕は調理し放題なのである。
野外と言う事もあって、ちょっとしたアウトドア・キャンプ気分である。
僕は生地を寝かせてる間に三種類のスープを作る。
飴色に炒めた玉ねぎを三つの大鍋に分けて、更に調味料を入れて炒める。
「こっちはオリーブオイルとトマトで、こっちはココナッツオイルとスパイスで、こっちはバターと小麦粉」
程好く炒めたら、前と同じく泉の水で煮込んでおいた鶏ガラスープと小さめに切った野菜と肉団子を入れてコトコト煮込む。
「今回の肉団子には生姜じゃなくてチーズを入れてみたんだ。噛んだ時に中からトロっと出てきて美味しいよ。あ、想像しただけで涎が垂れそう。じゅるり……」
親子も想像して生唾をゴクリと飲み込んでいる。
寝かせていた生地を伸ばして切って解して置き、味見用のうどんを茹でていく。
仕上げにそれぞれのスープに、塩コショウとハーブ、スパイスとココナッツミルク、牛乳たっぷりと塩コショウで味を整えて、軽く煮込んだら三種のスープの出来上がり。
丁度、茹で上がったうどんを器によそって出来立てのスープを注いでいく。
「ジャジャン! トマトスープうどん、スープカレーうどん、ミルクシチューうどんの完成!!」
「おおー、三食のうどんだ! 美味そう!!」
「これは、美味そうな匂いが鼻を擽って堪らんな」
泉の水をふんだんに使ったせいなのか、なんだかいつにも増して美味しそうに見える。
「ではでは、いざ実食――「「いただきます!」」」
僕達は味見用のうどんを頬張り食べ始める。
「うんうん、うまうま。我ながら上出来、上出来♪」
「うぅ……うぅんんんっっまあぁぁぁぁいっ! 美味すぎて元気が溢れ出てくる!!」
「んんっ……美味いな、どれも美味いな! スープの具材はほとんど一緒なのに、それぞれの風味が全然違うから、いくらでも食べられそうだ……はぁ、美味すぎて身体の疲れも吹き飛んだな。泉の癒しの水にラズベリーの料理を合わせたら、敵うものなしだな」
親子がいつもの事ながら大げさに僕の作る料理を褒めてくれるので、大きなリアクションにも僕は慣れたものだ。
そんなこんなで、わいわい騒ぐ親子の声と、コトコト煮込んで漂う美味しそうに香りに誘われ、貧民街の住人達が少しずつ集まって来る。
住人達の姿を見て、僕はしめたと思い大量のうどんを茹で始める。
チョコチップにお願いして、沢山人が座れるテーブル席も用意してもらった。
近くでスープを眺めていた人を、僕は手招きして呼び寄せる。
「……ぐす……うぅっ……ぐすん……ひぐっ……ふぐぅ……」
涙を堪えようとても、次々と溢れ出てきて止まらない。
僕は辛くて辛くてもう仕方なくて、耐えられず嗚咽を漏らしてしまう。
そんな僕に気付いたチョコミントが、僕に向けて風魔法の呪文を詠唱する――
『風の精霊よ、我が魔力を以てこの空間に北風を起こせ。【冷却疾風】』
――のだが、現状にそれは逆効果でしかなかった。
「うわぁ~! 目に染みるぅ~~~!! 目が、目がぁ~~~~~!?」
「ら、ラズベリー! しっかりするんだ!! ……わぁっ、俺まで目がぁ!?」
僕達は某アニメ映画のム○カ並みに目を庇いのたうち回る羽目になってしまった。
「うぅ、目に染みる……もう、こんなに大量の玉ねぎ使わなくても良いんじゃないか? 目に染みない野菜にしないか?」
「あぁー、染みる染みる……いやいやダメダメ、玉ねぎいっぱい入れた方が甘みが出て絶対美味しいから、そこは譲れないよ。ここは我慢してやるべし! 剥くべし、切るべし、刻むべし!!」
僕が涙ぐみながらひたすら作業を進めていると、チョコチップが帰って来て荷車から大きな水瓶を下ろす。
「ふぅ……これで水瓶三つ目。後どのくらい泉の水を汲んで来ればいいんだ?」
「水はもうそのくらいでいいよ、ありがとう。玉ねぎ切り終わったから、おじさんは大鍋で焦げない程度に中火で炒めてくれるかな。チョコミントが作ってくれてる生地の方、見て来るね」
チョコミントが一生懸命ふみふみしてくれていた生地の出来加減を見て、僕は上出来だとうんうん頷く。
「こんな料理の仕方があるなんて知らなかった。うどん作るのって面白いな。あ、でも、この前は手で作ってなかったか?」
「手打ちだと結構な力が必要なんだけど、足踏みだったら力の弱い子供や女の人でも簡単に作れるからね。大量に作りたい場合なんかは手打ちだけだとちょっと大変だから、足踏みができると便利だよ」
「なるほど、それでさっきラズベリーずっと生地踏んでたんだな」
そう、僕達は泉の水を使って大量のうどんを製作しているのだ。
チョコチップの土魔法で外に大きな調理台と沢山鍋の置けるかまどを作ってもらったので、僕は調理し放題なのである。
野外と言う事もあって、ちょっとしたアウトドア・キャンプ気分である。
僕は生地を寝かせてる間に三種類のスープを作る。
飴色に炒めた玉ねぎを三つの大鍋に分けて、更に調味料を入れて炒める。
「こっちはオリーブオイルとトマトで、こっちはココナッツオイルとスパイスで、こっちはバターと小麦粉」
程好く炒めたら、前と同じく泉の水で煮込んでおいた鶏ガラスープと小さめに切った野菜と肉団子を入れてコトコト煮込む。
「今回の肉団子には生姜じゃなくてチーズを入れてみたんだ。噛んだ時に中からトロっと出てきて美味しいよ。あ、想像しただけで涎が垂れそう。じゅるり……」
親子も想像して生唾をゴクリと飲み込んでいる。
寝かせていた生地を伸ばして切って解して置き、味見用のうどんを茹でていく。
仕上げにそれぞれのスープに、塩コショウとハーブ、スパイスとココナッツミルク、牛乳たっぷりと塩コショウで味を整えて、軽く煮込んだら三種のスープの出来上がり。
丁度、茹で上がったうどんを器によそって出来立てのスープを注いでいく。
「ジャジャン! トマトスープうどん、スープカレーうどん、ミルクシチューうどんの完成!!」
「おおー、三食のうどんだ! 美味そう!!」
「これは、美味そうな匂いが鼻を擽って堪らんな」
泉の水をふんだんに使ったせいなのか、なんだかいつにも増して美味しそうに見える。
「ではでは、いざ実食――「「いただきます!」」」
僕達は味見用のうどんを頬張り食べ始める。
「うんうん、うまうま。我ながら上出来、上出来♪」
「うぅ……うぅんんんっっまあぁぁぁぁいっ! 美味すぎて元気が溢れ出てくる!!」
「んんっ……美味いな、どれも美味いな! スープの具材はほとんど一緒なのに、それぞれの風味が全然違うから、いくらでも食べられそうだ……はぁ、美味すぎて身体の疲れも吹き飛んだな。泉の癒しの水にラズベリーの料理を合わせたら、敵うものなしだな」
親子がいつもの事ながら大げさに僕の作る料理を褒めてくれるので、大きなリアクションにも僕は慣れたものだ。
そんなこんなで、わいわい騒ぐ親子の声と、コトコト煮込んで漂う美味しそうに香りに誘われ、貧民街の住人達が少しずつ集まって来る。
住人達の姿を見て、僕はしめたと思い大量のうどんを茹で始める。
チョコチップにお願いして、沢山人が座れるテーブル席も用意してもらった。
近くでスープを眺めていた人を、僕は手招きして呼び寄せる。
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