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本編
49.フワフワ・ポカポカ・クラクラ
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「あっ……」
僕は毒沼に落ちながら思った。
(……あぁ、やっちゃった……まぁ、仕方ないよね……チョコミントが助けられたなら、いいか……)
そして、毒沼に沈みながら思った。
(……あぁ、身体が溶けてく……しゅわしゅわする……溶けて無くなっちゃう……しゅわしゅわしゅわしゅわ……あれ? 身体が溶けてるのに、痛いとか苦しいとかはないな……変な感じ……)
僕の身体が毒沼に溶け出しているせいなのか、周りの水の色がどんどんと変化して
見える。
しゅわしゅわしゅわしゅわしゅわしゅわしゅわしゅわしゅわしゅわ
不思議な光景だなと他人事のように眺めていて、僕は自分の気分の変化に気付く。
(……あれれ? ……なんだかフワフワした気分になってきた……ポカポカしてきた気もする……なんだっけなこれ? ……覚えが有るような無いような? ……)
ぼんやりとしながら考えていると、とうとう苦しくなってきた事に気付く。
(……んんん? ……なんか猛烈に苦しくなってきた気がする……息だ! 息が苦しいんだこれ!? ……そりゃあ、水の中じゃ息できないからね! くっ、苦しい!! さっ、酸素ーーーー!!! ……)
息苦しさに耐え兼ねて、僕は空気を求めて水面の方へとバタバタと藻掻き進んだ。
◆
ラズベリーが落ちてしまった毒沼を見つめ、親子は滂沱の涙を流していた。
ぶくぶくぶくぶく、ぶくぶく、ぶく……ぶく……ぶく…………ぶく………………
毒沼の煮立つような泡も次第に無くなっていき、ラズベリーの身体が完全に溶かされて無くなってしまったんだと、親子は悲嘆に暮れた。
「……うっ……うぅ……ラズベリー……っ……」
涙を零しながらラズベリーの落ちた毒沼をずっと見つめていたチョコミントは、水面の変化に気付く。
「……? ……」
禍々しく濁っていた毒沼の汚泥水がどんどんと変化し、煌めく透明感のある清浄な水色へと変わっていくのだ。
………………ぶく…………ぶく……ぶく……ぶくぶくぶくぶくぶくぶくぶくぶく
ラズベリーが落ちた場所が泡立ち、その泡もどんどんと大きくなっていく。
「……と、父さん……なに、あれ? ……」
驚いたチョコミントが父親を呼び、その水面を指差す。
ぶくぶくと泡を立てながら、そこに何かが浮上してくる。
ざっぱーーーーーーん
煌めく水しぶきを上げて、そこに現れたのは人影だった。
人影は水面を波打たせながら、親子のいる陸地へと近付いて来る。
「……っ…………!!? ……」
親子は言葉も出ず、陸地へと上がって来る人影を見つめる事しかできなかった。
◆
息苦しさから必死に水を掻き泳いで、盛大に水しぶきを上げて僕は水面に出た。
「ぷはぁっ! ……はぁ、はぁ……はぁ、はぁ……死ぬかと思った……」
(……あれ? と言うか、死んでない?? 溶けてないよ、僕???)
呼吸ができて安心したせいなのか、急にしゃっくりが出て止まらなくなる。
「……ひっく……ひっく……ひっく……」
(あうぅ、フワフワ、ポカポカ、クラクラする。なんだろう、この感覚? ……あ、分かった! これ、酔っぱらった時と同じ感覚だ!! 前世でお酒飲んだ時もこんな感じだった……うふふふ、お酒も美味しいよね……あっ、でも酔ってる時に水泳なんてダメだよ! 早く水から上がらないと……)
僕は何故か酩酊している心地になっていた。
辺りを見回すとチョコミント達がいる陸地が見えたので、そこへと泳いで行く。
「……ひっく……ひっく……ひっく……」
チョコミント達に声をかけたかったのだけど、しゃっくりが邪魔で泳ぎながらだと上手く声が出せない。
陸地へと泳ぎ着き水中から上がって行くと、親子が固まって僕を見つめていた。
親子の様子になんだろうなと思い、僕は首をかしげる。
(……そう言えば、水に濡れているのに妙に身体が軽いような? なんだろう?)
「……ひっく? ……ひっくっ! ……ひぃっくっ!?」
親子が凝視している自分の姿を見て、僕も吃驚した。
吃驚ついでにしゃっくりも引っ込んでしまった。
僕の身体は何故か萎んで縮んで細くなっていたのだ。
そのせいで服も大きくぶかぶかになってしまい、白い肌が露出していた。
ズルズルと下がっていく衣服を押さえようと、僕は自分の身体を抱き締める。
酔った心地もあって、僕は親子にチラッと流し目を送って悪戯っぽく言ってみる。
「……いやん、見ないで……えっち♡」
ついでにサービスしてウインクも飛ばしてみる。
「……せ……い……れ……ぃ……」
ふざけた僕の姿を見て、チョコチップは何かを呟き卒倒してしまう。
パタリ
「えっ!?」
倒れてしまったチョコチップに驚いていると、チョコミントも何か呟いている。
「――れいよ……ラズベリーを戻して、ラズベリーを助けて……何でもする、何でも差し出すから……お願いだから、ラズベリーを……」
そう言い残して、チョコミントまでも気を失い倒れてしまう。
パタリ
「えぇーーーー!?」
気絶してしまった親子を前に、僕は動転するしかない。
「な、な、な、なになに、どういう事? 助けても何も、僕ここにいるよ?? ラズベリー・イズ・僕、で合ってるよね??? 僕、無事に戻って来たよ? 幽霊だと思って怖かったの?? ゾンビだと思って失神したの??? ねぇ、そうなの!?」
声をかけて揺すってみても親子は目を開ける様子がない。
瘴気を吸い過ぎて倒れてしまったのだろうかと不安になったが、親子の顔色は悪くなく息も脈も正常だったので、僕はとりあえず安心した。
「どうしようかな、一人で運ぶのは流石に大変だし……」
僕は何か使える物はないかと辺りを見回して、見つけてしまった。
僕は毒沼に落ちながら思った。
(……あぁ、やっちゃった……まぁ、仕方ないよね……チョコミントが助けられたなら、いいか……)
そして、毒沼に沈みながら思った。
(……あぁ、身体が溶けてく……しゅわしゅわする……溶けて無くなっちゃう……しゅわしゅわしゅわしゅわ……あれ? 身体が溶けてるのに、痛いとか苦しいとかはないな……変な感じ……)
僕の身体が毒沼に溶け出しているせいなのか、周りの水の色がどんどんと変化して
見える。
しゅわしゅわしゅわしゅわしゅわしゅわしゅわしゅわしゅわしゅわ
不思議な光景だなと他人事のように眺めていて、僕は自分の気分の変化に気付く。
(……あれれ? ……なんだかフワフワした気分になってきた……ポカポカしてきた気もする……なんだっけなこれ? ……覚えが有るような無いような? ……)
ぼんやりとしながら考えていると、とうとう苦しくなってきた事に気付く。
(……んんん? ……なんか猛烈に苦しくなってきた気がする……息だ! 息が苦しいんだこれ!? ……そりゃあ、水の中じゃ息できないからね! くっ、苦しい!! さっ、酸素ーーーー!!! ……)
息苦しさに耐え兼ねて、僕は空気を求めて水面の方へとバタバタと藻掻き進んだ。
◆
ラズベリーが落ちてしまった毒沼を見つめ、親子は滂沱の涙を流していた。
ぶくぶくぶくぶく、ぶくぶく、ぶく……ぶく……ぶく…………ぶく………………
毒沼の煮立つような泡も次第に無くなっていき、ラズベリーの身体が完全に溶かされて無くなってしまったんだと、親子は悲嘆に暮れた。
「……うっ……うぅ……ラズベリー……っ……」
涙を零しながらラズベリーの落ちた毒沼をずっと見つめていたチョコミントは、水面の変化に気付く。
「……? ……」
禍々しく濁っていた毒沼の汚泥水がどんどんと変化し、煌めく透明感のある清浄な水色へと変わっていくのだ。
………………ぶく…………ぶく……ぶく……ぶくぶくぶくぶくぶくぶくぶくぶく
ラズベリーが落ちた場所が泡立ち、その泡もどんどんと大きくなっていく。
「……と、父さん……なに、あれ? ……」
驚いたチョコミントが父親を呼び、その水面を指差す。
ぶくぶくと泡を立てながら、そこに何かが浮上してくる。
ざっぱーーーーーーん
煌めく水しぶきを上げて、そこに現れたのは人影だった。
人影は水面を波打たせながら、親子のいる陸地へと近付いて来る。
「……っ…………!!? ……」
親子は言葉も出ず、陸地へと上がって来る人影を見つめる事しかできなかった。
◆
息苦しさから必死に水を掻き泳いで、盛大に水しぶきを上げて僕は水面に出た。
「ぷはぁっ! ……はぁ、はぁ……はぁ、はぁ……死ぬかと思った……」
(……あれ? と言うか、死んでない?? 溶けてないよ、僕???)
呼吸ができて安心したせいなのか、急にしゃっくりが出て止まらなくなる。
「……ひっく……ひっく……ひっく……」
(あうぅ、フワフワ、ポカポカ、クラクラする。なんだろう、この感覚? ……あ、分かった! これ、酔っぱらった時と同じ感覚だ!! 前世でお酒飲んだ時もこんな感じだった……うふふふ、お酒も美味しいよね……あっ、でも酔ってる時に水泳なんてダメだよ! 早く水から上がらないと……)
僕は何故か酩酊している心地になっていた。
辺りを見回すとチョコミント達がいる陸地が見えたので、そこへと泳いで行く。
「……ひっく……ひっく……ひっく……」
チョコミント達に声をかけたかったのだけど、しゃっくりが邪魔で泳ぎながらだと上手く声が出せない。
陸地へと泳ぎ着き水中から上がって行くと、親子が固まって僕を見つめていた。
親子の様子になんだろうなと思い、僕は首をかしげる。
(……そう言えば、水に濡れているのに妙に身体が軽いような? なんだろう?)
「……ひっく? ……ひっくっ! ……ひぃっくっ!?」
親子が凝視している自分の姿を見て、僕も吃驚した。
吃驚ついでにしゃっくりも引っ込んでしまった。
僕の身体は何故か萎んで縮んで細くなっていたのだ。
そのせいで服も大きくぶかぶかになってしまい、白い肌が露出していた。
ズルズルと下がっていく衣服を押さえようと、僕は自分の身体を抱き締める。
酔った心地もあって、僕は親子にチラッと流し目を送って悪戯っぽく言ってみる。
「……いやん、見ないで……えっち♡」
ついでにサービスしてウインクも飛ばしてみる。
「……せ……い……れ……ぃ……」
ふざけた僕の姿を見て、チョコチップは何かを呟き卒倒してしまう。
パタリ
「えっ!?」
倒れてしまったチョコチップに驚いていると、チョコミントも何か呟いている。
「――れいよ……ラズベリーを戻して、ラズベリーを助けて……何でもする、何でも差し出すから……お願いだから、ラズベリーを……」
そう言い残して、チョコミントまでも気を失い倒れてしまう。
パタリ
「えぇーーーー!?」
気絶してしまった親子を前に、僕は動転するしかない。
「な、な、な、なになに、どういう事? 助けても何も、僕ここにいるよ?? ラズベリー・イズ・僕、で合ってるよね??? 僕、無事に戻って来たよ? 幽霊だと思って怖かったの?? ゾンビだと思って失神したの??? ねぇ、そうなの!?」
声をかけて揺すってみても親子は目を開ける様子がない。
瘴気を吸い過ぎて倒れてしまったのだろうかと不安になったが、親子の顔色は悪くなく息も脈も正常だったので、僕はとりあえず安心した。
「どうしようかな、一人で運ぶのは流石に大変だし……」
僕は何か使える物はないかと辺りを見回して、見つけてしまった。
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