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本編
23.アン・ハッピー・バースデー
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……――――夢見心地だった僕はハッと我に返る。
「!!?」
周りを見回すと、刺すような冷たい視線が僕を睨んでいた。
その余りの目の多さに僕は身を竦め、ぷるぷると震え慄いてしまう。
(えっ!? 何これ、どういう事? 僕は会場に戻ろうとしてたのに、なんでこんな所にいるの? え?? えぇ???)
国王誕生祭の会場中央部で、バースデー・アイス・ケーキが乗っていたであろう皿の上に僕は乗っかっていて、会場中の来賓者達が僕を取り囲むようにして睨み付けていたのだ。
僕は状況がうまく把握できず、自分が何処で何をしていたのか、よく分からなくなっていた。
周囲からの冷え冷えとした視線と、パンパンに張った自分のお腹を見れば――嫌でも察しざるを得ないのだが。
(……僕……食べちゃったの!? ……食べるつもりなんてなかったのに? なんで?? どうして???)
混乱しながらも思考すると、跡形も無くなってしまったケーキの行方はやはり、この大きく張ったお腹の中なのだろうなと思えてしまう。
あれだけの面積を一人で食べたのか、面積的に無理があるんじゃないかと、不思議に思いもしたが、実際に食べてしまった感覚があった。
(甘い匂いがして、その後の記憶が、曖昧で…………あぁ、でも、すごく美味しかった……やっぱり、どう考えても僕が食べちゃった……皆の分のケーキ食べちゃったんだ……うわぁ、どうしよう、どうしよう……)
僕はおろおろとしながら、周囲を見回す。
――右方を見れば、怒りの感情を露にした人々の憎悪する顔。
――左方を見れば、汚らわしいものを見る人々の嫌悪する目。
――後方を見ても、その場から逃れ隠れられる退路は無い。
――前方に広がるのは、王国中から集まった来賓者達の侮蔑する視線。
どこを見ても、そこには僕への悪感情がこもった恐ろしい表情しかない。
(……怖い、怖い、怖い……僕を見る目が怖い……そんな目で見ないで……)
緊張と恐怖に、冷や汗が流れ、胸が苦しくなってくる。
それでも、僕に向けられる悪感情の数々、憎悪、嫌悪、侮蔑、嘲笑、敵意、拒絶、殺意――
「ぶひっ!?」
余りの悪感情に恐怖して、僕は素っ頓狂な声を上げてしまった。
すると、来賓者の誰かが吹き出し笑い声を上げる。
「……ブッ、アハハハハ、アーハハハハハ」
その笑い声につられるようにして、来賓者達も次々に笑い始めた。
「アハハハハ、豚だ豚! 白豚が紛れ込んでおるぞ!! ……まさか白豚の王子とは、これは傑作! クックックックッ」
「なんて傑作だ! 最高傑作が白豚の王子とは、確かに傑作に違いない!! ガハハハハ」
「まぁ、最高傑作がこんなに醜い白豚の王子ですって! 確かに丸々と肥え太った、見事な醜さですわ!! 王国最上級の醜さですわね!!! クスクスクス」
「今年の王国最高峰は白豚の王子だったのね! なんて酷く醜い白豚王子なのかしら!! 最高傑作の醜さだわ!!! キャハハハハ」
侮蔑の視線を向けていた司会係が、ニヤリと不気味な笑みを浮かべる。
「これはこれは、まさかの第一王子の御登場です! これはさぞ、面白いショーを見せて下さる事でしょう!!」
司会係が慇懃無礼な態度で一礼すると、僕にスポットライトの光りが強く当てられ、目が眩む。
王国中から集まった来賓者達がショーの品目として、見世物として僕のその醜い姿を嘲り笑い鑑賞する。
『……なんて醜い豚の王子……出来損ないの第一王子……卑しい血筋の下等な王子……汚らわしい不義の子の王子……白豚の王子……白豚王子……』
悪感情を露にする来賓者達から、僕は酷く嫌われる存在なのだと実感してしまう。
来賓者達だけではなく、王国中の者達からも、世界中の者達からも、僕は疎まれ嫌悪される存在なのだと思えてしまう。
――『第一王子』は公の場で嫌われ者で笑われ者の『白豚王子』になってしまったのだ――
「!!?」
周りを見回すと、刺すような冷たい視線が僕を睨んでいた。
その余りの目の多さに僕は身を竦め、ぷるぷると震え慄いてしまう。
(えっ!? 何これ、どういう事? 僕は会場に戻ろうとしてたのに、なんでこんな所にいるの? え?? えぇ???)
国王誕生祭の会場中央部で、バースデー・アイス・ケーキが乗っていたであろう皿の上に僕は乗っかっていて、会場中の来賓者達が僕を取り囲むようにして睨み付けていたのだ。
僕は状況がうまく把握できず、自分が何処で何をしていたのか、よく分からなくなっていた。
周囲からの冷え冷えとした視線と、パンパンに張った自分のお腹を見れば――嫌でも察しざるを得ないのだが。
(……僕……食べちゃったの!? ……食べるつもりなんてなかったのに? なんで?? どうして???)
混乱しながらも思考すると、跡形も無くなってしまったケーキの行方はやはり、この大きく張ったお腹の中なのだろうなと思えてしまう。
あれだけの面積を一人で食べたのか、面積的に無理があるんじゃないかと、不思議に思いもしたが、実際に食べてしまった感覚があった。
(甘い匂いがして、その後の記憶が、曖昧で…………あぁ、でも、すごく美味しかった……やっぱり、どう考えても僕が食べちゃった……皆の分のケーキ食べちゃったんだ……うわぁ、どうしよう、どうしよう……)
僕はおろおろとしながら、周囲を見回す。
――右方を見れば、怒りの感情を露にした人々の憎悪する顔。
――左方を見れば、汚らわしいものを見る人々の嫌悪する目。
――後方を見ても、その場から逃れ隠れられる退路は無い。
――前方に広がるのは、王国中から集まった来賓者達の侮蔑する視線。
どこを見ても、そこには僕への悪感情がこもった恐ろしい表情しかない。
(……怖い、怖い、怖い……僕を見る目が怖い……そんな目で見ないで……)
緊張と恐怖に、冷や汗が流れ、胸が苦しくなってくる。
それでも、僕に向けられる悪感情の数々、憎悪、嫌悪、侮蔑、嘲笑、敵意、拒絶、殺意――
「ぶひっ!?」
余りの悪感情に恐怖して、僕は素っ頓狂な声を上げてしまった。
すると、来賓者の誰かが吹き出し笑い声を上げる。
「……ブッ、アハハハハ、アーハハハハハ」
その笑い声につられるようにして、来賓者達も次々に笑い始めた。
「アハハハハ、豚だ豚! 白豚が紛れ込んでおるぞ!! ……まさか白豚の王子とは、これは傑作! クックックックッ」
「なんて傑作だ! 最高傑作が白豚の王子とは、確かに傑作に違いない!! ガハハハハ」
「まぁ、最高傑作がこんなに醜い白豚の王子ですって! 確かに丸々と肥え太った、見事な醜さですわ!! 王国最上級の醜さですわね!!! クスクスクス」
「今年の王国最高峰は白豚の王子だったのね! なんて酷く醜い白豚王子なのかしら!! 最高傑作の醜さだわ!!! キャハハハハ」
侮蔑の視線を向けていた司会係が、ニヤリと不気味な笑みを浮かべる。
「これはこれは、まさかの第一王子の御登場です! これはさぞ、面白いショーを見せて下さる事でしょう!!」
司会係が慇懃無礼な態度で一礼すると、僕にスポットライトの光りが強く当てられ、目が眩む。
王国中から集まった来賓者達がショーの品目として、見世物として僕のその醜い姿を嘲り笑い鑑賞する。
『……なんて醜い豚の王子……出来損ないの第一王子……卑しい血筋の下等な王子……汚らわしい不義の子の王子……白豚の王子……白豚王子……』
悪感情を露にする来賓者達から、僕は酷く嫌われる存在なのだと実感してしまう。
来賓者達だけではなく、王国中の者達からも、世界中の者達からも、僕は疎まれ嫌悪される存在なのだと思えてしまう。
――『第一王子』は公の場で嫌われ者で笑われ者の『白豚王子』になってしまったのだ――
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