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本編
17.アイス・ランド王国の国王誕生祭
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大きく開かれた入口を通ると、会場は本当に室内なのかと思うほどの広大さだった。
僕は会場内の美しさに目を奪われる。
魔法による光や水の煌びやかな演出、オーケストラの奏でる上品な音楽、美しく豪勢に整えられた来賓席、どれをとってもそれは見事で豪華絢爛、まるで前世で見た『夢と魔法の国・テーマパーク』みたいだ。
そして、そこに集まった人の多さに僕は驚いた。
これだけの人数の者達が、この王国を支える要人や貴族達なのだと。
それだけの人々を従えているのがアイス・ランド王国の王族・国王陛下なのだと。
この誕生祭は王国と王族の権威と威厳を誇示しているようでもある。
メイド長に促されるままに付いて行くと、入口からほど近い場所に僕は案内された。
身分の低い貴族や新興貴族などが集まっている、下位貴族達の席にほど近い場所に、僕の席はあった。
王族や王子の席とは到底思えない、目立たない場所に設けられた端っこの席が、僕の席だった。
年々、僕の席は王族席や主賓席から遠ざけられていると感じるが、気のせいではないと思う。
「……ふぅ」
僕が一人で席に座り一息吐いていると、僕の姿を見た周囲の下位貴族達がひそひそと声を潜めて囁きはじめる。
「……まぁ、なんですか? あの醜い姿……」
「……随分と丸々とした姿だな……あんなに太った者、今までに見た事がない……」
「……あぁ、そうか……貴方達は誕生祭に参加されるのは初めてでしたね……アレが噂の、第一王子ですよ……ほら、妾妃が残したという、アレですよアレ……くすくす……」
下位貴族達は僕を指し示して、好奇の視線を向ける。
「……ああ、なるほど……アレが噂の……確かに酷く肥え太った醜悪な姿ですね……それにしても醜い……気持ち悪くて、反吐が出そうだ……怖気が立つ……くくくく……」
「……よくもまぁ、あんな姿で人前に出られるものね……あんな姿になったら、アタクシだったら死にたくなるわ……魔法使いとは到底思えない姿ですもの……うふふふ……」
「……それもそうですよ。第一王子は魔力は無いに等しく、素養も無いと噂ですからね……ははははは……」
見も知らなかった下位貴族達が、僕の噂を聞いて侮蔑の視線を向け嘲り笑う。
「……まぁ、魔法使いとも言えない出来損ないですのね……」
「……それはそれは、魔法使いの王族の王子が出来損ないとは、これまた滑稽ですな……」
「……そうそう、それに第一王子にはこんな噂も――」
僕はどこへ行っても陰口を叩かれてしまうようだ。
せっかく浮上していた気持ちが、またドン底の気持ちに巻き戻ってしまった。
(白豚王子のイメージ改善をしようとしても、魔力がほとんど無い出来の悪さを指摘されたら、どうしようもないよ。……白豚王子はゲームでも魔法が使えなくて、汚い手を使って人の魔道具を奪って使っていたし……)
僕は落胆して、溜息を零してしまう。
「……はぁ……」
(早く終わって欲しいな、誕生祭。……今までの僕はどんな気持ちで、この誕生祭に参加していたんだっけ? ……よく思い出せないや……)
過去を振り返ると、僕はこういった時は特に何も考えたくなくて、ひたすら出された食べ物を食べ続けていた気がする。
美味しいスイーツを食べている時だけは、何も考えずに幸せな気持ちに浸っていられるから――でも、今は目の前に出された豪華なご馳走を食べる気にもなれない。
会場内の明かりが徐々に落とされていき、オーケストラが奏でていた音楽も厳かなものへと変わっていく。
「国王陛下、並びに王族の方々の御入場!」
僕は会場内の美しさに目を奪われる。
魔法による光や水の煌びやかな演出、オーケストラの奏でる上品な音楽、美しく豪勢に整えられた来賓席、どれをとってもそれは見事で豪華絢爛、まるで前世で見た『夢と魔法の国・テーマパーク』みたいだ。
そして、そこに集まった人の多さに僕は驚いた。
これだけの人数の者達が、この王国を支える要人や貴族達なのだと。
それだけの人々を従えているのがアイス・ランド王国の王族・国王陛下なのだと。
この誕生祭は王国と王族の権威と威厳を誇示しているようでもある。
メイド長に促されるままに付いて行くと、入口からほど近い場所に僕は案内された。
身分の低い貴族や新興貴族などが集まっている、下位貴族達の席にほど近い場所に、僕の席はあった。
王族や王子の席とは到底思えない、目立たない場所に設けられた端っこの席が、僕の席だった。
年々、僕の席は王族席や主賓席から遠ざけられていると感じるが、気のせいではないと思う。
「……ふぅ」
僕が一人で席に座り一息吐いていると、僕の姿を見た周囲の下位貴族達がひそひそと声を潜めて囁きはじめる。
「……まぁ、なんですか? あの醜い姿……」
「……随分と丸々とした姿だな……あんなに太った者、今までに見た事がない……」
「……あぁ、そうか……貴方達は誕生祭に参加されるのは初めてでしたね……アレが噂の、第一王子ですよ……ほら、妾妃が残したという、アレですよアレ……くすくす……」
下位貴族達は僕を指し示して、好奇の視線を向ける。
「……ああ、なるほど……アレが噂の……確かに酷く肥え太った醜悪な姿ですね……それにしても醜い……気持ち悪くて、反吐が出そうだ……怖気が立つ……くくくく……」
「……よくもまぁ、あんな姿で人前に出られるものね……あんな姿になったら、アタクシだったら死にたくなるわ……魔法使いとは到底思えない姿ですもの……うふふふ……」
「……それもそうですよ。第一王子は魔力は無いに等しく、素養も無いと噂ですからね……ははははは……」
見も知らなかった下位貴族達が、僕の噂を聞いて侮蔑の視線を向け嘲り笑う。
「……まぁ、魔法使いとも言えない出来損ないですのね……」
「……それはそれは、魔法使いの王族の王子が出来損ないとは、これまた滑稽ですな……」
「……そうそう、それに第一王子にはこんな噂も――」
僕はどこへ行っても陰口を叩かれてしまうようだ。
せっかく浮上していた気持ちが、またドン底の気持ちに巻き戻ってしまった。
(白豚王子のイメージ改善をしようとしても、魔力がほとんど無い出来の悪さを指摘されたら、どうしようもないよ。……白豚王子はゲームでも魔法が使えなくて、汚い手を使って人の魔道具を奪って使っていたし……)
僕は落胆して、溜息を零してしまう。
「……はぁ……」
(早く終わって欲しいな、誕生祭。……今までの僕はどんな気持ちで、この誕生祭に参加していたんだっけ? ……よく思い出せないや……)
過去を振り返ると、僕はこういった時は特に何も考えたくなくて、ひたすら出された食べ物を食べ続けていた気がする。
美味しいスイーツを食べている時だけは、何も考えずに幸せな気持ちに浸っていられるから――でも、今は目の前に出された豪華なご馳走を食べる気にもなれない。
会場内の明かりが徐々に落とされていき、オーケストラが奏でていた音楽も厳かなものへと変わっていく。
「国王陛下、並びに王族の方々の御入場!」
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