上 下
18 / 127
本編

16.ケモケモ・モフモフ・フワフワ

しおりを挟む
 一方、少し遡り白豚王子に視点を戻す。

 メイド長の後に続いて歩き出し、前方からの視線に気付いて僕は顔を上げた。
 そして、僕の目に飛び込んできたのは、モフモフとした獣人達の姿だった。

(うわあぁー!? 獣人だ! 獣人がいる!! ケモ耳尻尾だー!!!)

 僕は感動の余り、暗黒微笑を抑えるのも忘れて、ニッコニコに微笑んでしまった。

(だって、獣人だよ獣人! カッコよくて可愛くて愛らしいケモケモ・モフモフ・フワフワ・ワンダフォー・フォーエバー・ラブ!!)

 僕のニッコリ暗黒微笑に吃驚して、毛を逆立ててしまっているのが申し訳ないとは思うものの、余計にモッフモフになっていて可愛く見えてしまう。

(毛を逆立てて威嚇してる仔猫とかって、傍から見ると可愛く見えちゃうよね? この人達は犬系の獣人なのかな? それぞれ、明るい茶色に、濃い茶色に、真っ黒の毛色だ)

 獣人達の出現のおかげで、先程までのドン底だった僕の気持ちは、嘘のように何処かに吹っ飛んでしまった。
 ケモケモはやっぱり尊い、モフモフの力は偉大だなと、当然の事ながら僕は改めて実感したのだ。

(特に一番小さい子は対比で耳尻尾が大きく見えるから、余計に可愛く見える。ふわふわ柔らかそうな毛並み、触ってみたいなぁ……あれ? どこかで見た事あるような?)

 そんな事を考えながら獣人達の横を通り過ぎて、僕はメイド長と距離が空いてしまっている事に気付き、慌てて後を追いかける。

(そう言えば、隣国は獣人の国、ショコラ・ランド王国だったな。……そうだ! そこには僕の最推しがいるんだ! めちゃくちゃカッコよくてクールなダークヒーロー!!)

 僕はゲームに登場していた大好きな獣人のキャラクターに思いを馳せる。
 最初は悪役ポジションかと思われていたキャラクターで、その実、闇に潜み悪をくじくダークヒーローなのだ。

 特殊な能力故に余り表舞台に出てくる事は無いのだが、メインキャラクター達が善故に倒せない悪とも戦い殲滅していく。
 孤高の狼のようで気高く気品のある出で立ち、獣面のハーフマスクから覗く陰のある眼差し、守るべく者達の為にその身を犠牲にする悲劇のダークヒーロー。

 その名も『ダーク・フェイス』、その素顔を見た者は誰も生きながらえる事はできないとされる恐怖の象徴、絶対的強者。
 中二病疾患者の僕には生唾垂れ流しものの大変美味しい設定なのだ。
 とにもかくにも、めちゃくちゃカッコよくて、僕の大好きなキャラクターなのだ。

(さっきのあの子も褐色の肌で色味が似ていたけど、隣国の王族の血縁者かな? 確か、ショコラ・ランド王国の王族は褐色の肌が特徴だった気がする。……という事は、やっぱり前世で考察されてたように、最推しも隣国の王族の血縁者なのかな?)

 僕が考えながら歩いていると、いつの間にか国王誕生祭の会場入口前へと到着していた。
 扉の前に立つと、大きく聳える扉が開かれていく。


 ◆
しおりを挟む
感想 70

あなたにおすすめの小説

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!? 溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。

腐男子(攻め)主人公の息子に転生した様なので夢の推しカプをサポートしたいと思います

たむたむみったむ
BL
前世腐男子だった記憶を持つライル(5歳)前世でハマっていた漫画の(攻め)主人公の息子に転生したのをいい事に、自分の推しカプ (攻め)主人公レイナード×悪役令息リュシアンを実現させるべく奔走する毎日。リュシアンの美しさに自分を見失ない(受け)主人公リヒトの優しさに胸を痛めながらもポンコツライルの脳筋レイナード誘導作戦は成功するのだろうか? そしてライルの知らないところでばかり起こる熱い展開を、いつか目にする事が……できればいいな。 ほのぼのまったり進行です。 他サイトにも投稿しておりますが、こちら改めて書き直した物になります。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

誰よりも愛してるあなたのために

R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。  ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。 前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。 だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。 「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」   それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!  すれ違いBLです。 初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。 (誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 時々おまけを更新しています。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

異世界召喚チート騎士は竜姫に一生の愛を誓う

はやしかわともえ
BL
11月BL大賞用小説です。 主人公がチート。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 励みになります。 ※完結次第一挙公開。

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

処理中です...