4 / 127
本編
02.僕は嫌われ者の王子様
しおりを挟む
……――――時は遡ること数年前。
大好きなスイーツ、あれもこれも美味しい、甘いものは幸せの味。
僕は幸せな気持ちでスイーツを頬張る。
「もぐもぐ、ぺろぺろ、さくさく、かりかり、ぱりぱり、ごくごく――」
でも、そんな幸せな気持ちは長続きしない。
「――ごっくん。……」
また、スイーツが無くなってしまった。
沢山あったはずのスイーツも、食べてしまえば幸せな気持ちと一緒に消えて無くなってしまう。
空になってしまった皿を眺め、僕は落胆して溜息を吐く。
「……はぁ……」
庭園にあるガゼボのガーデンテーブルで、いつものように僕は一人で席に座り、お茶の時間を過ごしていた。
辺りを見回してみても、近くに人の気配はなく、ガゼボの周りは閑散としている。
少し逡巡した後、僕は呼び鈴を鳴らして給仕係を呼び付けた。
「足りない! もっと、もっと、沢山スイーツ持ってきて!!」
「……本日のスイーツは先程のものでお終いになります」
僕は憤慨して、テーブルを両手でバンバンと叩き、給仕係を怒鳴りつける。
「うるさい! 僕が持ってきてって言ったら持ってくるんだ!! 僕は王子で、お前達は召使いなんだから! 黙って僕の言う通りにすればいいんだ!!」
「……かしこまりました」
癇癪を起こす僕にうんざりした視線を向ける給仕係は早々に諦め、直ぐに追加のスイーツを取りに行く。
少しして、給仕係が追加のスイーツを運んできて、僕の前に並べていく。
目の前に並べられた沢山のスイーツに僕は目を輝かせ、嬉々として頬張り、その味に舌鼓を打つ。
「もぐもぐ、ぺろぺろ、さくさく、かりかり、ぱりぱり、ごくごく――」
スイーツを食べている間だけは、何もかも忘れて夢中になれる。
嫌なことも辛いことも何も考えなくていい、ただ幸せな気持ちに浸っていられるのだ。
「――ごっくん。…………あ」
それでも、食べ終わってしまえば、味気のない現実に引き戻されてしまう。
また空になってしまった皿を眺め、僕は意気消沈して項垂れる。
僕が項垂れていると、少し離れた所からひそひそと話す声が聞こえてくる。
「……あれだけあったのに、もう食べてしまったわよ……」
「……見てよ、あの肥え太った身体。どこまで太れば気が済むのかしら……」
「……あんな身体で、よく平気でいられるわよね。恥ずかしくないのかしら……」
「……恥知らずで卑しい出自ですもの……仕方ないわよ……くすくす……」
清掃のメイド達だろうか、声を潜めて陰口を叩き、僕を見て嘲笑っている。
この城内で僕へ好意を向ける者など誰もいない。僕は嫌われ者だ。
騒ぎを起こすか問題を起こすかでもしないかぎり、誰も僕に関わらないし、見向きもしない。
僕は自分の存在を知らしめるためにわざと声を張り上げて叫び、幸せな気持ちになれるスイーツを強請している。
そうすれば、益々嫌われると分かっていても、誰にも見向きもされないよりかは、少しだけましに思えるから。
そんな僕が陰口を叩かれるのはいつものことだ。そう思い、鼻を鳴らす。
「ふん」
陰口を叩かれ慣れているとはいえ、散々嫌味なことを言われて釈然とはしない。
僕は自分が着ていた衣装に、スイーツで汚れてしまった手を拭いて、嫌がらせをしてやることにした。
(メイド達め、衣装の手入れで大変になってしまえ!)
そんな僕の様子を見て、聞こえていると知ってか知らずか、メイド達はまだ僕の陰口を叩き続けている。
「……またあんなに汚して、品位の欠片もないわね。まるで汚い獣のよう……」
「……卑しく汚ならしい豚ね。本物の豚の方がまだ綺麗なんじゃないかしら……」
「……豚にも劣るなんて流石に言いすぎじゃない……仮にも王子よ……ふふ……」
「……なら丸々肥え太った白豚みたいな王子……白豚王子ね……くすくす……」
僕はその言葉を耳にした瞬間、ピシャーンッと雷に打たれるような衝撃を受けた。
『白豚王子』というワードで、僕は前世の記憶を思い出したのだ。――――……
◆
大好きなスイーツ、あれもこれも美味しい、甘いものは幸せの味。
僕は幸せな気持ちでスイーツを頬張る。
「もぐもぐ、ぺろぺろ、さくさく、かりかり、ぱりぱり、ごくごく――」
でも、そんな幸せな気持ちは長続きしない。
「――ごっくん。……」
また、スイーツが無くなってしまった。
沢山あったはずのスイーツも、食べてしまえば幸せな気持ちと一緒に消えて無くなってしまう。
空になってしまった皿を眺め、僕は落胆して溜息を吐く。
「……はぁ……」
庭園にあるガゼボのガーデンテーブルで、いつものように僕は一人で席に座り、お茶の時間を過ごしていた。
辺りを見回してみても、近くに人の気配はなく、ガゼボの周りは閑散としている。
少し逡巡した後、僕は呼び鈴を鳴らして給仕係を呼び付けた。
「足りない! もっと、もっと、沢山スイーツ持ってきて!!」
「……本日のスイーツは先程のものでお終いになります」
僕は憤慨して、テーブルを両手でバンバンと叩き、給仕係を怒鳴りつける。
「うるさい! 僕が持ってきてって言ったら持ってくるんだ!! 僕は王子で、お前達は召使いなんだから! 黙って僕の言う通りにすればいいんだ!!」
「……かしこまりました」
癇癪を起こす僕にうんざりした視線を向ける給仕係は早々に諦め、直ぐに追加のスイーツを取りに行く。
少しして、給仕係が追加のスイーツを運んできて、僕の前に並べていく。
目の前に並べられた沢山のスイーツに僕は目を輝かせ、嬉々として頬張り、その味に舌鼓を打つ。
「もぐもぐ、ぺろぺろ、さくさく、かりかり、ぱりぱり、ごくごく――」
スイーツを食べている間だけは、何もかも忘れて夢中になれる。
嫌なことも辛いことも何も考えなくていい、ただ幸せな気持ちに浸っていられるのだ。
「――ごっくん。…………あ」
それでも、食べ終わってしまえば、味気のない現実に引き戻されてしまう。
また空になってしまった皿を眺め、僕は意気消沈して項垂れる。
僕が項垂れていると、少し離れた所からひそひそと話す声が聞こえてくる。
「……あれだけあったのに、もう食べてしまったわよ……」
「……見てよ、あの肥え太った身体。どこまで太れば気が済むのかしら……」
「……あんな身体で、よく平気でいられるわよね。恥ずかしくないのかしら……」
「……恥知らずで卑しい出自ですもの……仕方ないわよ……くすくす……」
清掃のメイド達だろうか、声を潜めて陰口を叩き、僕を見て嘲笑っている。
この城内で僕へ好意を向ける者など誰もいない。僕は嫌われ者だ。
騒ぎを起こすか問題を起こすかでもしないかぎり、誰も僕に関わらないし、見向きもしない。
僕は自分の存在を知らしめるためにわざと声を張り上げて叫び、幸せな気持ちになれるスイーツを強請している。
そうすれば、益々嫌われると分かっていても、誰にも見向きもされないよりかは、少しだけましに思えるから。
そんな僕が陰口を叩かれるのはいつものことだ。そう思い、鼻を鳴らす。
「ふん」
陰口を叩かれ慣れているとはいえ、散々嫌味なことを言われて釈然とはしない。
僕は自分が着ていた衣装に、スイーツで汚れてしまった手を拭いて、嫌がらせをしてやることにした。
(メイド達め、衣装の手入れで大変になってしまえ!)
そんな僕の様子を見て、聞こえていると知ってか知らずか、メイド達はまだ僕の陰口を叩き続けている。
「……またあんなに汚して、品位の欠片もないわね。まるで汚い獣のよう……」
「……卑しく汚ならしい豚ね。本物の豚の方がまだ綺麗なんじゃないかしら……」
「……豚にも劣るなんて流石に言いすぎじゃない……仮にも王子よ……ふふ……」
「……なら丸々肥え太った白豚みたいな王子……白豚王子ね……くすくす……」
僕はその言葉を耳にした瞬間、ピシャーンッと雷に打たれるような衝撃を受けた。
『白豚王子』というワードで、僕は前世の記憶を思い出したのだ。――――……
◆
32
お気に入りに追加
1,278
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
フェル 森で助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと一緒に暮らす話
カトウ
ファンタジー
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。
チートなんてない。
日本で生きてきたという曖昧な記憶を持って、少年は育った。
自分にも何かすごい力があるんじゃないか。そう思っていたけれど全くパッとしない。
魔法?生活魔法しか使えませんけど。
物作り?こんな田舎で何ができるんだ。
狩り?僕が狙えば獲物が逃げていくよ。
そんな僕も15歳。成人の年になる。
何もない田舎から都会に出て仕事を探そうと考えていた矢先、森で倒れている美しい女性騎士をみつける。
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。
女性騎士に一目惚れしてしまった、少し人と変わった考えを方を持つ青年が、いろいろな人と関わりながら、ゆっくりと成長していく物語。
になればいいと思っています。
皆様の感想。いただけたら嬉しいです。
面白い。少しでも思っていただけたらお気に入りに登録をぜひお願いいたします。
よろしくお願いします!
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しております。
続きが気になる!もしそう思っていただけたのならこちらでもお読みいただけます。
この道を歩む~転生先で真剣に生きていたら、第二王子に真剣に愛された~
乃ぞみ
BL
※ムーンライトの方で500ブクマしたお礼で書いた物をこちらでも追加いたします。(全6話)BL要素少なめですが、よければよろしくお願いします。
【腹黒い他国の第二王子×負けず嫌いの転生者】
エドマンドは13歳の誕生日に日本人だったことを静かに思い出した。
転生先は【エドマンド・フィッツパトリック】で、二年後に死亡フラグが立っていた。
エドマンドに不満を持った隣国の第二王子である【ブライトル・ モルダー・ヴァルマ】と険悪な関係になるものの、いつの間にか友人や悪友のような関係に落ち着く二人。
死亡フラグを折ることで国が負けるのが怖いエドマンドと、必死に生かそうとするブライトル。
「僕は、生きなきゃ、いけないのか……?」
「当たり前だ。俺を残して逝く気だったのか? 恨むぞ」
全体的に結構シリアスですが、明確な死亡表現や主要キャラの退場は予定しておりません。
闘ったり、負傷したり、国同士の戦争描写があったります。
本編ド健全です。すみません。
※ 恋愛までが長いです。バトル小説にBLを添えて。
※ 攻めがまともに出てくるのは五話からです。
※ タイトル変更しております。旧【転生先がバトル漫画の死亡フラグが立っているライバルキャラだった件 ~本筋大幅改変なしでフラグを折りたいけど、何であんたがそこにいる~】
※ ムーンライトノベルズにも投稿しております。
小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!
棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。
【完結】もふもふ獣人転生
*
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。
ちっちゃなもふもふ獣人と、攻略対象の凛々しい少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。
本編完結しました!
おまけをちょこちょこ更新しています。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
氷の華を溶かしたら
こむぎダック
BL
ラリス王国。
男女問わず、子供を産む事ができる世界。
前世の記憶を残したまま、転生を繰り返して来たキャニス。何度生まれ変わっても、誰からも愛されず、裏切られることに疲れ切ってしまったキャニスは、今世では、誰も愛さず何も期待しないと心に決め、笑わない氷華の貴公子と言われる様になった。
ラリス王国の第一王子ナリウスの婚約者として、王子妃教育を受けて居たが、手癖の悪い第一王子から、冷たい態度を取られ続け、とうとう婚約破棄に。
そして、密かにキャニスに、想いを寄せて居た第二王子カリストが、キャニスへの贖罪と初恋を実らせる為に奔走し始める。
その頃、母国の騒ぎから逃れ、隣国に滞在していたキャニスは、隣国の王子シェルビーからの熱烈な求愛を受けることに。
初恋を拗らせたカリストとシェルビー。
キャニスの氷った心を溶かす事ができるのは、どちらか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる