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残ライフ3

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「うっ……くっ……」

 く、苦しい──。
 息が、息ができない──。
 ものすごい力で、締め付けられ、圧迫されて──。

「は、吐きそう……」
「さっきからうるさいですよ、義姉上」

 馬車はガタゴトと揺れている。
 車と比べるとかなりひどい乗り心地だ。
 先ほどマリアに仕込まれたコルセットと相まって、吐き気が──。

「もう死んだほうがましかもしれない……」

 どうせまた生き返るんだし──。
 ──駄目だ、私の中でどんどん命の重さが軽くなっている気がする──。
 
「……というか義姉上、それ、どうしたんですか」

 セザリエ、もう少し姉の心配をしてくれないか──?
 それ、と言われ一応セザリエの視線を辿れば──私の右手首を見ていた。
 ──マリアの選んでくれた、この袖なしドレスのせいで、アレが露わになっている。
 
「も、もしかして、今まで気付かなかったのか……?」
「そんなに義姉上を注意して見てませんので」

 これは──私と身体が入れ替わる前から、マーサちゃんが彫っていた刺青だという線もあったが、その可能性はこれで消えたな。
 この、手首の謎の〝正〟の字、
 最初見たときはたしかに、正の字だった。
 しかし今それは、不思議なことに線が二本消えていて──おそらく私が思うに、3を表している。

「……ちょっと気分転換に、刺青を彫ってみたんだ」

 私もドレスへ着替えているときに、これに気付いたのだが──。
 きっと、何かを表しているのだと思うのだが──それがさっぱり分からない。
 最初は5あって、それから2消えて、3になったもの──?

「そんなにグレるほど堪えてたんですね……」

 その言葉に見上げると、弟は残念そうな声音を出してはいるが、やはり口元は愉しげに歪んでいる。
 ──ブレないやつだな。

「そうだよ、だから姉をもっと労わりなさい」
「あ、ほら着きましたよ」

 話を逸らすな。
 ──でもそういえば、馬車の外で、何やら賑やかな話し声が聞こえてきている。
 どんな様子かと、セザリエと同じく窓の外を見やれば──う~ん、マーサの屋敷よりは小さい邸宅だが、そんなことより、その前に──も、ものすごい人!!
 見れば老若男女の紳士淑女たちが、広い庭で歓談しているし、邸宅の一階の窓やドアからも、人混みが覗いている。
 みんな、どこか洗練された──例えるならば、昔じいさんと新婚旅行で泊まった、東京は銀座の高級三ツ星ホテルの客たちのごとく、洗練された装いの上品な方々が、ここに出揃っていた。
 思わず圧倒されていると隣で、含んだ笑い声。

「ふふ、驚いたような顔しないでくださいよ。分かってたでしょ? ここにいるこういう人たち全員に、あなたはこの国から見放されたと……この国の王妃になる今宵の主役を悪しざまにした、と思われてること」
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