15 / 17
残ライフ3
15.
しおりを挟む
「うっ……くっ……」
く、苦しい──。
息が、息ができない──。
ものすごい力で、締め付けられ、圧迫されて──。
「は、吐きそう……」
「さっきからうるさいですよ、義姉上」
馬車はガタゴトと揺れている。
車と比べるとかなりひどい乗り心地だ。
先ほどマリアに仕込まれたコルセットと相まって、吐き気が──。
「もう死んだほうがましかもしれない……」
どうせまた生き返るんだし──。
──駄目だ、私の中でどんどん命の重さが軽くなっている気がする──。
「……というか義姉上、それ、どうしたんですか」
セザリエ、もう少し姉の心配をしてくれないか──?
それ、と言われ一応セザリエの視線を辿れば──私の右手首を見ていた。
──マリアの選んでくれた、この袖なしドレスのせいで、アレが露わになっている。
「も、もしかして、今まで気付かなかったのか……?」
「そんなに義姉上を注意して見てませんので」
これは──私と身体が入れ替わる前から、マーサちゃんが彫っていた刺青だという線もあったが、その可能性はこれで消えたな。
この、手首の謎の〝正〟の字、だったもの。
最初見たときはたしかに、正の字だった。
しかし今それは、不思議なことに線が二本消えていて──おそらく私が思うに、3を表している。
「……ちょっと気分転換に、刺青を彫ってみたんだ」
私もドレスへ着替えているときに、これに気付いたのだが──。
きっと、何かを表しているのだと思うのだが──それがさっぱり分からない。
最初は5あって、それから2消えて、3になったもの──?
「そんなにグレるほど堪えてたんですね……」
その言葉に見上げると、弟は残念そうな声音を出してはいるが、やはり口元は愉しげに歪んでいる。
──ブレないやつだな。
「そうだよ、だから姉をもっと労わりなさい」
「あ、ほら着きましたよ」
話を逸らすな。
──でもそういえば、馬車の外で、何やら賑やかな話し声が聞こえてきている。
どんな様子かと、セザリエと同じく窓の外を見やれば──う~ん、マーサの屋敷よりは小さい邸宅だが、そんなことより、その前に──も、ものすごい人!!
見れば老若男女の紳士淑女たちが、広い庭で歓談しているし、邸宅の一階の窓やドアからも、人混みが覗いている。
みんな、どこか洗練された──例えるならば、昔じいさんと新婚旅行で泊まった、東京は銀座の高級三ツ星ホテルの客たちのごとく、洗練された装いの上品な方々が、ここに出揃っていた。
思わず圧倒されていると隣で、含んだ笑い声。
「ふふ、驚いたような顔しないでくださいよ。分かってたでしょ? ここにいるこういう人たち全員に、あなたはこの国から見放されたと……この国の王妃になる今宵の主役を悪しざまにした、と思われてること」
く、苦しい──。
息が、息ができない──。
ものすごい力で、締め付けられ、圧迫されて──。
「は、吐きそう……」
「さっきからうるさいですよ、義姉上」
馬車はガタゴトと揺れている。
車と比べるとかなりひどい乗り心地だ。
先ほどマリアに仕込まれたコルセットと相まって、吐き気が──。
「もう死んだほうがましかもしれない……」
どうせまた生き返るんだし──。
──駄目だ、私の中でどんどん命の重さが軽くなっている気がする──。
「……というか義姉上、それ、どうしたんですか」
セザリエ、もう少し姉の心配をしてくれないか──?
それ、と言われ一応セザリエの視線を辿れば──私の右手首を見ていた。
──マリアの選んでくれた、この袖なしドレスのせいで、アレが露わになっている。
「も、もしかして、今まで気付かなかったのか……?」
「そんなに義姉上を注意して見てませんので」
これは──私と身体が入れ替わる前から、マーサちゃんが彫っていた刺青だという線もあったが、その可能性はこれで消えたな。
この、手首の謎の〝正〟の字、だったもの。
最初見たときはたしかに、正の字だった。
しかし今それは、不思議なことに線が二本消えていて──おそらく私が思うに、3を表している。
「……ちょっと気分転換に、刺青を彫ってみたんだ」
私もドレスへ着替えているときに、これに気付いたのだが──。
きっと、何かを表しているのだと思うのだが──それがさっぱり分からない。
最初は5あって、それから2消えて、3になったもの──?
「そんなにグレるほど堪えてたんですね……」
その言葉に見上げると、弟は残念そうな声音を出してはいるが、やはり口元は愉しげに歪んでいる。
──ブレないやつだな。
「そうだよ、だから姉をもっと労わりなさい」
「あ、ほら着きましたよ」
話を逸らすな。
──でもそういえば、馬車の外で、何やら賑やかな話し声が聞こえてきている。
どんな様子かと、セザリエと同じく窓の外を見やれば──う~ん、マーサの屋敷よりは小さい邸宅だが、そんなことより、その前に──も、ものすごい人!!
見れば老若男女の紳士淑女たちが、広い庭で歓談しているし、邸宅の一階の窓やドアからも、人混みが覗いている。
みんな、どこか洗練された──例えるならば、昔じいさんと新婚旅行で泊まった、東京は銀座の高級三ツ星ホテルの客たちのごとく、洗練された装いの上品な方々が、ここに出揃っていた。
思わず圧倒されていると隣で、含んだ笑い声。
「ふふ、驚いたような顔しないでくださいよ。分かってたでしょ? ここにいるこういう人たち全員に、あなたはこの国から見放されたと……この国の王妃になる今宵の主役を悪しざまにした、と思われてること」
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
男女比:1:450のおかしな世界で陽キャになることを夢見る
卯ノ花
恋愛
妙なことから男女比がおかしな世界に転生した主人公が、元いた世界でやりたかったことをやるお話。
〔お知らせ〕
※この作品は、毎日更新です。
※1 〜 3話まで初回投稿。次回から7時10分から更新
※お気に入り登録してくれたら励みになりますのでよろしくお願いします。
ただいま作成中
婚約者すらいない私に、離縁状が届いたのですが・・・・・・。
夢草 蝶
恋愛
侯爵家の末姫で、人付き合いが好きではないシェーラは、邸の敷地から出ることなく過ごしていた。
そのため、当然婚約者もいない。
なのにある日、何故かシェーラ宛に離縁状が届く。
差出人の名前に覚えのなかったシェーラは、間違いだろうとその離縁状を燃やしてしまう。
すると後日、見知らぬ男が怒りの形相で邸に押し掛けてきて──?
【完結】お父様の再婚相手は美人様
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
シャルルの父親が子連れと再婚した!
二人は美人親子で、当主であるシャルルをあざ笑う。
でもこの国では、美人だけではどうにもなりませんよ。
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる