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魔獣狩り編
Lv.103 不信
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「単純な作業だ、そう身構えなくていい。品の在庫を数えこに記入を。数字は書けるか」
「はい」
「計算機も渡しておくが不明な点があれば今の内に解決しておけ」
「この形状のものは初めてです。計算はどのように?」
「そうか、使用方法からだな。まずこのツマミを動かしてみろ」
計算機の使用方法を教わってから渡された書類を見た。品名の上に記号がついている。これは品を管理する各箱にも書いてあり、文字が読めない者たちにも商品ごとの判別が出来るようつけられたものだろう。
新興商会と聞いていたが、管理や配慮が行き届いていて不足がない。
そこが、恐ろしいところだ。
書類管理に関して手慣れている様子に、労働力となる階級の人間のことをよくわかっている点。
自身や周囲が文字を読めるとなればそれが当たり前にすり替わり大したことではなくなるのが常である。この町の役人のように。
しかし若様にはそれが見られない。自分とその下に就く者の能力が同一でないことを正しく理解し、認識のズレが互いに生じないよう調整している。「上へ立つことに慣れた人間だ」という印象を抱くには充分だ。
若様は淀みなく指示を出し自身も書類を捌いているが、こちらへ与えられる配分に無理がなく、手元に戸惑いや迷いを感じない。
ノーレさんという侍女もいることから裕福な家の出であることは間違いない。侍女が居るのであれば人を動かすことに慣れていてもおかしくは無いが、それならば今までは何をしていたのだろう。
ノーレさんは見習い期間もなく任されたと言っていた。では一体どこでこのような経験を学んだのか。
「確認しておきたいことがある」
「なんですか」
「その膝の上に乗っているのはなんだ。家畜か、非常食か」
〔はっは上等だ。顔に焼き目つけてやる〕
「えっと、あー、この子は僕の一部というか」
暴れ出したイヴァを抑え付け言葉を濁す。いくら若様が怪しいとはいえ丸焦げにされてはマズい。
「一部?」
「若様は愛玩動物を傍に置いたことはありませんか。愛着さえ湧けば家族のような近しい存在になります」
「……ないな。その毛玉が家族か」
〔決めたぜキサラ。こいつは炭にする〕
(ダメだってば)
「食用ではなく愛玩動物とは。どこにそんな余裕がある」
「侮ってはいけませんよ、こんなに小さい体ですが狩りも出来るんです」
〔そうだお前なんて一捻りだ〕
(ちょっと黙って)
「ほう?」
愛玩動物ではさすがに無理があったか。懐が寂しくて仕事を求めているような旅人が、おおよそ家畜には見えず食用でもない動物を飼い馴らしていたら確かに奇妙である。
しかし狩りの言葉に反応した若様はイヴァに興味を持ったようだ。
「狩りに向くのは猟犬、鷹や召喚獣辺りだと思っていたが。見た目から油断でも誘うのか」
「そんなところです」
「闘争心は確かに立派だろう、現に暴れている。今後その凶暴な生き物は連れて来るな」
「え」
「今こうして連れ歩いていること自体不思議だが? 愛玩目的の所有であれば尚更置いて来るべきだ」
至極マトモな言い分である。普通商品を扱う場に敢えて動物を連れ込むようなことはしない。例えこの場に食料品が並んでいなかったとしてもだ。
暴れていたイヴァもピタリと動きを止めて威嚇をするに留まる。
「仰られることは、ごもっともです。でも……」
頭の中が真っ白になってしまった。言い訳を考えようにも上手いものは見つからず口を開いたところで先を紡げない。
イヴァを抱えていた腕に力を込めて見下ろした。この体が離れてしまえば、僕は死ぬ。
そんなことを説明して理解は得られるだろうか? そもそもこれは誰かに打ち明けるべきことではない。
途方に暮れていると頭上から若様の溜息が聞こえて来た。
「……それ程離れがたい様子を見せられてはな。多少は目を瞑ってやる」
「本当ですか、若様」
「その代わり何か問題を起こせば真っ先にそれを摘まみ出すぞ」
「はい、勿論です」
「わかったら手を動かせ。次の赤日までに全てまとめておきたい」
「赤の日ですか」
今日は確か、空日・氷夜だ。明日が青日・水夜で明後日が紫日・重夜、明々後日が赤日・炎夜になる。ということは三日後だ。
ここに橙日・土夜、黄日・雷夜、緑日・風夜が加わり七日で一周、赤日・炎夜から始まり紫日・重夜までを一週間と数える。
時計は公共の場になら存在するのだが、各家庭で所有可能なのは貴族か名のある商人のみ。それ以下の階級にある人間には正確な時間が測れないのである。そこで一日を色と魔法属性に分け、例えば今日であれば朝から昼にかけてを空日、昼から夜にかけてを氷夜と呼んで予定を立てる。
領地の当主が鐘報師を勤めるため曇りであろうときっちり朝と夜が昼に区切られるのだ。
何故人間……人族と呼ばれる部類が魔法も使えないのに属性で時間を表したのか? それに関しては神話に始まりの物語が記載されている。
虹から色を賜った各初代国王たちはそれが属性色と一致していることに気が付いた。次第に自分たちの纏う色の属性魔法に興味を持ち、それを司る原初の柱たちを崇めるようになる。
やがて原初の七天使からは祝福を、原初の七精からは加護を受け取った。その日から色は属性と国の色を表すようになり、これを忘れず敬えば恩恵を受けられるという逸話がある。
この国を司る色は黄色のため、王族が得られる恩恵があるとすれば雷の力だ。
「炎夜まで伸びるとどうなりますか」
「その頃には荷を運び出す予定だ。迎えが外に到着する時間を見越し、限界まで期限を引き延ばしたのが赤日にあたる」
「そうですか。急ぎます」
確認作業が終わり次第ここを出るようだ。本来もう少し人手を加えて行う予定だったため、想定より随分遅れが出てしまっているのだという。
簡単な数え作業とは別にして、若様にはやらなければならないことがたくさんある。その証拠に机の上は書類が山積みだった。
あれを見てしまえば手伝ってくれないからと不満を抱くのも馬鹿らしい。ノーレさんも加わり数え作業は続いた。
「外がまた騒がしくなってきたな。そういえば昨夜町に魔獣が出たと言っていたか」
「でも暴れたり抗議しているような感じではないですね」
「何か動きがあったのでしょう。私が見て参ります」
「ああ」
ノーレさんが席を立ち外の様子を見に行く。若様は作業の手を止めペンを置くと帰り支度をするようにと促した。
「同じことの繰り返しだがやり方は覚えただろう」
「でも赤日までにと」
「初日であればこのようなものだ。力を入れるなら明日からにすればいい」
妙な騒ぎでも起きれば帰れなくなる。契約印を辿ってコルラスのところへ転移という手もあるが、その瞬間を見られては面倒だ。ここは若様の提案に乗った方がいいだろう。
急いで手元に広げてあった箱や書類を片付け屋敷を飛び出した。
「キサラお帰り」
「シーラ。色硬糸はどうなった?」
「それがね、すごいんだよ。こっち来て」
シーラに手を引かれ兄さんたちが使っている部屋へ入るとタスラの前にもう一人、例のコボルトの少年が居た。目が覚めたとは聞いていたがこうして顔を合わせるのは初めてだ。
「初めまして、ウィバロです」
「僕はキサラ。初めまして」
軽く挨拶を済ませて腰を下ろす。やはり狭いが仕方がない。皆小柄なのが幸いか。
タスラとシーラは楽し気にウィバロを褒め始めた。知り合いのドワーフの下で働いていたことがあり、知識が豊富なのだそうだ。
「加工方法が変わってるんだ」
「こっちがキサラが編み込んだ色硬糸で、こっちがウィバロの編み込んだ色硬糸」
「わ、全然違う。これはどうやって?」
「編み込みの過程で精霊魔法を使うんだ。ドワーフによって方法は違うけど、皆自分の力を用いて物を作る。魔導具も、こういった加工品も」
「それで人間が作るより質が高いんだ」
「簡単に言えばそう。人族の視認出来ない部分に不具合の原因があったりするから妖精の造る道具を修繕出来ないんだろうね」
なるほど、ウィバロの言葉で色々と納得がいった。
二つ並べられた色硬糸は一目で見てわかる程出来上がりが違う。ウィバロが手掛けた色硬糸は手触りも良く光沢すらある。文句なしの高品質だった。
同じ材料でここまでのものを作る技術力に胸が高鳴った。職人の技というのは惚れ惚れする程素晴らしく、その原料提供が自分だと思えばこれ程誇らしいことはない。
「原料になる品種は普通に咲かせるだけなら問題ないけど、加工用にするとなればどうしても手を加える必要があるし、こんなに多く素材があるとは思わなかった」
ウィバロの言う通りだ。フロムレアを加工しようと思ったら花が咲く前に色々と手を加えなくてはならない。不思議なことに花の茎が真っ直ぐにならないと採れない成分があるので棒を添え固定したり、を筆頭に幾つか注意点が存在する。どれか一つでも手順を損なうと「綺麗な花が咲いた」で終わってしまうのだ。
「これで硬度が格段に上がったはずだよ」
「元々切れ味はすごかったけどね」
「おう、これ防具代わりに出来るんじゃねぇか」
「出来なくはないと思うけど」
「イヴァ、ファリオンさんがそれをやろうとしてバラバラになった人の話してたでしょ」
「これが切れるときの条件がわかんねぇんだろ? それにな、思い出してみろよ。素手で色硬糸握ってたファリオンは無事だったろうが」
「「「あ」」」
わざわざ切れ味の話をした後で実演をしたくらいだ。危険性があるなら手も出さなかっただろう。ご満悦で購入していた姿を思い出せば条件を知っているのは確実である。
「切れる条件か切れない条件かは知らねぇがな、知ってるってんなら生かしてこその知識だろう。おいチビども、夕食の時間ファリオンをよく見張れよ。腹ごしらえ終わったら即捕獲、かつ尋問だ」
「おお!」
「頼めば教えてくれるんじゃないかな」
タスラ、シーラ、ウィバロはファリオンさんからどう話を聞き出すか作戦を立て始めた。満足気に頷いているイヴァの頬を抓りつつ部屋を出る。生かしてこその知識という点は共感したので会議を止めるようなことはしない。
〔何が問題なんだよ〕
(強いて言えばその好戦的過ぎるところかな。交渉さえすれば得られることもあるからね)
〔交渉ね、随分と商人の考えってやつが染み込んでやがるな。それよりもコルラスはどこ行ったんだ〕
(布の上に丸まって寝てたよ。前に結界を張るのは苦手って言ってたし疲れてるんじゃないかな。少しでも負担が軽くなればいいんだけど)
〔ま、タスラが居るんなら気を張ることもねぇか〕
下の階へ降りて水を汲み取る。外を見れば夕焼けで、そろそろ食事の支度を始めた方が良さそうだ。夜活発化する魔獣が出たことで皆無理矢理仕事を早く終わらせ帰路についている。子供などは遊びに行くのを禁止されて気の毒な程落ち込んでいるのも見かけた。
今日も何かで騒いでいたし、町の中だけで回せる物資も心許無い。毎日のように開かれていたほとんどの店が休みの日を増やしたり店じまいを早めたりしている。一体この状況はいつまで続くのだろう。
階段を登っている途中、兄さんが帰って来た。
僕が居るのに気が付いたようで、外套を脱ぎながら素早く寄って来る。早く部屋にと促され、今は編み込みをしているからと僕らの部屋へ通す。
「それで、何があったの?」
「騒ぎのことは知ってたか。やっと魔術師協会から派遣された魔術師が到着したんだ」
「ああ、だから皆見に行ったんだ。調査はもう始まってるって?」
「そこまでは聞き出せなかった。俺はあくまで手伝いだからな。……ただ、遠くから見た限りここへ来たのはたったの三人だ」
「三人!?」
そんな少人数で調査だなんて、一体何年かけるつもりなんだ。
兄さんは苦々し気な表情で「まるで事態を把握していない」と零した。誰が魔術師協会へ依頼を出したのかはわからないが、肝心なところは全く伝わっていないようだ。
例えば、原因となる要素が全くないにも関わらず魔獣が活発になったこと。滅多に現れない人の領域へ何度も侵入していることなど。
何より大事なことは、その数が尋常じゃないことだ。
「なんか思い出さねぇか、キサラ」
「何を?」
「御伽ノ隣人だよ。子爵自ら異常事態宣言、協力要請を求めたにも関わらず、やって来たのはなんだった」
「適さない人材?」
「そう、下っ端だ。三人しか来なかったってことは少数精鋭の形を取ってるか、もしくは驚くほどの軽視の現れだろうぜ」
誘拐の事件が起きたとき、パドギリア子爵が協力要請を出し、受け取ったのは「セルぺゴ」だった。彼が加担・実行の役割を果たしていたことで正確な情報は止められ、人数ばかりでその場にそぐわない人員が並んだのを思い出す。
「事態の深刻さが伝わっていない節があるのは同感だ。誰かが情報を止めていると言いたいのか?」
「仮の話だ。状況はよく似てる」
「……そうだとすれば魔術師協会が怪しいか。今回の異常は広範囲だと考えられる。ということは各地から報告が上がったはずだ。一つの町が情報を隠しても別の町から入る情報で把握出来るはずだろう」
「単純な不手際や不始末っていう可能性は?」
「まーそれも捨てきれねぇな。こういった事態が起きる度に町が大袈裟な報告上げてたとしたら、なんの不思議もねぇ」
「そうだな。だが、『協力者内部に妨害をしている奴が居る』ぐらいの警戒をしても損はないだろう。杞憂だったで終わる方が余程いい」
魔術師協会の人間に接触し直接探りを入れた方が簡単なのだろうが、パドギリア子爵邸に居たときと違って僕らに協力者は居ない。町に閉じ込められたことである種一体感や仲間意識のようなものは抱いているが、それもなんとなくそう感じる、という程度だ。
食糧が尽きるのではないか、魔獣が襲ってくるのではないかと過ごしているところへこんな話をしてしまえば間違いなく人々は魔術師協会を責め立てる。
もしも本当に杞憂で魔術師協会に何の落ち度もなかった場合、混乱は調査の妨げにしかならない。
協力者は欲しいが、状況を見れば僕らの内だけで留めておく方がいいだろう。
「あ、そうだ。今日役人に紹介を受けて雇ってもらえることになったよ」
「役所にか?」
「ううん、新興の商会らしいんだけど、昨日この町に来たって」
「へぇ、間の悪い。今入ったって簡単には出れないだろう」
「この町の状況を知ってたら来なかっただろうね」
「話が広まらなかったんだろう。何にせよしばらくは安心だな」
「いや、それが……」
若様に「迎え」が来るから次の炎夜にはここを出るのだと説明した。役人から説明は受けただろうし、護衛が居なければ出れると断言するはずもない。
一見横暴そうな口振りをしているが理不尽なことは一つも言わなかった。イヴァが仕事場に居ることすら最終的には許してくれたのだ、道理というものを知っていてわがままを押し通すような人ではないだろう。
「随分と手際が良いんだな」
「そうかな」
「新興ということは名の知れた商会の商人でもないんだろう? どうして迎えが?」
「護衛を手配していたとか?」
「現状を知ったのは町に入ってからだ。護衛をどうやって昨日今日でここへ向かわせることが出来た? そもそも、この町にはどんな手段を使ってやって来た? 荷物が既にあるのならそれを誰が守っていたんだ? ここに来るまで護衛がついていたとして、どうして一緒に立ち去らなかった? 別行動を取ったのだとしても、出て行くまでの期限が決まっているならそれをする理由はなんだ」
若様の怪しさが倍増した。兄さんは首を傾げて尚も続ける。
商人であれば通信用の魔導具を持っていてもおかしくない。手配を昨日中に終わらせていたとして、魔獣が増加しているならより戦闘階級が高い者を選びたいだろう。Ⅲ|以上から護衛として雇う場合値段交渉と人脈がモノを言う。短時間で承諾する場合、高額の報酬を用意するか、もしくは。
「場合によってはその商人に付いてこの町から出るでも良かったんだろうが、その若様っていうのはやめた方がいいだろうな」
明日、どんな顔をして若様に会えばいいんだろう。「とにかく赤日まで何事もありませんように」、と神様にお願いすることにした。
「はい」
「計算機も渡しておくが不明な点があれば今の内に解決しておけ」
「この形状のものは初めてです。計算はどのように?」
「そうか、使用方法からだな。まずこのツマミを動かしてみろ」
計算機の使用方法を教わってから渡された書類を見た。品名の上に記号がついている。これは品を管理する各箱にも書いてあり、文字が読めない者たちにも商品ごとの判別が出来るようつけられたものだろう。
新興商会と聞いていたが、管理や配慮が行き届いていて不足がない。
そこが、恐ろしいところだ。
書類管理に関して手慣れている様子に、労働力となる階級の人間のことをよくわかっている点。
自身や周囲が文字を読めるとなればそれが当たり前にすり替わり大したことではなくなるのが常である。この町の役人のように。
しかし若様にはそれが見られない。自分とその下に就く者の能力が同一でないことを正しく理解し、認識のズレが互いに生じないよう調整している。「上へ立つことに慣れた人間だ」という印象を抱くには充分だ。
若様は淀みなく指示を出し自身も書類を捌いているが、こちらへ与えられる配分に無理がなく、手元に戸惑いや迷いを感じない。
ノーレさんという侍女もいることから裕福な家の出であることは間違いない。侍女が居るのであれば人を動かすことに慣れていてもおかしくは無いが、それならば今までは何をしていたのだろう。
ノーレさんは見習い期間もなく任されたと言っていた。では一体どこでこのような経験を学んだのか。
「確認しておきたいことがある」
「なんですか」
「その膝の上に乗っているのはなんだ。家畜か、非常食か」
〔はっは上等だ。顔に焼き目つけてやる〕
「えっと、あー、この子は僕の一部というか」
暴れ出したイヴァを抑え付け言葉を濁す。いくら若様が怪しいとはいえ丸焦げにされてはマズい。
「一部?」
「若様は愛玩動物を傍に置いたことはありませんか。愛着さえ湧けば家族のような近しい存在になります」
「……ないな。その毛玉が家族か」
〔決めたぜキサラ。こいつは炭にする〕
(ダメだってば)
「食用ではなく愛玩動物とは。どこにそんな余裕がある」
「侮ってはいけませんよ、こんなに小さい体ですが狩りも出来るんです」
〔そうだお前なんて一捻りだ〕
(ちょっと黙って)
「ほう?」
愛玩動物ではさすがに無理があったか。懐が寂しくて仕事を求めているような旅人が、おおよそ家畜には見えず食用でもない動物を飼い馴らしていたら確かに奇妙である。
しかし狩りの言葉に反応した若様はイヴァに興味を持ったようだ。
「狩りに向くのは猟犬、鷹や召喚獣辺りだと思っていたが。見た目から油断でも誘うのか」
「そんなところです」
「闘争心は確かに立派だろう、現に暴れている。今後その凶暴な生き物は連れて来るな」
「え」
「今こうして連れ歩いていること自体不思議だが? 愛玩目的の所有であれば尚更置いて来るべきだ」
至極マトモな言い分である。普通商品を扱う場に敢えて動物を連れ込むようなことはしない。例えこの場に食料品が並んでいなかったとしてもだ。
暴れていたイヴァもピタリと動きを止めて威嚇をするに留まる。
「仰られることは、ごもっともです。でも……」
頭の中が真っ白になってしまった。言い訳を考えようにも上手いものは見つからず口を開いたところで先を紡げない。
イヴァを抱えていた腕に力を込めて見下ろした。この体が離れてしまえば、僕は死ぬ。
そんなことを説明して理解は得られるだろうか? そもそもこれは誰かに打ち明けるべきことではない。
途方に暮れていると頭上から若様の溜息が聞こえて来た。
「……それ程離れがたい様子を見せられてはな。多少は目を瞑ってやる」
「本当ですか、若様」
「その代わり何か問題を起こせば真っ先にそれを摘まみ出すぞ」
「はい、勿論です」
「わかったら手を動かせ。次の赤日までに全てまとめておきたい」
「赤の日ですか」
今日は確か、空日・氷夜だ。明日が青日・水夜で明後日が紫日・重夜、明々後日が赤日・炎夜になる。ということは三日後だ。
ここに橙日・土夜、黄日・雷夜、緑日・風夜が加わり七日で一周、赤日・炎夜から始まり紫日・重夜までを一週間と数える。
時計は公共の場になら存在するのだが、各家庭で所有可能なのは貴族か名のある商人のみ。それ以下の階級にある人間には正確な時間が測れないのである。そこで一日を色と魔法属性に分け、例えば今日であれば朝から昼にかけてを空日、昼から夜にかけてを氷夜と呼んで予定を立てる。
領地の当主が鐘報師を勤めるため曇りであろうときっちり朝と夜が昼に区切られるのだ。
何故人間……人族と呼ばれる部類が魔法も使えないのに属性で時間を表したのか? それに関しては神話に始まりの物語が記載されている。
虹から色を賜った各初代国王たちはそれが属性色と一致していることに気が付いた。次第に自分たちの纏う色の属性魔法に興味を持ち、それを司る原初の柱たちを崇めるようになる。
やがて原初の七天使からは祝福を、原初の七精からは加護を受け取った。その日から色は属性と国の色を表すようになり、これを忘れず敬えば恩恵を受けられるという逸話がある。
この国を司る色は黄色のため、王族が得られる恩恵があるとすれば雷の力だ。
「炎夜まで伸びるとどうなりますか」
「その頃には荷を運び出す予定だ。迎えが外に到着する時間を見越し、限界まで期限を引き延ばしたのが赤日にあたる」
「そうですか。急ぎます」
確認作業が終わり次第ここを出るようだ。本来もう少し人手を加えて行う予定だったため、想定より随分遅れが出てしまっているのだという。
簡単な数え作業とは別にして、若様にはやらなければならないことがたくさんある。その証拠に机の上は書類が山積みだった。
あれを見てしまえば手伝ってくれないからと不満を抱くのも馬鹿らしい。ノーレさんも加わり数え作業は続いた。
「外がまた騒がしくなってきたな。そういえば昨夜町に魔獣が出たと言っていたか」
「でも暴れたり抗議しているような感じではないですね」
「何か動きがあったのでしょう。私が見て参ります」
「ああ」
ノーレさんが席を立ち外の様子を見に行く。若様は作業の手を止めペンを置くと帰り支度をするようにと促した。
「同じことの繰り返しだがやり方は覚えただろう」
「でも赤日までにと」
「初日であればこのようなものだ。力を入れるなら明日からにすればいい」
妙な騒ぎでも起きれば帰れなくなる。契約印を辿ってコルラスのところへ転移という手もあるが、その瞬間を見られては面倒だ。ここは若様の提案に乗った方がいいだろう。
急いで手元に広げてあった箱や書類を片付け屋敷を飛び出した。
「キサラお帰り」
「シーラ。色硬糸はどうなった?」
「それがね、すごいんだよ。こっち来て」
シーラに手を引かれ兄さんたちが使っている部屋へ入るとタスラの前にもう一人、例のコボルトの少年が居た。目が覚めたとは聞いていたがこうして顔を合わせるのは初めてだ。
「初めまして、ウィバロです」
「僕はキサラ。初めまして」
軽く挨拶を済ませて腰を下ろす。やはり狭いが仕方がない。皆小柄なのが幸いか。
タスラとシーラは楽し気にウィバロを褒め始めた。知り合いのドワーフの下で働いていたことがあり、知識が豊富なのだそうだ。
「加工方法が変わってるんだ」
「こっちがキサラが編み込んだ色硬糸で、こっちがウィバロの編み込んだ色硬糸」
「わ、全然違う。これはどうやって?」
「編み込みの過程で精霊魔法を使うんだ。ドワーフによって方法は違うけど、皆自分の力を用いて物を作る。魔導具も、こういった加工品も」
「それで人間が作るより質が高いんだ」
「簡単に言えばそう。人族の視認出来ない部分に不具合の原因があったりするから妖精の造る道具を修繕出来ないんだろうね」
なるほど、ウィバロの言葉で色々と納得がいった。
二つ並べられた色硬糸は一目で見てわかる程出来上がりが違う。ウィバロが手掛けた色硬糸は手触りも良く光沢すらある。文句なしの高品質だった。
同じ材料でここまでのものを作る技術力に胸が高鳴った。職人の技というのは惚れ惚れする程素晴らしく、その原料提供が自分だと思えばこれ程誇らしいことはない。
「原料になる品種は普通に咲かせるだけなら問題ないけど、加工用にするとなればどうしても手を加える必要があるし、こんなに多く素材があるとは思わなかった」
ウィバロの言う通りだ。フロムレアを加工しようと思ったら花が咲く前に色々と手を加えなくてはならない。不思議なことに花の茎が真っ直ぐにならないと採れない成分があるので棒を添え固定したり、を筆頭に幾つか注意点が存在する。どれか一つでも手順を損なうと「綺麗な花が咲いた」で終わってしまうのだ。
「これで硬度が格段に上がったはずだよ」
「元々切れ味はすごかったけどね」
「おう、これ防具代わりに出来るんじゃねぇか」
「出来なくはないと思うけど」
「イヴァ、ファリオンさんがそれをやろうとしてバラバラになった人の話してたでしょ」
「これが切れるときの条件がわかんねぇんだろ? それにな、思い出してみろよ。素手で色硬糸握ってたファリオンは無事だったろうが」
「「「あ」」」
わざわざ切れ味の話をした後で実演をしたくらいだ。危険性があるなら手も出さなかっただろう。ご満悦で購入していた姿を思い出せば条件を知っているのは確実である。
「切れる条件か切れない条件かは知らねぇがな、知ってるってんなら生かしてこその知識だろう。おいチビども、夕食の時間ファリオンをよく見張れよ。腹ごしらえ終わったら即捕獲、かつ尋問だ」
「おお!」
「頼めば教えてくれるんじゃないかな」
タスラ、シーラ、ウィバロはファリオンさんからどう話を聞き出すか作戦を立て始めた。満足気に頷いているイヴァの頬を抓りつつ部屋を出る。生かしてこその知識という点は共感したので会議を止めるようなことはしない。
〔何が問題なんだよ〕
(強いて言えばその好戦的過ぎるところかな。交渉さえすれば得られることもあるからね)
〔交渉ね、随分と商人の考えってやつが染み込んでやがるな。それよりもコルラスはどこ行ったんだ〕
(布の上に丸まって寝てたよ。前に結界を張るのは苦手って言ってたし疲れてるんじゃないかな。少しでも負担が軽くなればいいんだけど)
〔ま、タスラが居るんなら気を張ることもねぇか〕
下の階へ降りて水を汲み取る。外を見れば夕焼けで、そろそろ食事の支度を始めた方が良さそうだ。夜活発化する魔獣が出たことで皆無理矢理仕事を早く終わらせ帰路についている。子供などは遊びに行くのを禁止されて気の毒な程落ち込んでいるのも見かけた。
今日も何かで騒いでいたし、町の中だけで回せる物資も心許無い。毎日のように開かれていたほとんどの店が休みの日を増やしたり店じまいを早めたりしている。一体この状況はいつまで続くのだろう。
階段を登っている途中、兄さんが帰って来た。
僕が居るのに気が付いたようで、外套を脱ぎながら素早く寄って来る。早く部屋にと促され、今は編み込みをしているからと僕らの部屋へ通す。
「それで、何があったの?」
「騒ぎのことは知ってたか。やっと魔術師協会から派遣された魔術師が到着したんだ」
「ああ、だから皆見に行ったんだ。調査はもう始まってるって?」
「そこまでは聞き出せなかった。俺はあくまで手伝いだからな。……ただ、遠くから見た限りここへ来たのはたったの三人だ」
「三人!?」
そんな少人数で調査だなんて、一体何年かけるつもりなんだ。
兄さんは苦々し気な表情で「まるで事態を把握していない」と零した。誰が魔術師協会へ依頼を出したのかはわからないが、肝心なところは全く伝わっていないようだ。
例えば、原因となる要素が全くないにも関わらず魔獣が活発になったこと。滅多に現れない人の領域へ何度も侵入していることなど。
何より大事なことは、その数が尋常じゃないことだ。
「なんか思い出さねぇか、キサラ」
「何を?」
「御伽ノ隣人だよ。子爵自ら異常事態宣言、協力要請を求めたにも関わらず、やって来たのはなんだった」
「適さない人材?」
「そう、下っ端だ。三人しか来なかったってことは少数精鋭の形を取ってるか、もしくは驚くほどの軽視の現れだろうぜ」
誘拐の事件が起きたとき、パドギリア子爵が協力要請を出し、受け取ったのは「セルぺゴ」だった。彼が加担・実行の役割を果たしていたことで正確な情報は止められ、人数ばかりでその場にそぐわない人員が並んだのを思い出す。
「事態の深刻さが伝わっていない節があるのは同感だ。誰かが情報を止めていると言いたいのか?」
「仮の話だ。状況はよく似てる」
「……そうだとすれば魔術師協会が怪しいか。今回の異常は広範囲だと考えられる。ということは各地から報告が上がったはずだ。一つの町が情報を隠しても別の町から入る情報で把握出来るはずだろう」
「単純な不手際や不始末っていう可能性は?」
「まーそれも捨てきれねぇな。こういった事態が起きる度に町が大袈裟な報告上げてたとしたら、なんの不思議もねぇ」
「そうだな。だが、『協力者内部に妨害をしている奴が居る』ぐらいの警戒をしても損はないだろう。杞憂だったで終わる方が余程いい」
魔術師協会の人間に接触し直接探りを入れた方が簡単なのだろうが、パドギリア子爵邸に居たときと違って僕らに協力者は居ない。町に閉じ込められたことである種一体感や仲間意識のようなものは抱いているが、それもなんとなくそう感じる、という程度だ。
食糧が尽きるのではないか、魔獣が襲ってくるのではないかと過ごしているところへこんな話をしてしまえば間違いなく人々は魔術師協会を責め立てる。
もしも本当に杞憂で魔術師協会に何の落ち度もなかった場合、混乱は調査の妨げにしかならない。
協力者は欲しいが、状況を見れば僕らの内だけで留めておく方がいいだろう。
「あ、そうだ。今日役人に紹介を受けて雇ってもらえることになったよ」
「役所にか?」
「ううん、新興の商会らしいんだけど、昨日この町に来たって」
「へぇ、間の悪い。今入ったって簡単には出れないだろう」
「この町の状況を知ってたら来なかっただろうね」
「話が広まらなかったんだろう。何にせよしばらくは安心だな」
「いや、それが……」
若様に「迎え」が来るから次の炎夜にはここを出るのだと説明した。役人から説明は受けただろうし、護衛が居なければ出れると断言するはずもない。
一見横暴そうな口振りをしているが理不尽なことは一つも言わなかった。イヴァが仕事場に居ることすら最終的には許してくれたのだ、道理というものを知っていてわがままを押し通すような人ではないだろう。
「随分と手際が良いんだな」
「そうかな」
「新興ということは名の知れた商会の商人でもないんだろう? どうして迎えが?」
「護衛を手配していたとか?」
「現状を知ったのは町に入ってからだ。護衛をどうやって昨日今日でここへ向かわせることが出来た? そもそも、この町にはどんな手段を使ってやって来た? 荷物が既にあるのならそれを誰が守っていたんだ? ここに来るまで護衛がついていたとして、どうして一緒に立ち去らなかった? 別行動を取ったのだとしても、出て行くまでの期限が決まっているならそれをする理由はなんだ」
若様の怪しさが倍増した。兄さんは首を傾げて尚も続ける。
商人であれば通信用の魔導具を持っていてもおかしくない。手配を昨日中に終わらせていたとして、魔獣が増加しているならより戦闘階級が高い者を選びたいだろう。Ⅲ|以上から護衛として雇う場合値段交渉と人脈がモノを言う。短時間で承諾する場合、高額の報酬を用意するか、もしくは。
「場合によってはその商人に付いてこの町から出るでも良かったんだろうが、その若様っていうのはやめた方がいいだろうな」
明日、どんな顔をして若様に会えばいいんだろう。「とにかく赤日まで何事もありませんように」、と神様にお願いすることにした。
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