ロルスの鍵

ふゆのこみち

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盗賊の街編

Lv.123 儀式を待つ街

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「アタシはジェテレッサ。ジェティでいいよ」

 にこやかに自己紹介してくれたジェティさんだったが、すぐにその表情が険しくなる。
視線を追うと、先程僕から財布を奪った男が悪態をつきながらあちこちを睨んでいた。

「どうやらアタシたちを探してるようだね。少し走るよ」

 声を潜めてソッと動いたジェティさんに続きその場を離れた。
細い路地を右へ左へ走り、複雑な道順で抜けていく。イヴァを抱えての移動は流石に難しいので、走っている間は背負う形になった。

「こっちだ」

 開かれた扉の先に飛び込み、肩で息をしながらその場に膝をつく。
素早く施錠したジェティさんは、僕の頭を軽く撫でてから隣に立った。彼女は息も上がっていない。

「もう安全だ。楽にしていいよ」
「ありがとうございます」

 無我夢中で飛び込んだけど、ここは一体。
見れば樽や袋がたくさん置いてあり、奥には通路が見えた。倉庫のようだ。
 付いてくるようにと促され、後ろに続きながら巻き込んでしまったことを謝る。しかしジェティさんは快活に笑って「大したことじゃない」と言ってくれた。

「あの男、この街の人間じゃないからね。よそ者に好き勝手やらせんのも癪だしさ」
「わかるんですか?」
「そりゃあ、わかるさ。勘違いしないでおくれよ、普段往来じゃ盗みなんてほとんど起きないんだから」
「でも、泥棒がうじゃうじゃ紛れてるって」
「この時期だけさね。毎年祭りが近付くと馬鹿が増えるんだ。ここらは儀式の関係で祭りの規模がデカい。そのせいでこの街がどんな場所かわからない連中がたくさん寄って来てねぇ、迷惑してるんだよ。儀式場近くの街は今頃どこもそうだろう」

 冬を迎える儀式と祭りの時期が来ると、泥棒を筆頭に小悪党が寄ってるらしい。
通常であればあの通りで盗みが起きることはないのだとか。

「アタシも他にやることがあったんだけどねぇ、おかげで戻って来ちまった」
「もしかして、自警団の方なんですか?」
「そんなご立派な女に見えるかい? 縄張りを守りたいって、それだけさ。身ぐるみ剥いで兵士に押し付けるくらいはするよ、ここらの連中は皆ね」

 パチン、と片目が閉じられる。
自分達の領域は自分達で守る、ということだろう。
頼もしいような、怖いような。
 通路を抜けジェティさんが扉を開くと、そこには女の子が立っていた。

「プレニ、何か飲み物を持って来とくれ」

 プレニと呼ばれたその子は机を拭いているところだった。
頭には大きな帽子を被っていて、瞼まで埋まってしまっている。流石に前が見えづらいのか帽子を持ち上げてこちらを見た。
 ぱちりぱちりと大きな目を瞬いてから頷くと、とたとたと音を立てて階段を上がって行く。
部屋の中には複数の机や椅子、台に棚。酒場だ。

「あの子はウチの看板娘さ」

 ジェティさんが腰の辺りから布製の地図を取り出し、机の上へ大きく広げた。
トントン、と指で鳴らした場所が現在地。この街の地図だった。
 なるべく避けて通った方が良い場所、絶対に近寄るなという場所を教えてくれる。
どうやら先程の一件で、街の注意事項を教える必要があると判断されたようだ。

「大通りを含めて三本、主要な通りがあってね。中央の一番大きな通りは高級志向ってやつだ。貴族様の領域さ」

 中央、東、西に一本ずつ主要な通りがあり、それらは南北を縦にする形で道が敷かれている。
それぞれ通りに面して並ぶほとんどが店や工房であるのには変わりないのだが、品揃えや需要、客層などがガラリと変わるのだとか。
居住区はやはり貧民、庶民、貴族のもので分かれていた。

 パドギリア子爵の住む町に貴族の居住区がなかったのは、パドギリア子爵自身が領地を持つ貴族だったからだ。
領地を持つ貴族の邸宅を中心として町が作られる場合、その町に他の貴族が暮らすことはほとんどない。
 こうした街の中に存在する邸宅の多くは領地を持たない貴族のものであったり、領地持ちの貴族の別荘、別邸であったりする。

 主な買い出しを行うのは当然使用人で、宝石などは直接邸宅へ宝石商が訪れる。衣類や装飾、文具の多くも同様で、専門に取り扱う商人たちが商品を持って訪問するのが貴族たちの買い物だ。
 特別懇意にしている商会がない、もしくはその都度気分を変えたいという理由で店まで赴く層がいるため、それを狙って出店する商会が通りに軒を連ねる、という構図になっている。

「役所は二か所あるけどね、近い方へ行けばいいってことじゃない。中央にあるのは貴族様専用だ。といっても当人たちが手続きに現れることはほとんどないよ」

 魔獣事変が起きた町とは違い、役所は二か所に配置されている。
地図で示されたのは大通りにある貴族用の役所、庶民や貧民用の役所は南の門と統合されていた。
僕らがもし役所へ用があった場合は南の門まで行かなければならないということだ。少し気が滅入る。

「なるだけ中央と大通りには近付かない方が良いね。貴族様に関わるとロクなことにならないしさ」

 と締めくくられ、地図が丸められそうになった。
慌ててそれを制し、図書館の場所を聞く。

「聞いていなかったかい? 中央は危ないって言ったんだよ」

 眉を下げながら閉じかけていた地図を再び開き、ジェティさんは貴族用の役所、その真横に指を置いた。
まさかと思って顔を見ると、そうだと頷かれる。役所のすぐ隣が、図書館なんて。

「何を探していたにせよ、外を歩くときは視線を落ち着かせることだ。気が散ってると知れりゃそれだけ狙われやすい」
「そこまで見てたんですか」
「相当目立っていたからねぇ。歩く度にこの子の長い耳が揺れるだろう? それにね、建物見上げちゃ落ち込んで、迷子なのかと思ったら可哀想でさ」

 それであの抱擁に繋がったと。
これまでだって目立っていた気もするが、今回は特にイヴァが注目を浴びていることを理解した。
家畜を連れ歩くのはただでさえ稀だとジェティさんは言う。家畜ではないが、僕がなんと言おうが周りにはそう見えているのだ。

「なんだってこの子を抱えて歩くんだい? 置いてきた方が楽だろう」
「離れられなくて」
「貴族様が道楽で飼う動物なんかと同じってことか。よく理解出来なかったけど、こうしてみると案外癒されるもんだねぇ」
「癒されるのは見た目だけですけどね」
「何か食べさせて良いかい? アタシにも懐くかな」
「腐ってなければ何でも食べますよ」
「そうかい? 山菜持って来るよ」

 上機嫌で席を立ったジェティさんを見送り、地図を覗き込む。
魔獣事変の町では綺麗に貴族と庶民の暮らしが分かれていたが、ここはそうでないとわかる。
しっかり覚えて危険を回避しなければ、図書館への道は遠い。

〔神官見習いとして行けば良いんじゃねぇか? いくら貴族だっつったって、神官相手じゃなんも出来ねぇだろ〕
(でもイヴァ、貴族内では派閥が分かれてるんだよ? 相手が神官派の貴族なら大丈夫でも、他の派閥に居る貴族はどうかな)
〔思い出してもみろ、俺たちは儀式とやらのために駆り出されたんだろうが。なんだか知らねぇが大事なんだろ? 直前に絡むようなのが居るか?〕
(確かに、ファリオンさんに対してはそうだろうけど、例年は見習いが居ないから必要ないって考えそう。実際その通りだし。ファリオンさんに同行を頼んだ方がいいかな)
〔やめとけやめとけ、ねちっこく詮索されるのが目に見えてるぜ。アイツに呪いのこと話すってんなら別だけどな〕

 駄目だ。ファリオンさんに同行を頼んだら全て露見してしまう。
呪いのことについて知識は持っていそうだが、それが引き込んで良い理由にはならない。
僕という存在の根幹にまで関わってしまうのは危険だ。

 こうなってくると貴族に対して有効な盾が欲しい。重要性から考えて、図書館は諦めたくない。
 面識のある貴族に助力を頼もうにも、シュヒとパドギリア子爵では論外だ。しかし事情を話さないままでも協力してくれる人なんて、僕は知らない。

(そうだ。パドギリア子爵からの依頼があったよね、シュヒを探せってやつ。あの依頼書を盾に出来ないかな。貴族様の命令でここに居ますー、っていう形で)
〔何言ってんだ。頼まれたのは人探しだぞ〕
(ああ、呑気に本を読んでたら怪しいか……)

 せめて貴族の同行者が居れば安心して図書館まで向かえるのに。
そんなことを考えていると、階段下に居た女の子と目が合った。さっきジェティさんが飲み物を頼んだ子だ。
一体いつからあそこに。

「プレニちゃん? だったよね」

 声をかけると肩がビクリと上がった。
恐る恐る近寄って来て、震えながら飲み物を置く。

〔看板娘って言ってなかったか。使い物になんねぇだろこれじゃ〕
(人見知りが激しいのかもよ。常連になったら慣れて来るとか)

 小さく口を開け閉めして、顔を逸らした。「あ、あ」と声を出し、意を決したように深呼吸。
僕らに向き直ると目を瞑って「お飲み物です!」と口にした。

「ありがとう。僕はキサラで、こっちはイヴァ」
「こんにちは、キサラさん。あたし、じゃない、わたし、プレニでいいです」

 プレニはもじもじと下を向きながらも挨拶をしてくれた。
チラチラと視線を上げてはイヴァを見ている。見た目だけは無害な生き物だから興味があるのかもしれない。
 打ち解けるきっかけにでもなればと肩から膝へ下ろし、見やすいように正面を向かせる。

「うさぎさん?」
「似てるけど、ちょっと違うみたい。詳しくはわからないんだけどね。プレニはウサギ、好き?」
「うん……」

 段々距離が近くなって来た。
ほんのり頬を染め、「可愛い」と零す。浮かんだ笑顔に緊張が無いようでホッとした。
 イヴァの意見を支持するわけではないが、僕に対してもこうして怯えてしまうのならどうやってお店を手伝っているんだろう。
酒場なら飲みに来る大半が男のはずだし、僕みたいに小柄ということもない。

「イヴァちゃん、触っても良い?」
「体は小さいけど、大人しい子じゃないよ。出来るかな」
「凶暴なの?」
「とってもね。あ、ほら見て」

 上下に動き出した足と、ムッとしたように引き結ばれた口を見てプレニが微笑む。
ジェティさんに言われて気が付いたが、動く度に結構揺れるんだな、耳。
視界の端で揺れていたらどうしても目で追う。これでは注目を浴びるだろう。

「アタシはお邪魔かい? それにしてもプレニが初対面からそこまで話せるなんてね。食糧じゃない動物ってのも案外良いもんだ」
「イヴァちゃん、非常食なの?」
「さすがに食べたりしないよ。……そう見えます?」
「名前を付けてるって知りゃあまず考えないね。可愛がってるならそう示しておくべきだ。高価な物をつけちゃあそれ目当てに攫われかねないから、服を着せるとかどうだい」
「服ですか」

 一目で食用で無いとわかった方が良いんだそうだ。
けれどそれをすると逆に狙われる気がする。ジェティさんも同じ考えに至ったらしい。

「貴族様ってのは珍しいもんが好きだからね。普通のウサギと違うってんなら尚更さ」
「勝手に盗品が献上されるかも、ってことですよね」
「その通りだよ。急に呼び止められてそれを寄越せ、なんて命令されることだってあるからね」

 どうやらこの街では子悪党より貴族の方が余程性質が悪そうだ。
分別が無ければ神官服を着ていても要求を通そうとするだろう。対立している派閥の貴族であれば、尚更。
 神官見習いという肩書ではまだまだ弱いのだと思い知らされた。
この先王都へ近付くにつれ、もっと大きな街を通過する。そうなれば貴族と接触する機会も自然と多くなるだろう。ここで対処や回避について、よく考えを練らなければ。

「もう戻らないと。飲み物もありがとうございました」
「またおいで、いつでも歓迎するよ。だろう、プレニ」
「うん、また来てね。イヴァちゃん、キサラさん」
「じゃあお言葉に甘えて。今度はお食事をいただきに来ますね」
「待ってるよ」

 昼前に戻れば、なんて思ってフラフラ出てきたが、つい話し込んでしまって時間もギリギリだ。
図書館の場所や街の様子もわかったので収穫としてはとても良いのだが、抜け出したことがバレたらファリオンさんからお説教を食らう。
 慌てて立ち上がり示された出口へ向かう。後はさっきのような子悪党に出くわさないことを願うばかりだ。


 願いが届いたのか、帰り道では何の問題も起こらずすんなりと戻って来ることが出来た。
白い壁面が見えてきたのでホッとしていると、玄関口に人影を見て肩を揺らす。
 一瞬ファリオンさんが先に帰って来てしまったのかと思ったが、立っていたのは女の人だった。長い髪に、装いは貴族を思わせる華やかさ。
彼女は何度か手を上げ下げして、呼び鈴を鳴らすか鳴らすまいかで悩んでいるようだった。

〔関わり合いになりたくねぇってときにこれか。誰だありゃ〕
(何の用だろう)
〔裏の庭から入ろうぜ。ついでに見習い服回収しといた方がいいんじゃねぇか〕

 僕らが見ている間に女性は帰って行ってしまった。
中に入るところを見つかったらいけないので、イヴァの意見に倣って裏庭へ向かう。見習い服はすっかり乾いているようで安心した。
 中に入ってから匂いを嗅ぐが、やはり僕にはよくわからない。

「どう?」
「まだ臭う」

 また晴れの日にでも洗った方がいいか、と思ったところで足を止めた。
腰に片手を置いたファリオンさんと目が合ったせいだ。
 後ろにはまるで「あーあ」とでも言いたげな表情をしたタスラと、困った子を見るような目でこちらを覗くシーラが居た。コルラスはフスン、と鼻を鳴らして居なくなった僕のことを怒っている。

「私の記憶が正しければ、外出を控えるようにとそれとなく促したはずなんですがね。察しの良いキサラくんなら理解するだろうと思っていましたが、もしやその悪魔に誑かされましたか?」
「見習い服が乾いているか様子を見に出ただけですよ、ははは」
「おや、そうですか。随分長い間出ていたんですね? まずは君の中で、庭の範囲がどれほどのものかお聞かせ願います」
「ご、ごめんなさい」

 誤魔化しきれるわけがなかった。別室に誘導され尋問が始まる。
タスラとシーラはコルラスを連れ食材の買い出しに出てしまったので、最早この場に助けは居ない。
覚悟を決めている僕の横でイヴァがフン、と鼻を鳴らした。

「玄関口に女が立ってたぜ。もう引っかけたのか色男」
「そんなわけないでしょう。接触したのはせいぜい役人、それも担当者は男ばかりです。一応お聞きしておきますが、女性はどのような方でしたか」
「装いからして貴族の方ではないかと。迷ってるようでした」
「そうですか。街に住んでいれば、この時期は毎年神官が滞在するとわかっているはずです。何か相談を持ち掛けようとしていたのかもしれません」

 考えるように顎へ手を置く。
例年通りならここに居るのは僕たちではなく、本物の神官やその一行だ。相談があって足を運んでもおかしくはない。

「川の様子を見て不安に駆られた、とか」
「それならばまず役人に問い合わせるはずです。何より、貴族の女性が直接訪れる理由にはなりません。使いの者をこちらへ遣わすのが常識でしょう」
「確かにそうですね」
「直接話したかったんじゃねぇか」
「であれば、使者に案内させるはずです。私たちを招待するといった形で。やはりここへ来る理由にはなりません」

 思い返してみれば、護衛も付いていないようだった。もしも護衛が居たのなら、扉の前に彼女が来ることもなかったはず。貴族という読みは外れかもしれない。

「髪が長い貴族の女性。これだけの特徴では誰に尋ねても無駄でしょうね」
「顔が見えればまだ良かったんですけど」
「残念ですね。……さて、その女性が再び現れない以上は正体も目的もわかりませんので、この話はここで終わりです。キサラくんは反省しているようですし、時間もないので別の話をしましょう」

 今回役人との話し合いで僕らの、つまりは神官の立ち位置が決まった。
異変の調査は学者と魔術師協会が主導、神官はあくまで助言を与えるだけという位置に収まる。
 儀式の準備に専念出来るよう配慮された、妥当な決断だった。儀式関連の祭りも控えており、どちらかといえばそちらに携わってほしいという意見もあったらしい。

「なので、水難に関する情報・記録は閲覧不可です。負担をかけるわけにはいかないということでしたから、恐らく覆りませんね」
「収穫無しか」
「元々シュヒアルとの合流が目的で来たわけですから、問題ないでしょう。求められていた条件の中にも、川が干上がったときの対応なんてありませんでしたし」

 それよりも気がかりなのは僕らの行動だと目を細められる。
そこからは延々とファリオンさんからの説教で、僕とイヴァは頭を抱えた。


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