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9 日常

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 朝、目覚まし時計よりも早く目を覚ます。
 昨夜は義父の部屋に遅くまで居たのだが、不思議と目覚めはスッキリとしている。妹の亜紀が寝入ってから那津男の寝室を訪れる生活にも大分慣れた。
 小学生らしく、亜紀の睡眠は深くて長い。夜遊びの過ぎた母親のせいで、遥奈の身体は短い睡眠でも体調を整えるのに慣れてしまったが、ゆっくりと寝ている妹を羨ましく思う事もある。
 亜紀が起きるにはまだ早いので、遥奈は静かに身支度を整えて寝室を後にした。足音を立てないように階段を降りつつ、朝食のメニューを頭の中で組み立てる。

「昨日は和食だったから、今日はトーストにベーコンエッグ、昨日の残りのサラダにヨーグルトを合わせて……」

 リビングに入ったところで、義父の寝室に目を向ける。昨日は随分と激しかったので、今日はもしかしたら起きるのがゆっくりかもしれない。那津男が起きてきたらすぐ食べられるように、トーストはオープンサンドにすることを決める。
 鼻歌交じりに台所で朝食を用意していると、亜紀がランドセルを持って階段を下りてきた。

「おはよう、亜紀」
「おはよう、お姉ちゃん。ふわあ……眠い……」
「昨夜は遅くまでテレビを観てたからでしょ?」
「だって……あの映画は絶対に観たかったんだもん」

 母親のいた頃は映画になど行った事は無いし、レンタルを利用する事も出来なかったから、大抵はテレビ放送を待つしかなかった。学校で話題の映画だったようだが、亜紀はようやく、昨日観る事が出来たのだ。
 ほんの一月ほど前、母親の芙由美が失踪した直後であったなら、それも叶わなかったかもしれない。
 と、リビングを挟んで台所と反対側にある扉が開いた。この家の主である義父の那津男が現れる。

「おはよう、おじさん」
「おはよう! ナツおじさん!」
「ああ、おはよう」
「コーヒーでいい?」
「ああ。濃い目にしてくれ」
「うん、分かった。おじさんが顔を洗ってる間に用意するね。亜紀も、一緒に顔を洗ってらっしゃい」
「ああ」
「はーい!」

 寝起きのまったりした返事と、子供らしい元気な返事を聞きながら、遥奈はコーヒーメーカーのスイッチを入れた。
 二人が洗面所から戻ってくる前に、遥奈は用意した朝食をテーブルに並べていく。

「いただきまーす!」
「いただきます」
「はい」

 台所のテーブルに三人が座り、一緒に朝食を摂り始める。
 交わす言葉は少ないが、これがここしばらくの、遥奈の朝の風景であった。

   ***

 那津男は、二人の『父親』ではない。
 実母である芙由美と再婚したのだから、戸籍上は確かに父親だ。だが、再婚してこの家で同居するようになってから、芙由美は那津男を、夫というよりは恋人のままのように扱っていた。夜毎、那津男と飲み歩き、寝室では欲望のまま男女の営みに励み、時には娘たちが寝静まった深夜、リビングであられもなく絡み合うこともあった。
 芙由美は母親らしい事をほとんどしてこなかったが、那津男の行動も父親というには若すぎた。二十代後半という那津男の年齢を考えれば、遥奈や亜紀のような歳の娘がいることなど普通はないのであるから、無理からぬことと言えるかもしれない。

『家族ごっこも終わりだ!』

 いみじくも、芙由美が失踪した直後に那津男が吐き捨てた言葉が、二人の姉妹と那津男の関係を現していた。
 那津男の方もその自覚はあったのか、二人からの呼び方が『おじさん』のままである事には、これまで特に何も言ってきていない。
 だが、遥奈が那津男を受け入れてから、ほんの少し、この家の雰囲気が変わった。
 それも、遥奈と亜紀にとって、好ましい方へであった。

   ***

「ほら」
「……これは?」

 綺麗な装飾と甘い匂いのする白い箱。それはどう見てもケーキの箱であった。箱には駅前のケーキショップのロゴが入っているのだから、見間違えようがない。
 最近の那津男は仕事が終わった後、どこへも寄らず、夕食の時間には帰ってくる。

「見たまんまだ。ケーキだよ」
「えーと……」
「俺が食いたいと思ったらから買ってきたんだ。メシの後にでも出してくれ」
「あ、うん……」
「あー、それと、美味そうなケーキだったから、ついつい多めに買っちまった。別に一人で全部食っても良いんだが、痛むのももったいないから、お前らも食っていいぞ。……メシの後にな」
「うん。いただきます……」

 ――なんだろう、このやり取りは。

 最近、那津男のこういう不器用なところが愛おしくなってきてしまっている。これは多分、普通の家の父親が、たまに見せて鬱陶しがられるという、家族サービスというものだろう。子供はそういう父親を見て、生暖かい気分になるに違いない。
 別に、恋とか愛とかなどではないはずだ。

 ――だって、そうでもなければ、私の顔がこんなにニヤけるはずがない……。

 引きつりそうになる顔を那津男に見られないようにしながら、遥奈はキッチンへと姿を消した。



「ケーキ? ナツおじさん、ありがとう!」

 子供は素直でいいな、などと自分の年齢も顧みないで遥奈は考えた。ケーキを前にしてストレートな感謝を義父に向ける亜紀を、遥奈は少しうらやましいとも思う。
 自分で食べると言って買ってきたのだが、夕食後に用意されたケーキを見て、那津男は亜紀と遥奈に先に選ばせてくれた。
 と、その時、遥奈は初めて気付いた。いつの間にか妹の亜紀が、那津男の事を『ナツおじさん』と呼んでいる事に。
 すぐに減ってしまうのが惜しいのか、フォークで切り分けながら、亜紀はじっくりと味わっている。
 母親の芙由美がいた頃には考えられなかった光景に、遥奈は微笑ましい気持ちになった。

 ──これは、良い事なのよね?

 愛らしい妹を見ながら、考えたくもないという矛盾を抱えつつ、遥奈は母親の事を思い返していた。



 芙由美は、嫉妬深い女だった。自分が何人もの男と浮名を流しているのに、付き合っている男が他の女に目を向けるのを許さない気質であった。そしてタチの悪い事に、それは自分の娘に対しても同じであったのだ。
 遥奈が幼い頃はそうでも無かったのだが、娘が母親に似て美少女に成長してくるにつれ、芙由美と付き合っている男たちも遥奈を目に止めるようになった。
 あるいはそれは、男たちが付き合っている女に良いところを見せようとしただけなのかもしれない。だが、男が遥奈の容姿を褒めるたびに、男の見ていないところで遥奈は殴られた。服で見えない部分を、青あざが出来るくらいにつねられた。男が遥奈たちの住むアパートから帰る時、遥奈に声をかけたというだけで、何度もお腹を蹴られた。

『アタシの男に色目を使って!』
『ガキのくせに盛って!』

 さらに最悪だったのが、娘を折檻してからしばらくすると、泣きながら遥奈に謝ってくるところだった。

『ごめんね』
『痛かったでしょ』
『不安だったのよ』
『あなたはアタシを捨てないわよね』

 遥奈にとって、『母親に似ている』という言葉が呪いである一番の理由は、芙由美という母親の存在そのものであったのだ。
 だが、その母親は、もういない。
 那津男と仲良くしていても、それを咎める者はいないのである。

『母親に似ている』

 ほんの一瞬、遥奈は寒気を感じた。
 もしも自分が、那津男と仲良くしている亜紀に嫉妬してしまったら? 那津男の買ってきたケーキを美味しそうに頬張る妹を、憎々しげに思ってしまったら?

 ──無いわね、それは。そうなるには、私がおじさんと恋仲にならないといけないもの。私が毎晩、おじさんの部屋に行くのは、私たちがこの家に住まわせてもらうため。そう……お仕事みたいなものなんだから。……でも、この胸の痛みは何?

 自分たちを守るための思考に、ほんの少しだけ遥奈は胸の痛みを覚えた。だが、その正体がなんなのか分からないまま、遥奈は義父の買ってきたケーキを食べるのであった。

   ***

「ハルハルってさ、最近、調子いいみたいね」
「はい? 私?」

 ショートホームルーム前の賑やかな教室で、クラスメイトが声をかけてきた。以前、遥奈の顔色が悪いと、心配して声をかけてきてくれた面倒見の良い女生徒だ。

「うん。なんか良い事があったみたい」
「そうかな? そうかも?」
「お母さんの具合が良くなってきたとか?」

 一瞬、クラスメイトが何を言っているのか、遥奈は分からなかった。遥奈の母親は姿を消しており、生きているのかどうかも定かではない。今の遥奈の生活に、母親などいないのである。

「……ああ、えと……うん、お医者さんの話だとね、良い方に向かってきてるみたいなの」

 私たちの生活が、という言葉を飲み込んで、遥奈はなんとかクラスメイトを誤魔化した。ギリギリで、母親が入院している事にしているのを思い出したのである。嫌な汗をかきながら、遥奈は引きつり気味の笑顔をクラスメイトに向ける。

「そっかー、良かったじゃん。ハルハルの顔色も良いし、肌もなんだかツヤツヤ。やっぱり悩みが無いのが一番だよね!」

 能天気ともいえる言葉を返しながら、面倒見の良いクラスメイトは他の友達の方へと軽やかに消えた。
 遥奈は、自分の頬に両手を当てた。
 顔色が良いのは、確かに悩みが無いからだろう。母親が失踪した直後は生きるか死ぬかという心境だったのだから、不安の無い今の生活では顔色が悪くなりようもない。
 そして、肌ツヤが良いのは……単純に認める気にはならないのだが、夜の生活の為であるかもしれない
 遥奈が那津男とのセックスを愉しむようになったのは事実である。そして、それが相手にも伝わっているのか、那津男の求め方が最初の頃よりも情熱的になっている気がする。
 初めは母親に捨てられた少女を人形のように犯すだけであったし、遥奈自身も淫らな肉人形でいようとした。それが、今では互いの身体を求め合うようになっている。それに、随分と唇を重ねるようになった。
 遥奈は思わず、自分の唇に手を当てた。
 艶っぽい桜色の唇は、口紅を引いたように濡れ光っている。今の仕草をクラスメイトの男子が目にすれば、幼い心をトキめかせてしまうかもしれない。
 だが、担任の教師が教室に入ってきた為、その可能性は儚く霧散してしまった。

   ***

「ほら」
「……これは?」

 何だか少し前にも同じような事があったな、と思いながら、遥奈は那津男から一抱えもあるような大きな包みを受け取った。それは本当に大きくて、普通に抱えれば遥奈の視界はその荷物で埋まってしまう。
 それを片手で抱えていた那津男は、遥奈に向って無造作に手渡した。

「わ、わ……。ぬいぐるみ? こんな大きな?」

 おもちゃ屋の紙で包まれたそれは、手触りでぬいぐるみだと分かった。

「ああ」
「なんで、いきなり」
「いや、いきなりじゃねーだろ。今日は亜紀の誕生日だろう?」
「ふえ? あ、いや……確かにそうだけど……」
「ケーキも買ってきてあるぞ。……いや待て、もしかしてもうケーキも買ってたか? まじいな、一応聞いとけば良かったか」
「ちち違うの! 別に今日は、特に何も用意してないの。そりゃ、ちょっとはお食事をゴーカにしたけど……」
「は? いや、待て待て待て。普通、子供の誕生日ってお祝いするもんだろ?」
「…………」
「まさか、お祝いしたことが、無い?」
「……うん。おか……あの人、なんでか知らないけど、そう言う事は全然してくれなかったの」
「ふ……っざけんな! あのアマ!」
「ヒッ!」
「ああ、すまん、お前に怒鳴ったんじゃない。いやだけど、そんなん有り得ねーだろ! 誕生日だぞ! 子供の誕生日だぞ! 親が祝わねーとか、有り得ねーだろ!」

 那津男の突然の怒りが理解できなくて、遥奈は鳩が豆鉄砲を食ったような顔になってしまった。
 最近の那津男は随分と雰囲気が穏やかになり、芙由美が失踪した直後のようなギスギスした空気になることはない。夜の寝室では積極的に話す事にしているし、亜紀のいる場でも和やかな様子だ。『家族』とは言えないまでも、仲の良い同居人くらいの関係にはなっていた。
 それが、久しぶりにこのような怒りの感情を露わにしている。

 ──もしかして、私たちが父親を求めたように、この人も家族を求めたのかしら。あの人と結婚したのも、家族が欲しかったから……?

 そう考えたら、那津男の芙由美に対する怒りも、ここしばらくのぎこちない家族サービスも理解できる。

「そんな顔してたら、亜紀が怖がるわ。普通に渡してあげてね」
「あ? ああ、そうする。悪いな、変な事を言った」

 自分で亜紀に渡すよう、大きな包みを那津男に返した遥奈は、口の中だけで呟いた。

 ──変じゃないわ。普通の事よ。私たちが、ずっと欲しかったものよ……。



 いつもより豪華な夕食と、そして那津男が買ってきたホールの誕生日ケーキを見た亜紀は、文字通り飛び上がって喜んだ。生まれて初めてという誕生日のお祝いに妹がはしゃぐ姿は、遥奈の心も微笑ましい気持ちで満たしていた。
 ふと見れば、那津男も、誕生日ケーキを喜ぶ義理の娘を見て満足そうである。
 そして、食事とケーキを楽しんだ亜紀へ、遥奈に促された那津男が大きな包みを寝室から持ってきた。

「おっきいー。これ何? これ何?」
「おじさんが買ってきてくれた、亜紀の誕生日プレゼントだって」
「ほ……、ホントに? ホントにもらっても良いの?」
「ああ。でもスマン、亜紀が好きなモノが分からなかったから、とにかく一番大きなモノを買ってきた」
「ぷっ」

 遥奈は思わず噴き出してしまった。女の子へのプレゼントだからぬいぐるみを選んだのだと思っていたが、まさか一番大きいからという理由だとは。

「わあぁ、すごいおっきなクマさん……」

 自分の背の丈もありそうな大きな包みを剥がし、姿を現した超級サイズのクマに抱き着く。

「ありがとう、ナツおじさん! ありがとう! あたし……、あたし……」

 生まれて初めて『親』からもらった誕生日プレゼントに感極まってしまったのか、泣く一歩手前の表情で亜紀はクマを抱きしめた。

「嬉しい、亜紀?」
「うん!」
「じゃ、ちゃんとおじさんにお返ししないとね」
「お返し?」
「そう。嬉しいモノをもらったら、嬉しいモノを返してあげるの。そうすれば、みんなが幸せになれるわ」
「でもあたし……、ナツおじさんに返せるものなんて無いよ……。あたし、何を返したらいいの?」
「大丈夫よ。亜紀だけが持っているものがあるの。大事なモノよ」
「そんなの……あるの?」
「ええ。耳を貸して」
「うん」

 二人の微笑ましい様子を、目を細めて眺めている那津男の前で、遥奈は亜紀に耳打ちした。その内容は那津男の耳には届かなかったであろうが、すぐに知れるはずだ。

「……いいの?」
「いいのよ。あの人の事なんて考えなくてもいいわ」

 あの人と耳にした那津男の顔が、一瞬歪んだ。それはどう考えても、この場にいなければならないはずの、姿を消した女の事だ。だが、亜紀の嬉しそうな顔を見て、そんな負の感情も那津男の中からすぐに消え失せたのか、暖かい微笑みに戻る。
 大きなクマのぬいぐるみを抱えながら、亜紀はよたよたと那津男の横に回った。そしてぬいぐるみをおいて顔を近付ける。そのまま躊躇うことなく、嬉しそうな義理の父親の頬に、キスをした。
 頬にキス。ごく普通の感謝と、そして親愛のしるし。
 だが、亜紀の感謝はそれだけではなかった。

「えへへ。素敵なプレゼント、ありがと……パパ」
「……!」

 最後の一言に、どれだけの感情がこもっていたのだろう。那津男の頬にもう一度キスをすると、亜紀はぬいぐるみを抱えて二階へと駆け上がっていった。
「ありがと、パパ! あたし、今日はこの子と寝るね! おやすみなさーい!」
 後に残された那津男が、キスをされた頬を抑えて呆然としている。
 自分たちの部屋の扉が勢いよく閉じられた音を見送った遥奈は、那津男に目を向けてギョッとした。

「ちょ、な、なんで泣いてるの?」
「ふ……ぐ……」

 頬に手を当てたまま、那津男は大粒の涙をボロボロと流しながら嗚咽を漏らしていた。

「俺が……俺が……、パパだって? 父親だって……? お前らとは……血も繋がってないのに……ただ、この家に住んでるってだけなのに……」
「おじさん……」
「いや、おかしいだろ! 俺に父親なんて呼ばれる資格なんてねーだろ! お前を! 俺は、お前を……っ!」
「おじさんが何でそんなに泣いてるのか分からないけど、亜紀には父親が必要なのよ。今まで私たちには親がいなかった。親がいなくても子は育つって言うけど、やっぱりいた方が良いと思う。母親はあんなのだから、私たちの父親なんて顔も知らない。どこの誰かも分からない。でも、一緒の家に住んで、安心させてくれる人って、やっぱり必要なんじゃないかな……」
「……ガキのくせに……分かったような事を……」

 手を頬に当てたまま、流れる涙をそのままに、嗚咽交じりの声で那津男は言った。

「分かるわよ。だって私も、お父さんが欲しいんだもの。お父さんが、本当はどういうものかは分からない。でも、友達のお父さんや、マンガやドラマのお父さんって、家の中にいて頼りになる人なの。それで、今の私たちが頼りにしてるのが、おじさんなの。おじさんが何で、私たちに優しくしてくれるようになったのかは知らない。……きっかけはもしかしたら、私なのかもしれないけど、おじさんの本当の心は分からない。でも、今のおじさんなら、私たちは身も心も頼りに出来る。おじさんの事を、家族と思える」

 遥奈は、椅子に力なく座る那津男の頭を抱き締めた。こんな時、あの女のように大きな胸があればと思ったのだが、それは無い物ねだりというものだ。それに、ささやかとは言え、遥奈にも胸が無いわけではない。

「私はもう、おじさんを父親だなんて思えない。でも、一緒に住む家族として、私も言う。亜紀の誕生日を祝ってくれて、ありがとう。それから、亜紀の父親になってくれて、ありがとう。……お義父さん」
「ふぐ……お……おおおおおおーー……っ!」

 遥奈の身体に手を回し、那津男は義理の娘の胸に顔を埋めた。そして歳に見合わぬ激しさで泣き続けた。喜んで二階に上がっていった亜紀に、みっともない声を聞かせないようにするためであったのだろうか、遥奈の腰を抱き締める腕に力がこもり、少女の膨らみかけた乳房に顔を押し付けている。
 嗚咽の響くくすぐったさと、大の大人が自分に泣きついているという愛しさを感じて、遥奈も那津男を抱き締める腕に力をこめた。
 自分と妹と、そして遥奈の腕の中で泣く男。
 この日、この時、三人は家族となった。
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