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8 初めての……
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「そう、先っぽの裏、筋のあたりから亀頭の裏側を……、そう、上手いぞ」
「んん……、んふ……」
台所で立ったまま那津男に背後から抱かれた遥奈は、洗い物を放り出して義父の寝室にいた。そして、那津男の手解きを受けながら、那津男のベッドの上でフェラチオに励んでいる。
二人とも、すでに着ているものを脱ぎ捨てて全裸だ。
「そうそう、自分が気持ち良くなりたかったら、まず相手を愉しませなくっちゃな」
さっきの自分のセリフを思い返して、遥奈は頭に血が昇る思いがした。実際に、耳までがとても熱く感じられる。
亜紀にバレるかもしれないという状況で、それでも那津男を受け入れて愉しもうとした遥奈の身体は、昨夜ともまた違った快感を覚えたのである。
お尻を突き出し、背後から突き入れられ、自分も那津男とのセックスを愉しんだ。
だが、足りなかった。
自分の身体を愉しんだ義父だけが絶頂を迎え、那津男は男の精を義理の娘の中に吐き出して満足してしまったようである。
一方、遥奈の方は、昨夜のような目の前が真っ白になる感覚には至れなかった。
昨夜の愉悦は、遥奈が初めて体験するものだった。快感を伴った波のようなものが下腹部から全身に広がり、臓腑から末端の指先に至るまでを刺し貫くような快感は、遥奈の身体には訪れなかったのである。
那津男を受け入れる。セックスの時は自分も愉しむ。
そう思って身体と共に心も開いた遥奈は、その思いが素直に口に出てしまった。
『まだ、イってない』
さっきの自分のセリフを思い返しながら、遥奈は口と舌で男のモノを舐め回した。
フェラチオの経験は、昨夜が初めてである。知識として知ってはいても、他人の股間にあるモノを口に含むのには抵抗があるのかと思っていた。だが、いざ義父のものを目の前にした遥奈は、自分でも意外なほどスルリと飲み込む事が出来た。那津男を受け入れると決めたからなのかと、遥奈自身は思う。前日までは、ただ自分の身体を苛む棒でしかなかったのだが、自分から積極的に相手を愉しませようと考えた時、義父の肉棒が那津男自身のように思えたのだ。
昨夜も、そして今も、遥奈の頭の中には那津男の事しかなかった。
だが……。
「やっぱり、あの女に似てるな。一生懸命にしゃぶるとこなんか、そっくりだ」
その瞬間、遥奈の頭に血が昇った。さっきのような、羞恥心からくる血の昂ぶりは全身が熱く感じられたのだが、今は違う。顔から火を噴きそうなほど感情は煮えたぎっているのに、心と身体は氷のように冷え冷えと感じられた。
遥奈は我知らず、咥えていた肉棒を添えた手で握りしめる。
「あだだだだだっ! な、なんだ!?」
「あの人の事は言わないで!」
頭の中がぐるぐるとする。目の前が赤く感じられて、血のような何かを吐き出さなくてはいられない。
「あんな……、私と亜紀を捨てた、あんな女なんかと似ているなんて……、いや! いやいや! 私は自分の意思で! 自分の為に……自分たちの為に! おじさんといるの! あんな女なんて関係無い!」
「おい……」
「だから! あの人と比べないで! 私は! あの人の身代わりじゃ無い!」
「おい……、は、遥奈……」
「あんな女なんかと……。違うのよ……」
それは、遥奈がずっと抑えていたものだった。ずっと隠していくつもりの心であった。
だが、義理の父親を愉しませようとしていた遥奈に対して、那津男の一言は少女の心に突き刺さった。遥奈の心の繊細な部分に、少女自身も思いもしなかった一撃を与えてしまったのだ。
『母親に似ている』
『芙由美にそっくりだ』
『美人になるだろう』
それは遥奈が幼い頃から、母親の男にずっと言われていた言葉である。
普通、容姿を褒められて嬉しくない子供はいない。遥奈もそれは例外ではなく、芙由美の乱行を知らない頃は、無邪気にその言葉を喜んでいた。
だが、母親の破天荒な性欲を知ってからは、素直に喜ぶ事は出来なくなっていた。それはそうだろう。母親に似ているという事は、いずれ遥奈も無軌道なセックスを繰り返すような、性に奔放な女に成り下がるという事なのだから。
もちろん、小学校を卒業する頃には普通の性的知識も得ていたから、自分にそういう気がなければ大丈夫だという淡い期待もあった。
しかし、母親の隣にいる男たちは違った。
遥奈を見る度に少女の未来像を勝手に想像し、淫らに濡れた視線を突き刺してきたのだ。その視線の、なんと気持ち悪い事だったか。小さな娘を可愛がるような言葉をかけながら、その視線の奥では、脳裏に映る成長した遥奈を犯していたのだ。いや、ともすれば、初潮も来ていない少女を。
だから、遥奈にとって「母親に似ている」という言葉は、呪い以外の何物でもなかったのである。
なのに、今は母親と同じ事をしている。
それが嫌で、苦しくて、辛くて……。遥奈は人形でいようとした。男の欲望を満たすためだけの、淫らな肉人形。妹の亜紀の為に、それをずっと続けてもいいと思っていた。
遥奈は、驚いた顔で自分を見つめる男と視線を合わせた。
母親の男。
義理の父親。
そして、遥奈の保護者。
自分を見下ろすこの男に保護を求める為、遥奈は身体を差し出した。そして、その関係からもう一歩進める為に、遥奈は那津男を受け入れたのだ。
それが、なんと気持ちの良いものであったか。
セックスの快感だけではない。
心の、魂の悦楽。
身も心もとはよく言うが、それが遥奈の中で実感を伴って理解できた。
――ああ、そうか。もう、お母さんなんて、要らなくなってたんだ……
遥奈の中で、ここ数日の事が腑に落ちた。
人形である事を辞めた。
那津男を受け入れた。
そして、母親を切り捨てた。
なのに、自分を守る立ち位置にいる目の前の男は、遥奈の心境の変化などまるで気付いていない風でいる。遥奈の心からの奉仕を受けながら、自分を捨てた女と目の前の少女とを比べている。
それが、堪らなく嫌だった。
他の男に言われても構わない。でも、同じ捨てられたという立場の那津男にだけは言われたくなかった。
那津男だけには、自分の心情を理解して欲しかった。
だから、遥奈は叫んだ。妹が起きてくるかもしれない事など構わなかった。
「なのに! なんで、おじさんがそんな事言うの?! いつまでも、あんな女の事ばっかり!」
「遥奈……」
「私は……、私たちは、もう! あんな女と何の関係も無いのよ! 私たちだけで、生きていくのよ……。だから……、あの人の事なんて知らない。知りたくもないし、聞きたくもないのよ!」
「遥奈!」
「何よ!」
いきなり、遥奈の視界が闇に染まった。
那津男の胸に抱きしめられていると分かったのは、一呼吸おいてからだ。
「わりぃ……」
「……。きらいキライ嫌い! あの女なんて、大っ嫌い……」
「すまん……」
「あの女と結婚なんかした、おじさんも嫌い……」
「ごめん……」
「私を犯して、オモチャにしたおじさんも嫌い……」
「許せ……」
溢れる感情を男の胸に叩きつけながら、それでも遥奈は未来を見ていた。これからの、自分と妹と、そして血の繋がらない父親の事を考えていた。
昨日の夜に生まれた、自分の中の新しい感情を好ましいものとして育てようとしていた。
「……でも、父親っぽい事をしようとしてた、おじさんは……許してあげる……」
「ああ……」
「今日の朝、おはように答えてくれたおじさんが嬉しかった……」
「あんなの、ただの挨拶だろ……」
「亜紀の行ってらっしゃいに応えてくれて、ありがとう」
「だから……普通だって……」
「……普通にしてくれて、ありがとう、おじさん」
「……」
那津男の逞しい胸から離れて、遥奈は義理の父親を見上げた。まだ少しだけ、要領を得ないような視線を義理の娘に向けている。
目を瞑った遥奈は、唇を薄く開けて那津男に顔を近付けた。男の太い首回りに両腕を回し、優しく力を込めていく。
那津男はもう、何も答えなかった。
遥奈ももう、何も言わなかった。
義理の父親の吐息が、少女の桜貝のような唇に感じられる。その唇から、甘い吐息が漏れる。
唇が、重なる。
倍も歳の違う男と少女の、血の繋がらない親子の、そして同じ感情をまとう男女が口付けを交わす。
キスをする。
「「ん……」」
――あ、これファーストキスだ……。
那津男と唇を重ねながら、遥奈はそんな事を考えていた。
「んん……」
男の舌が自分の中に入ってきた。艶めかしい動きで、少女の口の中を探ってくる。
口を少し大きく開けて、遥奈は那津男の舌を受け入れた。自分の中に入ってくるモノに、自分の舌を絡める。
「んん……んふ……」
喉奥から、何か気持ちの良い感覚がせりあがってきた。肉体的な快感とは異なる、身体自体が浮き上がるような不思議な感覚だ。
「んあっ!」
と、それとは別に、遥奈の下半身に直接的な快感が走った。
那津男の手が、遥奈の秘所に触れたのだ。その触れ方は淡く、少女の媚肉の形を確かめるような繊細さだ。
「ああっ! あふ……」
「さっきも思ったけど、お前、本当はかなり濡れやすいんだな」
「わ、分からない。そんなの……」
「嬉しいって言ってんだよ。俺を受け入れようとしてくれてるのが分かるからな」
「……!」
今夜、何度目の事だろうか。遥奈の顔に朱が差した。
「腰を上げろ。俺に抱き着いてていいから」
「う、うん……」
言われるまま、遥奈は膝立ちになり、那津男の首にかじりついた。そして、心持ち脚を開く。その仕草がなんとなくイヤらしいものに感じられて、遥奈の身体がフルリと震えた。この感覚は好ましい。男に身を委ねる感覚。
「ああんっ!」
那津男の指が、再び遥奈の媚肉に触れた。割れ目に合わせて指を前後に動かし、少女の敏感な部分の入り口を丁寧に愛撫してくる。
「ん! んふ! んんん……っ!」
「遥奈。声を出したきゃ我慢するな。ほれ……」
そう言って、那津男は口を開いて舌を見せた。
遥奈はすかさず義父の唇に吸い付き、男の喉奥に嬌声を注ぎ込んだ。
「んんっ! あむっ! んんふっ!」
古い家の中で昂った声を抑えずにいては、淫らな声が二階まで届いてしまう。遥奈は声を抑えるという理由を得て、義父と唇を重ねて、積極的に自分の舌を絡ませた。深く絡み合った舌の上を少女の淫らな声が走り、男の喉奥に消えていく。
嬌声を抑えるためなのか、キスが気持ち良いのか、遥奈には分からなくなってきた。唇を重ね、舌を挿し込み、少女は貪るように那津男の唇を味わった。
と、義父の指の動きが止まった。そして遥奈の愛液に濡れた指を舐め取ると、少女の両肩を抱いて優しくベッドに横たえた。見上げる遥奈を、那津男の身体が覆い被さっている。
不思議な気分だった。心が穏やかな海のように感じられた。
嫌で嫌で堪らなかった那津男とのセックス。母親の乱行を見てきたが故の嫌悪感。人形のように身体を犯されても感じてしまった自分の身体。
しかし、那津男を受け入れてからの感覚は、それらを波間の向こうに押し流していた。寄せては返す波のような感覚は心地好く、身体が目の前の男を受け入れる準備が出来ている事が分かる。
那津男の手が、少女の頬に添えられる。そして唇に触れ、肩に触れ、ささやかに膨らんだ乳房に触れた。
身体を淡い快感が走る。
遥奈は両手を広げて男を迎え入れた。
「遥奈……」
その瞳には自分を捨てた妻に対する憎悪は無く、ただ目の前の少女を愛で、素直に求める優し気な表情しかなかった。
義父の顔が近付き、再び少女と唇を重ねる。
「ん……ふ……」
そして舌を絡ませながら遥奈の身体を開き、股間の肉棒を少女の媚肉に添える。
遥奈の身体の敏感な部分に、熱いモノが触れた。そして、遥奈の中に入ってくる。
「ん……はああっ!」
遥奈の身体は、那津男の肉棒を驚くほどスムーズに飲み込んだ。のしかかる男の体重を感じながら、女の部分から全身に波のような快感が迸る。身体が痺れ、目の前が白くなり、喉奥から漏れる嬌声が止められない。
遥奈は思わず那津男に抱き着いた。そうしないと、身体がどこかに行ってしまいそうになる。唇を重ねていないと、喘ぎ声が溢れてしまう。
大きな快感の波が去ってから、入れられた瞬間にイッてしまったのだと遥奈は理解した。だが、快感の波は遥奈の身体の奥から次々と湧き上がってくる。自分の身体の中にある那津男の肉棒から、どんどん注ぎ込まれるようだ。
少女に覆い被さり、唇を重ね、那津男は腰を前後に動かしている。その動きは昨夜までのものとは違っていた。那津男も、自分の情動が止められないといった様子だ。
遥奈が求め、那津男も求めている。
お互いの身体がもたらす快感を貪り、お互いの唇の中で嬌声を交わし合い、義理の親子は初めての快感を味わっていた。
「い、イクぞっ! 遥奈!」
「あ、私……も……あああっ!」
「おああっ!」
「あ……はああああああああんっ!」
「「んふっ……んむ……んんんっ……………………」」
快感の絶頂に達した遥奈は、義理の父親の身体を抱き締めた。
少女の身体に精を放出した那津男は、義理の娘の唇に吸い付いた。
お互いの唇と身体を重ね合い、全身で相手を感じ合う。唇が、肌が、肉棒が、蜜壷が、相手を求めて絡み合う。お互いがお互いを求め合う……。
ドロドロに溶けあってしまいそうな初めての感覚を得た遥奈の身体を、心地好い疲労感が満たしていた。脱力して覆い被さっている義父の重さも気にならない。むしろ、その重みが気持ち良くすらある。
快感の残滓を味わいながら、遥奈は那津男の身体を愛し気に抱き締めた。
昨夜とは違い、この感覚はお互いに求め合ったものだと確信できる。
僅かの不安も期待も無い、気持ちの良い確信だけが、遥奈の心を満たしていた。
「んん……、んふ……」
台所で立ったまま那津男に背後から抱かれた遥奈は、洗い物を放り出して義父の寝室にいた。そして、那津男の手解きを受けながら、那津男のベッドの上でフェラチオに励んでいる。
二人とも、すでに着ているものを脱ぎ捨てて全裸だ。
「そうそう、自分が気持ち良くなりたかったら、まず相手を愉しませなくっちゃな」
さっきの自分のセリフを思い返して、遥奈は頭に血が昇る思いがした。実際に、耳までがとても熱く感じられる。
亜紀にバレるかもしれないという状況で、それでも那津男を受け入れて愉しもうとした遥奈の身体は、昨夜ともまた違った快感を覚えたのである。
お尻を突き出し、背後から突き入れられ、自分も那津男とのセックスを愉しんだ。
だが、足りなかった。
自分の身体を愉しんだ義父だけが絶頂を迎え、那津男は男の精を義理の娘の中に吐き出して満足してしまったようである。
一方、遥奈の方は、昨夜のような目の前が真っ白になる感覚には至れなかった。
昨夜の愉悦は、遥奈が初めて体験するものだった。快感を伴った波のようなものが下腹部から全身に広がり、臓腑から末端の指先に至るまでを刺し貫くような快感は、遥奈の身体には訪れなかったのである。
那津男を受け入れる。セックスの時は自分も愉しむ。
そう思って身体と共に心も開いた遥奈は、その思いが素直に口に出てしまった。
『まだ、イってない』
さっきの自分のセリフを思い返しながら、遥奈は口と舌で男のモノを舐め回した。
フェラチオの経験は、昨夜が初めてである。知識として知ってはいても、他人の股間にあるモノを口に含むのには抵抗があるのかと思っていた。だが、いざ義父のものを目の前にした遥奈は、自分でも意外なほどスルリと飲み込む事が出来た。那津男を受け入れると決めたからなのかと、遥奈自身は思う。前日までは、ただ自分の身体を苛む棒でしかなかったのだが、自分から積極的に相手を愉しませようと考えた時、義父の肉棒が那津男自身のように思えたのだ。
昨夜も、そして今も、遥奈の頭の中には那津男の事しかなかった。
だが……。
「やっぱり、あの女に似てるな。一生懸命にしゃぶるとこなんか、そっくりだ」
その瞬間、遥奈の頭に血が昇った。さっきのような、羞恥心からくる血の昂ぶりは全身が熱く感じられたのだが、今は違う。顔から火を噴きそうなほど感情は煮えたぎっているのに、心と身体は氷のように冷え冷えと感じられた。
遥奈は我知らず、咥えていた肉棒を添えた手で握りしめる。
「あだだだだだっ! な、なんだ!?」
「あの人の事は言わないで!」
頭の中がぐるぐるとする。目の前が赤く感じられて、血のような何かを吐き出さなくてはいられない。
「あんな……、私と亜紀を捨てた、あんな女なんかと似ているなんて……、いや! いやいや! 私は自分の意思で! 自分の為に……自分たちの為に! おじさんといるの! あんな女なんて関係無い!」
「おい……」
「だから! あの人と比べないで! 私は! あの人の身代わりじゃ無い!」
「おい……、は、遥奈……」
「あんな女なんかと……。違うのよ……」
それは、遥奈がずっと抑えていたものだった。ずっと隠していくつもりの心であった。
だが、義理の父親を愉しませようとしていた遥奈に対して、那津男の一言は少女の心に突き刺さった。遥奈の心の繊細な部分に、少女自身も思いもしなかった一撃を与えてしまったのだ。
『母親に似ている』
『芙由美にそっくりだ』
『美人になるだろう』
それは遥奈が幼い頃から、母親の男にずっと言われていた言葉である。
普通、容姿を褒められて嬉しくない子供はいない。遥奈もそれは例外ではなく、芙由美の乱行を知らない頃は、無邪気にその言葉を喜んでいた。
だが、母親の破天荒な性欲を知ってからは、素直に喜ぶ事は出来なくなっていた。それはそうだろう。母親に似ているという事は、いずれ遥奈も無軌道なセックスを繰り返すような、性に奔放な女に成り下がるという事なのだから。
もちろん、小学校を卒業する頃には普通の性的知識も得ていたから、自分にそういう気がなければ大丈夫だという淡い期待もあった。
しかし、母親の隣にいる男たちは違った。
遥奈を見る度に少女の未来像を勝手に想像し、淫らに濡れた視線を突き刺してきたのだ。その視線の、なんと気持ち悪い事だったか。小さな娘を可愛がるような言葉をかけながら、その視線の奥では、脳裏に映る成長した遥奈を犯していたのだ。いや、ともすれば、初潮も来ていない少女を。
だから、遥奈にとって「母親に似ている」という言葉は、呪い以外の何物でもなかったのである。
なのに、今は母親と同じ事をしている。
それが嫌で、苦しくて、辛くて……。遥奈は人形でいようとした。男の欲望を満たすためだけの、淫らな肉人形。妹の亜紀の為に、それをずっと続けてもいいと思っていた。
遥奈は、驚いた顔で自分を見つめる男と視線を合わせた。
母親の男。
義理の父親。
そして、遥奈の保護者。
自分を見下ろすこの男に保護を求める為、遥奈は身体を差し出した。そして、その関係からもう一歩進める為に、遥奈は那津男を受け入れたのだ。
それが、なんと気持ちの良いものであったか。
セックスの快感だけではない。
心の、魂の悦楽。
身も心もとはよく言うが、それが遥奈の中で実感を伴って理解できた。
――ああ、そうか。もう、お母さんなんて、要らなくなってたんだ……
遥奈の中で、ここ数日の事が腑に落ちた。
人形である事を辞めた。
那津男を受け入れた。
そして、母親を切り捨てた。
なのに、自分を守る立ち位置にいる目の前の男は、遥奈の心境の変化などまるで気付いていない風でいる。遥奈の心からの奉仕を受けながら、自分を捨てた女と目の前の少女とを比べている。
それが、堪らなく嫌だった。
他の男に言われても構わない。でも、同じ捨てられたという立場の那津男にだけは言われたくなかった。
那津男だけには、自分の心情を理解して欲しかった。
だから、遥奈は叫んだ。妹が起きてくるかもしれない事など構わなかった。
「なのに! なんで、おじさんがそんな事言うの?! いつまでも、あんな女の事ばっかり!」
「遥奈……」
「私は……、私たちは、もう! あんな女と何の関係も無いのよ! 私たちだけで、生きていくのよ……。だから……、あの人の事なんて知らない。知りたくもないし、聞きたくもないのよ!」
「遥奈!」
「何よ!」
いきなり、遥奈の視界が闇に染まった。
那津男の胸に抱きしめられていると分かったのは、一呼吸おいてからだ。
「わりぃ……」
「……。きらいキライ嫌い! あの女なんて、大っ嫌い……」
「すまん……」
「あの女と結婚なんかした、おじさんも嫌い……」
「ごめん……」
「私を犯して、オモチャにしたおじさんも嫌い……」
「許せ……」
溢れる感情を男の胸に叩きつけながら、それでも遥奈は未来を見ていた。これからの、自分と妹と、そして血の繋がらない父親の事を考えていた。
昨日の夜に生まれた、自分の中の新しい感情を好ましいものとして育てようとしていた。
「……でも、父親っぽい事をしようとしてた、おじさんは……許してあげる……」
「ああ……」
「今日の朝、おはように答えてくれたおじさんが嬉しかった……」
「あんなの、ただの挨拶だろ……」
「亜紀の行ってらっしゃいに応えてくれて、ありがとう」
「だから……普通だって……」
「……普通にしてくれて、ありがとう、おじさん」
「……」
那津男の逞しい胸から離れて、遥奈は義理の父親を見上げた。まだ少しだけ、要領を得ないような視線を義理の娘に向けている。
目を瞑った遥奈は、唇を薄く開けて那津男に顔を近付けた。男の太い首回りに両腕を回し、優しく力を込めていく。
那津男はもう、何も答えなかった。
遥奈ももう、何も言わなかった。
義理の父親の吐息が、少女の桜貝のような唇に感じられる。その唇から、甘い吐息が漏れる。
唇が、重なる。
倍も歳の違う男と少女の、血の繋がらない親子の、そして同じ感情をまとう男女が口付けを交わす。
キスをする。
「「ん……」」
――あ、これファーストキスだ……。
那津男と唇を重ねながら、遥奈はそんな事を考えていた。
「んん……」
男の舌が自分の中に入ってきた。艶めかしい動きで、少女の口の中を探ってくる。
口を少し大きく開けて、遥奈は那津男の舌を受け入れた。自分の中に入ってくるモノに、自分の舌を絡める。
「んん……んふ……」
喉奥から、何か気持ちの良い感覚がせりあがってきた。肉体的な快感とは異なる、身体自体が浮き上がるような不思議な感覚だ。
「んあっ!」
と、それとは別に、遥奈の下半身に直接的な快感が走った。
那津男の手が、遥奈の秘所に触れたのだ。その触れ方は淡く、少女の媚肉の形を確かめるような繊細さだ。
「ああっ! あふ……」
「さっきも思ったけど、お前、本当はかなり濡れやすいんだな」
「わ、分からない。そんなの……」
「嬉しいって言ってんだよ。俺を受け入れようとしてくれてるのが分かるからな」
「……!」
今夜、何度目の事だろうか。遥奈の顔に朱が差した。
「腰を上げろ。俺に抱き着いてていいから」
「う、うん……」
言われるまま、遥奈は膝立ちになり、那津男の首にかじりついた。そして、心持ち脚を開く。その仕草がなんとなくイヤらしいものに感じられて、遥奈の身体がフルリと震えた。この感覚は好ましい。男に身を委ねる感覚。
「ああんっ!」
那津男の指が、再び遥奈の媚肉に触れた。割れ目に合わせて指を前後に動かし、少女の敏感な部分の入り口を丁寧に愛撫してくる。
「ん! んふ! んんん……っ!」
「遥奈。声を出したきゃ我慢するな。ほれ……」
そう言って、那津男は口を開いて舌を見せた。
遥奈はすかさず義父の唇に吸い付き、男の喉奥に嬌声を注ぎ込んだ。
「んんっ! あむっ! んんふっ!」
古い家の中で昂った声を抑えずにいては、淫らな声が二階まで届いてしまう。遥奈は声を抑えるという理由を得て、義父と唇を重ねて、積極的に自分の舌を絡ませた。深く絡み合った舌の上を少女の淫らな声が走り、男の喉奥に消えていく。
嬌声を抑えるためなのか、キスが気持ち良いのか、遥奈には分からなくなってきた。唇を重ね、舌を挿し込み、少女は貪るように那津男の唇を味わった。
と、義父の指の動きが止まった。そして遥奈の愛液に濡れた指を舐め取ると、少女の両肩を抱いて優しくベッドに横たえた。見上げる遥奈を、那津男の身体が覆い被さっている。
不思議な気分だった。心が穏やかな海のように感じられた。
嫌で嫌で堪らなかった那津男とのセックス。母親の乱行を見てきたが故の嫌悪感。人形のように身体を犯されても感じてしまった自分の身体。
しかし、那津男を受け入れてからの感覚は、それらを波間の向こうに押し流していた。寄せては返す波のような感覚は心地好く、身体が目の前の男を受け入れる準備が出来ている事が分かる。
那津男の手が、少女の頬に添えられる。そして唇に触れ、肩に触れ、ささやかに膨らんだ乳房に触れた。
身体を淡い快感が走る。
遥奈は両手を広げて男を迎え入れた。
「遥奈……」
その瞳には自分を捨てた妻に対する憎悪は無く、ただ目の前の少女を愛で、素直に求める優し気な表情しかなかった。
義父の顔が近付き、再び少女と唇を重ねる。
「ん……ふ……」
そして舌を絡ませながら遥奈の身体を開き、股間の肉棒を少女の媚肉に添える。
遥奈の身体の敏感な部分に、熱いモノが触れた。そして、遥奈の中に入ってくる。
「ん……はああっ!」
遥奈の身体は、那津男の肉棒を驚くほどスムーズに飲み込んだ。のしかかる男の体重を感じながら、女の部分から全身に波のような快感が迸る。身体が痺れ、目の前が白くなり、喉奥から漏れる嬌声が止められない。
遥奈は思わず那津男に抱き着いた。そうしないと、身体がどこかに行ってしまいそうになる。唇を重ねていないと、喘ぎ声が溢れてしまう。
大きな快感の波が去ってから、入れられた瞬間にイッてしまったのだと遥奈は理解した。だが、快感の波は遥奈の身体の奥から次々と湧き上がってくる。自分の身体の中にある那津男の肉棒から、どんどん注ぎ込まれるようだ。
少女に覆い被さり、唇を重ね、那津男は腰を前後に動かしている。その動きは昨夜までのものとは違っていた。那津男も、自分の情動が止められないといった様子だ。
遥奈が求め、那津男も求めている。
お互いの身体がもたらす快感を貪り、お互いの唇の中で嬌声を交わし合い、義理の親子は初めての快感を味わっていた。
「い、イクぞっ! 遥奈!」
「あ、私……も……あああっ!」
「おああっ!」
「あ……はああああああああんっ!」
「「んふっ……んむ……んんんっ……………………」」
快感の絶頂に達した遥奈は、義理の父親の身体を抱き締めた。
少女の身体に精を放出した那津男は、義理の娘の唇に吸い付いた。
お互いの唇と身体を重ね合い、全身で相手を感じ合う。唇が、肌が、肉棒が、蜜壷が、相手を求めて絡み合う。お互いがお互いを求め合う……。
ドロドロに溶けあってしまいそうな初めての感覚を得た遥奈の身体を、心地好い疲労感が満たしていた。脱力して覆い被さっている義父の重さも気にならない。むしろ、その重みが気持ち良くすらある。
快感の残滓を味わいながら、遥奈は那津男の身体を愛し気に抱き締めた。
昨夜とは違い、この感覚はお互いに求め合ったものだと確信できる。
僅かの不安も期待も無い、気持ちの良い確信だけが、遥奈の心を満たしていた。
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