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1 三千円

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「なあ」
「うん?」

 中学の放課後、クラスメイトの翔の家に寄ってマンガを読んでいた忍は、同じくマンガを読んでいた翔に声をかけられた。二人ともマンガから顔は上げず、姿勢も変えずに話している。
 二人がマンガを手に寝そべっているのは、翔の兄の部屋である。
 年の離れた翔の兄は社会人で、中学生の二人に比べて使えるお金が多い。その為、兄の部屋には趣味のモノが多く、とりわけマンガの数が半端なかった。

「今、アニキのマンガ読んでるんだけどさ」
「ああそれ、結構エロいヤツなんだってな」
「そう、エロいんだけど……」

 それきり、何も言わない翔。
 声をかけられて何も言われないのは、ひどく気にかかる。忍は読みかけのマンガから顔を上げると、神妙な顔でマンガに視線を向けたままのクラスメイトを見た。
 忍の視線を感じた翔は、一瞬だけ目を合わせて逸らした。そして呟くように言葉を継ぐ。

「お前、いくらなら、男のモノを舐められる?」
「……はあ? 何言ってんだ、お前?」

 翔の読んでいる青年向けのマンガは、かなりエロい事がクラスで話題になっている。だが、忍は内容までは知らない。いずれ読ませてもらおうと思っているが、今はトンデモなく巻数の多い王道の少年向けマンガに夢中なのだ。
 忍も翔もセックスの知識はあっても、当然のことながら経験は無い。性的に興奮すると勃起するのは知っているし、オナニーも覚えている。だが、女の身体がどのようなものなのかは、漠然と知ってはいてもハッキリとは分かっていない。女の股には穴があって、興奮した男のモノを突っ込む、という程度の知識しか無いのだ。
 だが、翔の兄は社会人の為、青年コミックだけではなく、R18指定の成年コミックも持っていた。忍と翔は兄が仕事から帰ってくる前に、コッソリとエロいマンガを何度か読んだ事がある。
 だから、セックスの時に口を使うという事も知っているのだ。
 どうやら翔はエロ成分過多な青年コミックを読んで、口を持っているのは女だけではない事に気付いたらしい。

「五百円とか千円じゃダメだろ?」

 どこまで本気か分からないが、翔の言う金額は確かに安い。学校帰りに寄るハンバーガーショップでの一食二食分程度で、そんな変態じみた事に身体、というかプライドを売るのはゴメンである。
 だから、忍は自分の口の値段をふっかけた。

「そうだな。三千円は欲しいよな」

 去年まで小学生だった忍や翔にとっては大金である。

「……三千円か」
「そう、三千円! ホントは五千円は欲しいトコだけど、友達価格なら三千円が最低限だな」

 得意顔で自分に値段を付けた忍は、翔がマンガに視線を向けたまま何を考えているのか気付かなかった。だから、意を決したように翔が言った次の言葉の意味が、すぐには理解出来なかったのである。

「分かった。じゃあ、三千円払うよ。払うからやってくれ」
「……は?」
「だから、三千円だよ。口でしてくれるんだろ?」
「は、や……、いやいやいや! 冗談だよな?」
「何でだよ。忍が三千円でやるっていったんだろ?」
「だ、だって三千円だよ? うまい棒が三百本買えるんだよ?」
「うまい棒じゃなくて、オレの棒だよ」
「誰が上手いこと言えっていったよ!」
「とにかく三千円な。ほら」

 そう言って、翔は自分の財布から無造作に千円札を三枚取り出した。そして扇形に広げてヒラヒラさせる。
 正直、目の前にお金を出されて、忍の心はグラっときてしまった。
 あの三千円があれば、近所のカラオケで昼の子供料金なら三回は行ける。学校帰りに寄っているハンバーガーショップなら、五百円のセットが六食分だ。

「や……、でも……」
「昼カラなら三回は行けるし、バーガーも六回食えるな」

 忍は思わず自分の口を押さえてしまった。心の声が漏れてしまったのだろうか。
 実際には、普段から一緒に遊んでいる友達なのだから、行動パターンから何を考えているのかバレバレなだけであるが。

「だーいじょうぶ。クラスのみんなには内緒にするからさ。な? な?」

 普段の翔は、人との距離がとても近い少年だ。クラスの誰とでも気さくに話をするし、肩を組んで笑いあったりもする。
 そんな翔が、お金を片手に忍の肩を抱いてきた。
 忍の目の前に、千円札が三枚揺れている。忍の月のお小遣いは五千円。翔の家がお金持ちっぽい事は知っているが、翔がどれくらいお小遣いをもらっているかは知らない。それでも、三千円は安い金額ではないだろう。

「ほ、ホントに内緒だぞ?」
「お? へへっ、大丈夫、だいじょーぶ♪」
「ふん!」

 忍は目の前の三千円をひったくり、馴れ馴れしく肩を抱いていた翔から身体を離した。

「後で返せとか言うなよ!」
「やりぃ。言わない言わない」

 そう言って、翔は部屋着のスウェットに手をかけ、下着ごと下ろした。

「……デカ」
「そうか? 普通だろ? 勃起してるんだし」

 この年代の少年なら、裸になる事に恥ずかしさを覚えるのが普通である。しかし、翔はそんな恥ずかしさなどまるで見せず、むしろ見せつけるように忍に向かって興奮した肉棒を差し出した。腰を両手に当てて、ドヤ顔でクラスメイトを見下ろしている。

「早く、はやくっ」
「うお……」

 目の前に、友達のモノ。
 それは成年マンガでみたモノとほとんど同じ姿をしていた。皮は完全に剥けており、亀頭は黒ずんだ桃色をしている。亀頭の周りのカリ首はそれに朱色が混じったような色で、なにやらツヤツヤとしていた。竿の部分には血管が浮き出ており、ドクドクと脈打っているようにも見える。
 まるでクラスメイトの股間に寄生した、別の生き物のようであった。
 ピクピクと震えるクラスメイトの性器に触ろうとして、忍はハッと我に返った。

「そ、その前にっ! ちゃんと洗ってよ!」
「えー?」
「えー、じゃないよ。さっきトイレに行ったばっかじゃん!」
「洗うって言ってもなー」

 そう言って、翔は自分の部屋をキョロキョロと見回した。ティッシュはあるものの、それ以外に清める為の物は無い。

「シャワー浴びてくりゃいいじゃん。翔のウチなんだから」
「そうだな……。んじゃ、一緒に入ろーぜ」
「ええっ?」



 三千円を受け取ってしまった手前、後に引く事も出来なくなった忍は、翔に誘われるまま一緒にお風呂に入っていた。家の大きさから翔の家がお金持ちだと思っていたが、お風呂がいつでも入れるようになっていると聞いて、マジにお金持ちなんだなと忍は感心した。

「広っ!」

 自分の家のお風呂場に比べて二倍の広さはあるゆったりとした浴室に、忍は正直な声を漏らした。
 忍は腰にタオルを巻いて自分のモノを隠しているが、自分の部屋で堂々と性器を見せていた翔は、お風呂場でも元気に勃っている肉棒を隠していない。

「……ちゃんと洗ってよ」
「分かってるよ。……いや、待てよ? そんなにキレイにしてほしいんならさ、お前が洗ってくれよ」
「ええっ? ボ、ボクが?」
「そう。だってオレがいくらしっかり洗っても、お前納得しなさそうじゃん」
「そりゃ……まあ……そうかもだけど」
「はいコレがボディソープ。スポンジはこれを使えよ。ああでも、使わなくても良いけどね。それじゃ、頼むよ」

 翔は忍の前で後ろに手を組み、剥き出しの勃起した肉棒を差し出した。
 ここまで来たら、覚悟を決めるしかない。忍はクラスメイトの前に跪き、スポンジ泡立てて友達のモノを洗い始めた。

「ふ……わ……」
「なんだよ、変な声出して」
「いや、だってお前……、触り方が……。お、ほう……」

 自分の手の中で泡だらけになった友達の肉棒が、ビクビクと震えるのが分かる。忍は始めの内、イヤイヤ恐る恐るクラスメイトの肉棒をスポンジで擦っていた。だが、腰を震わす翔の反応が面白くなってきた忍は、少しだけ亀頭の先っぽを指先でクリクリといじり始めた。

「ちょ、待った待った!」

 堪らずといった声を上げて、翔は忍の手から腰を引いて逃げ出した。そのまま力が抜けたように、浴室の床にぺたりと座り込む。

「はあっ……。いまの……やべぇ……」
「えーと……。やっぱりやめる?」
「や……、いやいやいや! 三千円払ってんだ! やめられるか! ってか、やめるの無しって言ったろ?」
「分かったよ。ほら、脚広げて」
「あ、ああ……」

 いつの間にか、立場が微妙に逆転してしまっている。
 一度触って吹っ切れてしまった忍は、クラスメイトの足の間で元気に天井を向いているモノに再び手を触れた。

「ふ……」

 残った泡にボディソープを足して、もう一度泡立て始める。今度は肉棒だけでなく、垂れさがった袋も丁寧に揉み上げた。力を込めすぎると痛くなるのは自分のモノと同じで分かっているから、玉を潰さないように優しく袋を揉み上げる。

「ふあ……は……」

 翔の口から洩れる声に、忍は今度こそ嬉しくなってきている事を自覚した。自分の手が、友達を気持ち良くしている。それが楽しく感じられて、忍は色んな触り方で翔の肉棒と袋をキレイに洗っていった。母親の肩をマッサージしている時も『あ~気持ち良い』などと言ってもらえるが、それと似たような気分なのかもしれない。

「んん……ふ……」
「ねぇ、……そろそろいいかな?」
「ふ……え?」
「いや、もうキレイになったでしょ? シャワーかけるよ」
「あ、ああ……」

 翔の口から名残惜し気な声が漏れたが、忍はそれには構わずシャワーを友達の股間にあてた。肉棒に絡みついた泡が、みるみる流れ落ちていく。

「うん、キレイになった」
「そ、そうか……ふおわっ! おま……っ!」

 泡をキレイに流した忍は、そのまま躊躇う事なく翔の肉棒を口に含んだ。ほんのりとボディソープの香りがする。

「はう……あ……は……」

 翔の口から、聞いた事の無いような甘い声が聞こえてきた。初めて聞いたのに甘い声と感じるのは不思議な感じがしたが、その声は忍の心を不思議と昂らせた。友達のモノを咥えるとか普通ではないが、そんな事も気にならない。ただ、自分の口と舌で友達が悦んでいるのが、とても嬉しく感じられる。だから、自分がされたら気持ち良いかもしれないと思った事を、忍はそのまま翔のモノにし続けた。
 舌先で亀頭を舐め回し、おしっこの出る穴を刺激する。唇をすぼめ、カリ首の部分を上下する。掌で袋を撫でまわし、空いた手で尻肉を掴む。そのほとんどが、借りて読んだ成年コミックの女の子がしていた行為と、されたらいいなという自分の妄想だ。

「し、忍っ! で、出るっ!」

 下半身をブルブルと震わせたかと思ったら、翔はいきなり忍の頭を掴むと、クラスメイトの口の中に男の精をドクドクと吐き出した。

「うぶわぁ……。な、何すんだよ……、苦あぁーい。べっ……」

 突然の事に逃げる事も出来なかった忍は、友達の溢れる精を全て口の中で受け止める事になってしまった。口の中に広がった生臭い匂いが鼻をつき、舌に感じる苦味はこびりついて取れない。
 さっきまでの不思議な昂ぶりから心が冷めた忍は、シャワーのコックを勢い良く捻り、強い勢いで流れ出すお湯で口の中をすすいだ。いや、すすぐというよりも、洗うといった勢いだ。

「あ、ああ、わりぃ。でも、スッゲー気持ち良かった! ……なあ」
「……なに?」

 忍は胡乱な目付きで満足げなクラスメイトを睨みつけた。

「ああ、いや……、別に今日じゃなくってさ、その……、また、やってもらっても良い?」
「やるって……、お前のモノを?」
「そう」
「ボクが、また舐めると」
「そうそう」

 口の中をすすぎ終わった忍は可愛らしい笑顔を翔に向けると、クラスメイトの顔に勢い良くシャワーを浴びせた。

「ぶわっふ!」
「ぜーーーったい、イヤ!」
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