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第六章 鉄ちゃんと月夜姫

中庭にて

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 眠りから醒めた鉄ちゃんの第一声は「月夜ちゃん腹減った」だった。
 翁じいとルナママと大笑いした。
 ルナママはすっかり笑いを使い分けているようだ。

 そして翁じいの提案で中庭のテーブルとチェアでご飯を食べる事にした。
 直通の通路を使って、ルナママが三人を中庭まで浮かび上がらせてくれる。
 中庭に出ると通路の穴が消えた。
 照明がついていないのに明るく感じる。
 上を見ると天井が開いていて、夜空に満月が浮かんでいた。

「ではじいやはお風呂に入ります。ゆっくり入ってこようっと! 」
 そう言って中庭から出て行った。

 もう、翁じいったら………

 そして二人がけのチェアに座ると、やっぱり密着して窮屈だった。
 でもなんだか恥ずかしいようで心地いい。
 パパとママの大切な場所っていう意味がようやく分かった。

「鉄ちゃんでかい! 」

「月夜ちゃんごめんごめん」

 鉄ちゃんが可愛く謝った。

「ううん、いいの、生き返ってよかった」

「うん、ありがとう」
 鉄ちゃんがしみじみ言った。

「そうだ、鉄! 」
「何? 肩車して欲しいの? 」
「違う………言っていい? 笑わない? 」
「どうして俺が月夜ちゃんの言う事笑うの? 文字通り命の恩人だし………」

「えっとね、えっとね、絶対笑うなよ、

 いいか、言うよ………

 月夜は姫なんだぞ、

 お姫様抱っこして! 」

「オッケー」

 鉄ちゃんはそう言うと立ち上がって軽々とお姫様抱っこをしてくれた——嬉しかった、ドキドキした。
 でも、裸にパンツ一丁な姿がロマンチックじゃないなぁ、ま、いっか。

 鉄ちゃんの逞しい腕に抱かれて月を見た。

 みんなありがとう——私は月の女王として月人の為に、二つの事をしないといけない。

 一つは私も『肉体改造装置』に入って生きるか検証する事。『魂の注入装置』についてはもう少し考えてから使おう。

 二つ目は月人の仕事である地球から争いをなくすお手伝いをすること、どうやってお手伝いできるかはこれから考える。

 と

「わおーん!!! 」

 鉄ちゃんが満月に向かって命の雄叫びを上げた。
 生きる嬉しさが込められたどこまでも響く澄んだ叫びだった。

 あれ、なんだなんだ、月の光が反射して辺りが輝きだした、ここにあるのは竹林に滝に池に草に白木のテーブルとラブチェア。
 何が光ってるんだ。

 えっ!

 鉄ちゃんが………私は鉄ちゃんの胸板を拳で叩いてみた。

 カン! カン!

 わーーーーこれって何、もう、ルナママの嘘つき! 問題なくないじゃん、鉄ちゃんが、鉄ちゃんの体が、

 ダイヤモンドになってるーーー!


「わおーん!!!! 」
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