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第三章 ボラン島と月夜姫

南の島で十五夜を1

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 そして何日かが過ぎた。
 まだ、イガジウムは掘り当てていない。
 三人で食事をしていると、時折ボラン人の女性がフルーツを差し入れしてくれるようになった。
 そういうときはみんなで楽しくお話しした。もちろん翻訳機を通してだけど、でも挨拶だけは覚えた——『ライライ』朝昼晩、出会いにお別れ、全て同じ挨拶だった。
 こういう時の翁じいは凄かった、人種も超えた笑いを引き出すんだから、みんな大笑いした。

 すると今度はボラン人の男性も長老でさえ来るようになって、みんなで宴会をするようになった。私と鉄ちゃんは未成年だから女性の持って来てくれるフルーツジュースを飲んだ。
 そこにルナママが手塩にかけた料理が出てきてみんなで楽しい時間を過ごした。
 そしてボラン人も、
『オイシー! 』を覚えて連発する。その度にルナママがピコピコ喜んだ。

 島に温泉があるという事なので三人で連れて行って貰った。

 男湯と女湯はもちろん分かれていたけど、貸し切りにしてくれた露店風呂で月を見ながら一人で入った。

 今夜は満月だ。

 綺麗な月を見た。

 月人を思い浮かべた、
 ジーヤンを思い浮かべた、
 かぐやママの水草を思い浮かべた、
 鉄ちゃんの顔を思い浮かべた、
 ボラン人の男性の笑い顔を思い浮かべた、
 ボラン人の女性の笑い顔を思い浮かべた、
 ルナママの木の根のような回路を思い浮かべた、
 そしてボラン人と楽しそうに笑う翁じい。

 ——みんな同じ人間だ。

 そう思った。 

 そしてリムジンに戻ると、横には白木のテーブルにお皿が二つ置いてあって、団子みたいな丸い物が山積みになっていた。液体の入ったジョッキが3つ置かれ、花瓶に南国の切り花も飾ってある。

「わールナママ、これなに? 」
 私は思わず叫んだ。
「ありあわせですが、お月見いたしましょう」
 満月ペンダントから声が聞こえた。
「お月見ー! 」
「はい」
「ルナママありがとう」
「どういたしまして、じゃあ飲み物が冷たいうちに召し上がれ」
「うん、鉄ちゃん、翁じい乾杯しよう」
「いいね! 」

「「「かんぱーい」」」

 月に向かって、故郷に向かって、三人で乾杯した。

 そして、ジョッキの中の液体を飲んだ。
 冷たいココア味だ。

「ウヒョールナママ、これはココア味のプロテインだね! 」
 鉄ちゃんが大声で叫んだ。
「ご名答」
 ルナママが優しく言った。
「こりゃ、美味しいですぞ」
 翁じいが笑顔でそう言った。
「もしかしてー」
 鉄ちゃんはお皿に近づくと丸い食べ物をぽいぽい口に入れて食べ出した。

「鉄ちゃんそれなあに? 」
「茹で卵! 山積み! ちょー嬉しい」
 そういうと塩もつけずに次から次へと食べまくる。
「わしも食べますぞ」
 そう言うと翁じいも競って食べ出した。
「塩、いらないの? 」
「大丈夫! 筋肉強化! 上質なタンパク質、ねえ翁じい」
「ウヒョー、そうです。若返ります! 」
 二人の食べっぷりを見て、私は嬉しくなった。

「そうそう月夜姫、隣のお皿はお団子です。ゆっくりお食べなさい」
 ルナママがそう言った。

「うん、ありがとうルナママ」

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