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第三章 ボラン島と月夜姫

鉄ちゃん!迎えに来たよ4

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「痛いよ月夜ちゃんどうしたの? 」
 頭を上げた鉄ちゃんが笑ってる。

 鉄ちゃんが笑ってる。
 私の横で笑ってる。
 鉄ちゃんが笑ってる、笑ってる。

 ピシッ!

 今度は日焼けした二の腕を叩いた。

「いたくないもん、送ってもらったプロテインで鍛えているから」

 頬を涙が伝う。 

「うん、うん、うん」

 ピシッ、ピシッ、ピシッ。
 何度も何度も叩いた。
 と鉄ちゃんは、いつかのように左のズボンのポケットから、くしゃくしゃのハンカチを出すと私に渡した。
「泣かないで月夜ちゃん、はい」
「あんがと」
 私はいつかのように涙を拭くと、チン! 鼻もかんだ。

 一瞬で時間が戻った気がした。あの時に………

 鉄ちゃんの笑顔は全く変わりがなかった。

 と、その時突然ルナママの声が車内に響いた。

「月夜姫イガジウムセンサーが反応しました」

「えええーーー! 」

「鉄ちゃん始めまして、私は植物コンピュータの人工知能ルナです」
「ルナママってよんで! 」
 私は鉄ちゃんに言った。
「ママなんですか、ルナママ岩壁鉄です。よろしくお願いします」

「こちらこそ宜しくお願いします。鉄ちゃんの好きな物は茹で卵に鳥の胸肉、そしてココア味のプロテイン。スリーサイズまで全部把握してますよ」
「ひゃー凄い! 」
 鉄ちゃんは驚いた。
「ピコピコ、ピコピコ、困った事があったらいつでも相談して下さいね。そうそう、月夜姫、イガジウムセンサーが太平洋の真ん中で反応しました」
「太平洋の真ん中? 」

「はい、地図にも載っていない小さな島です。島民たちはボラン人と自分たちの事を呼んでいて、ボラン島というみたいです」
「へーどうして分かったの? 」
「島に一台携帯電話があるようで、近くの島に出稼ぎにいっている島民と通話してるのを盗聴いたしました」
「さすがルナママ! 」

「月夜姫、掘削機も採取ポットも食料も全部車に積んであります。さっそく行きましょう! 」
 翁じいが叫んだ。
「さすが翁じい、準備万端! 」
「へへへ、いつでも行けるようにね、じゃあルナ、目的地の緯度と経度のデータ、収録した島の映像を転送して、地図に載ってないなら手動で行くまで! 」
「翁じい了解です」
「さて行きますぞー、鉄ちゃんしっかり捕まってて、二人とも自動シートベルトを確認して! 」
 二人で腰のあたりを確認した。

「「大丈夫! 」」

「オッケー、ひゃっほー」
 リムジンが急旋回するとともに一気にスピードが上がった。
「きゃああああああああ」

 また、ジェットコースターだ。
 どんどんスピードが上がる。
 私は鉄ちゃんを見た、大丈夫かな。
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