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第二章 月人《つきびと》

月という国5

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 中に入ると中央にレッドカーペットが敷かれ、奥には一段高くなっている円形の壇が造られていた。
 照明がないのに、ドームの天井が白く輝いている、きっとこれも何やら技術を使っているのだろうなあ。

「この壇でティアラをお渡し致します」
「私はどうすればいいのですか? 予行演習とか練習とかしないといけないんですか? 」
「全く必要ありません。私が御誘導しますので、必要な事があればお伝え致します」
「式の途中でですか? 」
「はい、でもお話しは致しません」
「さっきみたいに『念』を使うんですか? 私に受け取れるのかな」
「大丈夫です。月夜姫は女王様になる御家系のお人です。充分能力は持ってます」
「不安です」
「では証拠をお見せします」
 ジーヤンは翁じいの顔を見た。
「翁じい、正直に答えてください」
「はいはい何でしょう? 」
「ここに入ってから月夜姫と私の話し声が聞こえましたか? 」
「月夜姫の横にいましたが一言も話していませんでしたよ」

「ええええー」

 もうびっくりしっぱなし。

「今のは聞こえました」
 翁じいが答えた。
「そういう事です」

 あはは、お屋敷でスリッパ出したのもやっぱり私がやってたのね、きっと。

「当日ここに集まるのは地球でいうトップリーダー、月ではグランドマスターと言いますが、その300人ほどですが、10億人ほどの全国民が、300人と交信して、式を見ています」
「ひゃあああ」
「おっと、余計な事を言ってしまった。リラックスしていきましょう」

「ははは………」

 あーあ、リラックスなんてできるのかしら……きっと、今、顔が引きつってる。

「お二人とも今日はお疲れでしょう、月の湯旅館を貸し切っておりますのでごゆっくりなさってください」
「月の湯ですか、これはありがたい、最高の温泉です」
 きっと、翁じいはおばあちゃんとママの時に入ってるんだ。

「では徳竹とくたけ月夜つきよ姫、明日は9:00にお迎えに参ります。御支度はこちらで全てご用意させていただきますので、お化粧などもなさらずそのままでお待ち下さい。小竹林しょうちくりんおきな様もぜひご参列ください」

 そう言ってジーヤンは丁寧にお辞儀した。

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