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第二章 月人《つきびと》

月という国2

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 地球から見て月の裏側のクレーターに誘導されたリムジンは、逆さまになった。
 宇宙空間なので上も下もないんだけど、クレーターが屋根の上にあるからやっぱり逆さまなんだろう。
 で、何が起こるのか待ってたら、円形の黒い穴がポッカリあいて、吸い込まれた。

「きゃああああ翁じい、お屋敷と同じで落ちてるの! 」
「ひゃっほー、いえ、昇っています」
「だって落ちてるのじゃない、逆さまに」
「いえいえ、昇っているのです」
「訳わかんないしー! 」
「ひゃっほー」
「きゃああああああ」
「いぇい! 」
「びっくりするなって言われても、やっぱびっくりしちゃいますって! 」
「ぜーんぜんびっくりしませんよ」
 翁じいが落ち着いた口調でそう言った。
 そりゃそうでしょう、2回も経験あるんだし、それに翁じいは——

「きゃああああああ! 」
「ひゃっほー」
 喜んでるし、
「きゃああああああ!!! 」
「いっけー 」
 ——やっぱりスピード狂だ。

 でもお屋敷よりは随分長い距離だ。
 ジェットコースターに振り回されているような、この感覚にも随分慣れたてきた。確かにずっと真っ暗な中を猛スピードで落ちて? 昇って? いるみたい。
 数キロあったのかなぁ、数十キロかしれないけど、対象物がないから全然わかんないけど、車内のデジタル時計が10分くらい進んだ。


 そして、急に辺りが明るくなった。

 明るくっていっても、電気のついた明るさじゃない、ぶくぶく気泡が上がってるし、何だか青いし、奥には大きな木の根っこみたいのがゆらゆら揺れてるし、魚と目が合うし、

「って、サカナーーーって!? ここどこなの? 」
「水の中です。正確に言うと湖の中です」
 翁じいがそう言った。
「えええええええ」

 そのまましばらく上がっていくと、太陽の光りが差してきて、空と山と草原と斜め上には太陽が見えた。
 どうも空気がありそうだ。
「窓開けてもいいですよ、ロックは解除しました」
 私がゆっくりドアウィンドーを下げると、新鮮な空気が車内に入ってきた。
「うわー」
「全部のマドを開けますぞ」
 翁じいがそう言ってコントロールパネルのスイッチを押すと、全てのドアウィンドーが下がって、あれ、風だ、気持ちいい風だ!

「わああ、気持ちいい! 」

 外を見るとリムジンは湖に浮いていた。

「はい月夜姫、お帰りなさい」
 かぐやの声が聞こえた。
「あは、ただいまー」

 ただいまでいいんだきっと………
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