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第一章 地球人と月夜姫

記憶にある悪夢3

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 ここは自宅のお屋敷だ。
 どうも私はママのお腹で大きくなっている途中らしい。

 どたん。わっ大きな物音、これはなに?

「うわー」

 今度は男性の悲鳴だ。
 あっママの視界が開けた。
 部屋は暗い、ママは寝ていたんだ。ママは目を覚ますと、寝室のドアを出て廊下を走り出した。
 そしてドアを開ける。
 ここはパパの書斎だ。
 本棚が倒れていろんな物が部屋中に散乱している。きっと誰かと誰かが取っ組み合いをしたんだ。
 中にいるのは誰?

 こいつは誰だ。

 えっこの顔は鬼塚原左門二。
 ここで何してるんだ!
 ああ、誰かをナイフでで刺してる、血が吹き出して、刺された男性がゆっくり倒れていく。

「きゃあああ」
 ママが悲鳴を上げた。
「あなたは何をしたの! 」
 ママが怒っている。
「ふん、知らないね、いいものあったから頂いただけだ」
「おのれ、吹っ飛べ! 」
 ママがそういうと、鬼塚原は宙に浮いた。
「くそっお前普通の人間じゃないな! 」
 鬼塚原が大声をあげた。
 そしてどん、壁にぶつかって床に落ちると、ポケットから札束が落ちて持ってたノートを手放した。
「ぐえ」
 そのまま気絶した。
「パパ、パパ、大丈夫」
 ママが男性に駆け寄る。

 パパ、って私のお父さんの事?

 ママがスマホで誰かに連絡してる。
「翁じい、お医者さん連れてすぐ来て! 」
 翁じいに連絡したんだ。翁じいはこの時別のところに住んでいたんだ。
 ああ、パパのお腹からどんどん血が流れている。

「パパ、パパ、パパー! 」

 ママが泣いてる。取り乱して泣いてる。

 あっ、鬼塚原が目を覚ました。
 ママ危ない!

「くそっ! 」

 鬼塚原は起き上がると、ノートを拾って、部屋から出て行った。

 なんて奴!

「パパーーー目を覚まして、パパ」

 ママがパパを抱きしめている、ママの洋服にも血がいっぱいかかってる、いやー!

 あ、ママの声にパパが反応した。
 目をあけた。

「月菜、ノートはノートは? 」
 ああ、声が震えていて力がないよ………
「そんな物はいいのよ、今は何も喋らないで、翁じいがすぐお医者さんを連れて来てくれるから! 」

「そうか」

 嫌ぁ、パパがどんどん弱っていく。

 ママが何度も首を縦に振ってる。
 言葉にならない。
 ママの目から涙が溢れてきた。

「どうも駄目みたいだ、意識を失いそうだ、月夜を無事に産んでおくれ、君より長生きできないでごめん」

 ママが泣いてる、首を横に振って泣いてる。

「愛してる」

 ああ、パパが目を閉じた、動かない、お腹から血がいっぱい出続けてる。

「パパーーー! 」

 ママの悲しみが伝わる、凄い、私も涙が止まらない。


「ああああああ! 」
 余りにもの衝撃で、私は目が覚めた。
 私はベッドに寝かされていた。翁じいと家政婦ロボットが運んでくれたらしい。

「これってどういう事! 」

 私はおきあがると、流れ出る涙を拭こうともしないで、心配そうに顔を覗き込んでいる翁じいに叫んだ。
「詳しい事は明日にしましょう、泣くだけ泣きなさい」
 翁じいはそう言って私の頭を抱きしめてくれた。
「うわあああああああ! 」
 私は翁じいにすがりつく様にして大声を上げて泣いた。泣いた。泣いた。

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