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第一章 地球人と月夜姫

秘密の中庭3

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「屋根は開閉もできますので、ドアを開けっぱなしにすると心地いい夜風が入り込むんですな。中庭にいる時はいつもドアを開けておられた。お二人だけの時間を邪魔してはいけませんので、じいやは時折ドアの隅から見守る程度でしたが、それでも何回かは御一緒にワインを頂いたものです、ルナの作った極上のおつまみとともに」
「………」
「十五夜のお月見は特に印象的でした。お母様は故郷を思い、故郷を愛し、故郷の為にご自身のお身体すら捧げておりましたのでね。お父様はそれを全て受け入れ一緒に研究しておりましたから」
「お父さんも科学者だったの? 」
「作用でございます。世界的にも有名な科学者でございましたが、地位や名声を全て捨てて、お母様とご一緒になり、かぐや一族のために全ての時間をお使いになられておりました」

「………」

「だから、十五夜の満月を見ながらこうしたゆったりとした空間で、二人だけで過ごすのが、何より大切だったのでしょう」
「十五夜かぁ………」
「いい時間でした」
「お母さんとお父さんは幸せだったの? 」
「それはもう、誰もが羨むような美男美女のカップルで、短い時間ではありましたが、お二人は愛し愛されていました」

 ふーん。

「今度は月夜姫の番ですよ、素敵な出会いがあるように祈っております。天国のご両親も同じ思いだと思います」

 出会い、か………うん、誰だこの顔、頭に浮かんでくるのは! あっ鉄ちゃん。
 私は顔が熱くなった。
 違う違う鉄ちゃんは姉弟きょうだいだもの、違う、違う、違うって——ぶんぶんぶん、頭を振って慌てて現実に戻った。

「そ、それで翁じい、その地下へはどうやって行くの」
「はい、これから先は私の声ではでセンサーすら出てきません。月夜姫がルナに命令して下さい」
「わかった」
 私は月のペンダントを手に持った。
「はいルナ」
 ペンダントに向かってそういうとペンダントが光った。
「月夜姫、御用ですか? 」
 ペンダントからルナの声がした。
「地下に行けるセンサーを出して」
「では、発声経路を確認します。発生経路は月形ペンダントであると確認しました。続いて月夜姫の声紋を解析致します。ピピッ、ご本人であると確認されました。続いてカメラによる顔認証を行います」

 カメラなんてどこにあるのかしら?
 全くわからない、でもどこかにあるんだ。

「顔認証確認、骨格認証確認、身長体重スリーサイズ全て一致、100パーセントご本人であると認識されました。ではセンサーをお出しいたします」

 と、小さな滝の中から石柱のセンサーが迫り出してきた。

「凄い」
「じゃあ月夜姫、右手をあてて」
「うん」
 私が近づいて右手をあてると石柱が光った。
 翁じいも私の後ろにぴったりついている。

「月夜姫の指紋、静脈認証全て合致、お印の波動も観測いたしました、では地下への通路を開きます」

 お印から波動が出てるんだ………自分じゃわからないなぁ。

 どこがドアなんだ? 竹林が開くのか、滝が開くのか、池の水が抜けるのか、ここにあるのはそんなもんだ。

 と、思っていたら足元の芝生に穴が空いた。

 えっ!

 二人して真っ黒なその空間に、足から吸い込まれた。

「きゃあああああああ」
「わはははは! 」
「翁じい、知ってたな」
「もちろんでございます」

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