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第一章 地球人と月夜姫

なよ竹のかぐや姫の物語1

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「月夜姫は竹取物語をご存知ですか? 」

 翁じいは紅茶を飲みながら唐突に切り出してきた。
「子供の頃に絵本で読んだ事がある」
「ふむ、ではここで物語の解説をいたしましょう」
 私は不思議に思った。
「私と竹取物語とどう関係あるのかしら」
「大いにあります」
「………」

「月夜姫は『なよ竹のかぐや姫』の末裔であられます」

「えーーーーー! 」

 完全にわけがわからん。

「そして私こそが物語に出てくる『さぬきのみやつこ』別名、竹取の翁の末裔なのです。翁とはおじいさんの事ですが、名前として名残りが残っています。翁じいを現代訳すると、じいさんじいさんになってしまいますがのう、ふぁっふぁっふぁっ………」

 もう、勝手にして………

「ははは」

 私の笑いは乾いていた。

「それはさておき、光る竹から生まれたかぐや姫は、三ヶ月でそれはそれはお美しい女性に成長します。月夜姫は同じくらいお美しい」
「へー、私、美しいんだ」
「はい、お母様譲りでそれはそれは………」
 確かにあのホノグラムの女性は綺麗だった、そして私に似ていた。


「かぐや姫の一族は月に住み錬金術を習得していました。まだ日本が平安時代に、かぐや一族は現代の科学よりずーっと進歩していたんですな、勿論今も月に住んでいます。地球から見ると一種の宇宙人です。
 そのおかげで私どもは沢山黄金をいただきました。竹取の翁が竹林に行くと、黄金がたくさん拾えたというあれです。
 現代では小竹林家と名を変えましたが、すっごいお金持ちになりました。そのかわりずーっとお使えしてきたのです」

「その一族は今でも、つ、月に住んでいるの? 」

「そうでございます。高度な知能と技術力を持っていますから、たとえアメリカだろうが、ロシアだろうが、中国だろうが、月に近づこうが着陸しようが、それ以上の開発はさせないのです」
「そうか、物語では三年後の夏、十五夜に月からの使者が雲に乗って来て、連れて行きましたよね」
「表向きは………」
「表向きですか? 」
 なんだ表向きって………
「はい、その後再び地球に戻って来て地球人とご結婚なさっています」

「えええええええ! 」

「なぜならかぐや姫には大切な任務があったのです」
「任務? 」
「月夜姫は三ヶ月で成人とはどう思われます? 」
「そりゃ早すぎます」
「ですよね、知識や科学、技術力は凄まじく高い、でも成長が早いかわりに寿命が大変短い一族なんですな。
 寿命が十年ほど、かぐや姫も十年でお亡くなりになり、お子様を私どもの小竹林家と旦那様に託した。
 地球人はかぐや一族よりもずっと寿命が長い、そのおかげで結婚して生まれた子供は成長も遅く少しずつ寿命が長くなったのです。
 かぐや姫の系統は女の子しか生まれない、女系一族であるとともに、寿命を伸ばす為にはどうしたらいいのか、自分の身をもって研究していたんですな。
 そのおかげで現在では三十歳まで寿命が伸びましたが、お母様も月夜姫を産んで間も無く、丁度三十歳でお亡くなりになりました」
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