上 下
70 / 93
第5章

嵐の後の学校公開 7

しおりを挟む

 ──金曜日

 だんだんと用心深さが消えてきた盗っ人三人衆は昼過ぎにはアジトを出ていた。
 もうカップラーメンの昼食には飽きたのだ。
 今日もアーケード街には多様な人種が、行き交っていた。
 それを、鬼王神社の方に向かって歩いていく、
「いやーエリちゃん最高っすね」
 二が言った。
「俺はマキちゃん、親分は…」
「うーん、サキちゃんかな」
「久々に楽しかったっす」二は嬉しそうだ。
「おかげてだいぶ財布が寂しくなったけどな、そういや駐車場代をとっとかないと出られなくなるなぁ…」
「土曜日までで六日、一日900円だから…えーっと…5600円すかね」
 ピシッ!
 親分は二の頭を小突いた。
「アホ! もっかい勘定しろ」
「えーっと、ろくご30、ろくろく36、ろくちしち42、ろっぱ、40…9? 」
「あー親分鰻だ、香ばしいっす」
 一が足をとめた。
 親分は店先で焼いてる鰻を見て匂いにトロンとなると、純和風の木の看板を見上げた。
「こりゃ、浅草の名店だぜ、すげぇなこんなところに店だしてんだ」
「はいっちゃいましょうぜ」調子のいい一。
「え、違うか、ろっぱ48、ろっく54、わかったぁ5400だ」
 二が嬉しそうにそういって周りを見渡した時には、既に親分と一は店に入って行くところだった。
「まってーまって、置いてかないで…」

 鰻が焼ける間、骨せんべいに冷酒、板わさでちびちびやっていた盗っ人三人衆だったが、今日は酔っ払らわないようにセーブしていた。
 そして鰻重が出てくると嬉しそうに蓋をあける。二段重ねで肉厚の香ばしい鰻がピカピカの銀シャリにのっかっていた。
 勿論肝吸いに香の物付きだ。
「うめぇ! 」
 親分が一口食べて、雄叫びをあげると全員ががつがつ食べ始めた。
「オネーサン、冷酒追加ぁ」
 思わず一がオーダーするのを親分が制しした。
「な、なし、今のなし」
 ペシッ!
 一の頭を小突いた。
「いてっ」
「アホか、これが下見の最後のチャンスだぞ」
「すんません」
「オネーサンビール、…」今度は二が声を上げる。
「なし、なし、今のなし! 」
 ペシッ!
 二の頭を小突いた。
「いてぇ」
「馬鹿、また朝までコースになるじゃないか、調子に乗るの辞めろってぇの」
「へい」

 ──そして三人は鰻重をかっこんだ。

「食ったかぁ」

『へい、ご馳走さまです』

 そしてお会計を済ませて店を出て、赤ら顔でアーケードを鬼王神社方面にむかって歩くと、もう既に夕方近くなっていた。
 そしてアーケードの外れまで来ると、大通りに突き当たった。
 大通りを左に曲がり、しばらく行った交差点を右に、その先を左にいくと遠くに鬼王神社の鳥居が見えてくる。
 その手前にあるのが小学校だ。
 神社の境内を抜けた裏道の方がよっぽど近いのは一目瞭然だ。
「親分、こんなところに小学校があったんすね」一が言った。
「そうだな、全く気がつかんかった」
 三人衆は校庭をグルリと取り囲むフェンス沿いに校門まで来ると立ち止まった。
 校門は既にオートロックがかかっており児童は誰もいない。随分と日が落ちて、月が姿を現していた。
「おい一、あのチラシ見せてみろ」
「へい」
 一はズボンのポケットからくしゃくしゃのチラシを取り出すと、広げた。
「うむ、同じ学校名だ。間違いないな」
「そうでやんす」一がにやける。
「また、鬼もち買っていいすかぁ! 」二が物欲しそうに訴える。
「お前また、腹減ったのかぁ! 」
 親分が大声を上げる。
「いえね、甘い物は別腹っす」
『確かに』
 そして、鳥居にまっすぐにつながる表参道の出店通りへ入っていった。 こうした表参道も中道商店街の一角になる。アーケード街、表参道、ビル街の商店街や、『子犬のさんぽみち』など、中道商店街は多様な顔を持っていて範囲が広い。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ようやく死ねた吸血鬼、転生したら動画配信者にさせられた件

ウケン
ファンタジー
「……もう動画とか……見たくないッ!!!」 古(いにしえ)から生きてきた不死身の吸血鬼の男(チート級最強生物)は、YouTubeや動画のサブスクを観る毎日。 かつては知り合いや友と呼べる人間も少しだけいたが、全員老人になり、そして死んでいった。 その内、生きる気力も無くなり、食って飲んでを繰り返した結果、髭ボーボーでものすごい肥満体になる。 あまりの人生の虚しさ、孤独感にいつも死にたいと願っていた男だが、ついに優秀なエクソシストが現れて、ようやく『死ねた』。 (……やったーー!!!ついに……!) やっと死ねた吸血鬼は、人間が言う『あの世』に期待感を寄せながら、自分を消し去る光の中へ飲み込まれていく。 ーーーそして、目を覚ますと、吸血鬼の男は、その『不死身の特性』そのままに、異世界に転生してしまっていた。 (……なんで!?) その異世界で仲間になった、男勝りな美少女カトリーナ。 彼女は異世界で『底辺動画配信者』として活動していたが、吸血鬼の男のモンスター狩りや戦闘の動画を『ライブ配信』していた。 その結果、男とカトリーナは世界中から注目される人気動画配信者となってしまう。 さらに婚約破棄された令嬢、そのメイド、反社のような司教など、次々とクセのある仲間が増えていく男。 ーーーそして、異世界の中で吸血鬼の男の過去を紐解くと、色々な真実が明らかになっていく。 ギガントモンスター、最強の海賊、ヤバい大司教、究極の魔王など、立ちはだかる敵と仕方なくバトルするも、その様子は全世界に『中継』されている男。 果たして死を願い続ける不死身の男は、今度こそ異世界で『死ぬ』ことができるのか? 基本毎日更新です。

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀
ファンタジー
 ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。  しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。  そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。  対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

処理中です...