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第2章

中道商店街の人々 4

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 と、隣のビルの三上伸 みかみしんがホウキとチリトリを持って、エントランスから出てきた。しんもかえでと同級生で、左のビルの一室に住み、一階でホストクラブを経営している。
 仁とタイプは違い、優しいタイプのイケメンだがまだ独り者だ。

 朝のこの時間、店の前を掃除してコンビニに行くのが日課だ。

「お、もも、さくら、保、いってらっしゃい」
『おはよう』3人が声を揃える。
「伸さん今日も二日酔い? 」保がいう。
「ああ、頭痛てぇや」
「飲み過ぎに気をつけてねー」
「ありがとうよ」
 3人は伸の店の前を走り抜けていった。
「ふん、このウワバミ男は体だけは丈夫だから、殺したって死なない! ガキの頃から食えない奴だったからな」
 じんが呟く。
 だが、しんには聴こえていた。
「なんだと仁、独り言はもっと小さな声で言いやがれ、久しぶりにボッコボコにしてやろうか? 」
「うっせー伸、ボッコボコにされてたのはお前だろうが! 最後にはいつも辞めてーって泣き言言いやがってよ」
「なんだと仁、やるのかこの野郎」
「おうよ伸、上等だ」
 と、キャバ嬢たちが声をあげる。
「きゃー伸さん私をボッコボコにしてー」
「いやいや、私ー今から部屋に来てー」
「ダメよ伸さんは私のものよー」
「伸さんにならボッコボコにされたいわー」

 黄色い悲鳴が湧き上がると、伸は真っ赤になってエントランスに駆け込んだ。
 伸は女好きのくせに素面しらふだと照れ屋なのだ。
 仁はそんなキャバ嬢に向かって顔を上げる。
「俺の方がいい男でしょう、社長の俺が相手にしてやろうか、仕方ない、私の胸に飛び込みなさい」
 キャバ嬢たちは一斉に冷たい視線を投げかけると、バルコニーのドアを締めて中に入ってしまった。

「……冷たいのね」

 仁はそう呟くとエントランスに戻っていった。
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