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第2章

中道商店街の人々 3

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 初めてこの辺りに来た人には、ビルの奥に小さな公園のような大きさの庭があって、そこに洋館があるとは分からないだろう。
 なぜなら、この敷地の西側には10階建の町役場が建てられ、北側には町の備蓄倉庫が建てられ、東側には10階建のオフィスビルが並び、南側には門に隣接した10階建の二つのビルが建っているのだ。
 つまり、敷地の周りがすっぽりビルに囲まれている。
 外からは一切中の様子がわからない。
 そう、中庭のような作りになっているのだ、だから地元民はこう呼んでいる。

 ──中道商店街のパティオ。

 それだと陽が入らないように思えるが、そこはごんちゃん、四方の建物の屋上にコンピューター制御の反射板を設置して、中に光りを取り込む仕組みをつくった。反射板は上下左右全方向可変自在なだけでなく、凸面鏡や凹面鏡にする事もできるのだ。
 だから、明るくするのも暗くするのも自由自在。

 普段は陽あたりよくしてるのだが…。

 シャッターを出て、右のビルの二階以上は住居になっていて、一階には新垣仁 いながきじんの経営するキャバクラが入っている。
 息子のたもつはももと同級生だ。


 ──ダダダ…

 仁と保は、いつも競いあうように最上階の自宅マンションから階段を走って降りてくる。
 仁に言わせると体力作りの一環なのだが、保はよくわかんないが付き合ってあげている、仁があまりにも嬉しそうだから…。

 ──バン!

 エントランスに降り立つと自動ドアのステップを踏む。
 今日は保が踏んだ。
「うわぁ! またやられた」
「父ちゃんおっそー」
 仁は悔しい。

 二人して外に出ると、ももとさくらが待っている。

「たもっちゃん、仁さんおはよう」
 ももがそういうと満面の笑みになる仁。
「ももちゃーん、さくらちゃーん今日も保をよろしくねー」
「おはよう! 」さくらも挨拶する。
「おはよう、行こう! 」
 保がそういうと、二階三階を借りているキャバ嬢たちが数名バルコニーに出てきた。
「きゃーたもっちゃん、いってらっしゃい」
 口々に声をかける。
 仁はかえでと同級生で幼馴染、32歳の精悍なタイプのイケメンだ。その子どもの保はやはりイケメンの素質を開花しつつある。そのため昨今ではキャバ嬢たちのアイドルと化していた。
 すると仁は大声をあげる、いつもの事だ。

「ようし、今日もいくぞーせーのー」

『勝つべし!!! 』

 その場にいる全員で、声を揃えると拳を天に振り上げた。もも、さくら、キャバ嬢、保も全員だ。

『いってきまーす』
『いってらっしゃーい』

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