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第1章

鬼王神社の宝玉 6

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 11:00になって盗っ人三人衆はそろりそろりと境内を抜けて神殿に向かった。
 昨日の昼間に下見に来ているので、神殿に鍵がかかっていることは分かっていた。
 しかし、二は鍵の緊急業者を経験していたので、カバンにいれた鍵開け七つ道具を手にしている。
 一は元建設現場で働いていた経験があり、手にはバッテリー稼働の電動工具を持っていた。しかし、電動工具は音が出る。できることなら使いたくなかった。

 ──賽銭箱の横を抜け、神殿の縁を上り、真っ赤な木製の格子扉に近づく。

「おい二やれ」周りに誰もいないのを確認すると親分は言った。
「へい」そそくさと前に出て神殿の鍵を見つめる。
 巨大な南京錠だ。
「親分任しといください、チョチョイのちょいだ」
 と、二が南京錠を手にするとカチリ、妙な金属音がした。
「あきました」
「はえーなおい、そんなにお前は腕があるんか?」
「いえね、勝手にあきました」南京錠を取り外し手に持っている二。
「勝手に…どうゆうこっちゃ? 」
 と、一は扉を動かす。ギギギ…格子状の真っ赤な扉が動く。
「親分、動きまっせ」
「へ…」


 その頃、権三の息子茂は自宅のリビングでコーヒーを飲んでいた。身重の妻かえでは、既に寝床についている。
 茂は35歳、かえでは32歳、二人の間にはさくらともう一人、小学校四年生になるももという娘がいる。
 茂はなにやら神社からの波動を受けていた、そして、キーンという耳鳴りがすると、今まさに神殿に入ろうとしている不審な3人のイメージが頭に浮かんできた。
「はて、何者? 」
 茂が静かにそう呟くと、背後で気配がした。
 ハッとして振り返ると、そこには、上下ジャージに着替えたももが立っていた。
「もも、どうしたこんな時間に…」
「さくらのところに行ってくるね」
「もも、さくらって、今日はお泊り会だぞ」
「鬼王神社の緊急事態でしょ」
「もも、見えたか? 」
「もち」
「そうか…」
「うん、さくら一人じゃ心配だから」
「しかしな…」
 ももは茂の返事も聞かず、玄関に行くと靴を履いて飛び出して行った。

 リビングに一人残った茂は、スマホを手にすると、権三に電話をかける。
「もしもし、父さん、ももがさくらのところに…」
「そうか、行ったか、心配すんな任せとけ」
「はあ」
 茂は電話を切ると、ゆっくりとコーヒーを飲んで呟いた。

「心配なのは、むしろ不審者…」
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