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第1章

鬼王神社の宝玉 1

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 鬼王きおう神社を取り囲む、真っ暗な鎮守の森に潜む怪しい人影が3つ、しゃがみこみ小さくなり、境内に隣接した鬼王幼稚園を恨めしそうに見ていた。
 もう辺りは暗いのに、いつまでたっても幼稚園が終わらないのである。
 親分が言う。
「いつまで大騒ぎしてるのかね」
「ぐー」
 子分は返事の代わりにいびきを返し、もたれかかってきた。
 ──ぺしん! 頭を平手打ちする親分。
「こらいち、親分にもたれかかって寝るとは何事だ! 」
「もう6時間もこんなところにいるんですよ、暇で暇で寝ちゃいますよ、ああ腹減ったす…」
 一は何の反省もなくけろりと言った。
 人が少ない時を見計らって、境内に忍び込んだのだが、そのうち園児やら、保護者やらが次々と入ってきて、仕方なく森に隠れると、身動きがとれなくなったのだ。神殿に行くには、境内を横切らないといけないので、見つかったら厄介だ。
 すると…
「ぐー」
 今度は反対側でいびき、そしてもたれかかってくる体。
 ──がん! 反対側を向いて頭をこづく。
「うひゃー痛てぇ」
「ばか、、静かにしろ、俺たちゃ潜んでいるんだぞ、暗闇に! 」
「そりゃ、知ってますけどね、あー腹減った」
「全く、お前たちはやる気があるのか、こんちきしょう」
「ありますよ、ありますから、蚊に刺されようと我慢してるんじゃないっすか…」一が答える。
「ふん! 」
「それにしても何やってるんですかね、あいつら」
「お泊り会に違いねぇ」親分が答える。
「あーそういや、幼稚園の頃やったなぁ懐かしい…」二が答える。
「こんな時にぶつかるなんてついてねーなー」一が言う。
「ふん、しょせんガキと女の先生だ、寝ちまえば起きねえよ」
「りょ、りょうかい…ぐー」
「お前らちゃんとしないと分け前やらんぞ!」

 ──シャキーン! 背筋を伸ばす一と二。

「「了解しました。親分についていきます」」
「ふん! 」呆れ顔の親分である。
 3人は神殿に置かれた御神体を盗みに来ているのだ、神をも恐れぬ不届者たちである。
 実はある一部の泥棒仲間で、鬼王神社の御神体は有名だった。
 ソフトボール大の宝石で、売れば何億にもなるらしい、それだけでなく、御利益は半端なく、手にした者は大金持ちになるという。
 現に鬼王神社の氏子総代は大金持ちだ。
 親分と子分一、二は無謀にもこの宝石を狙っているのだ。
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