『ブラックボックス』

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〜最終章〜

181.『出来ること』

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みつれとよつばが参戦し、戦場と化した埠頭。


みつれはハナ。
リンはシロサキ。
しおんはユウゼン。

それぞれの戦いが繰り広げられる。


一方、カエデを保護したよつばは埠頭を脱出すべく行動する。





よつ「カエデちゃん!!今すぐここから離れるよ!」



よつばはみつれのバイクを起こし、エンジンを掛ける。


カエ「は、はい!」


カエデはよつばの後ろに乗り、スロットルをまわした。


みつれ達から離れていくよつばとカエデ。



よつ「とりあえず安全な所へ!しっかり掴まって!!」


よつばはスロットルを全開にまわし、前輪が軽く浮きながらも前進する。


コンテナがならぶ埠頭内を走る。


すると、しおんとユウゼンが対峙してる横を通り過ぎるよつばとカエデ。


しお「ッ!?」


バイクに乗ったよつばとカエデは猛スピードでしおんから遠のいた。


しお「((さっきの…よつばさんとカエデちゃん……))」


よつばが無事なこととカエデを無事に助け出せたことに、しおんはホッと安心した。


ユウゼンも走り去る2人の姿を確認した。



ユウ「・・・どうやら助け出したようだな。」


ユウゼンは少し安堵の表情をみせた。


しお「・・・父さん。」


ユウ「まさかシロサキがここまでするとは思っていなかった。……『BB』では子どもに危害を加えるのは御法度だからな。」


しお「・・・じゃあなんであの時、防衛大臣の親族を人質にとった!?あの家族にはカエデちゃんと同い年の男の子がいた!知らないとは言わせない!」


数ヶ月前、テロ組織『BB』は防衛大臣の親族を誘拐し、総理大臣邸を爆破したテロ事件を起こした。

その親族には、当時カエデの恋人だった少年もいた。



ユウ「・・・あれは特例だ。あの任務では防衛大臣の辞任と政府に傷を残すのが目的だった。しかし、人質に関しては絶対に殺さないよう号令が出ていた。」


ユウゼンは構えを解き、コンテナにもたれかかる。


ユウ「・・・しおん、俺は組織を裏切った。確実に殺される。俺が死んだ後、次に殺されるのはお前達だ。」


しお「なら、殺される前に組織を潰せばいい。」


即答だった。


しお「僕たちは組織を潰すために便利屋『カモミール』をつくった。父さん、僕たちと組んで組織を潰そう!」


思いもしなかった言葉にユウゼンは度肝を抜かれた。


ユウ「・・・しおん……」


しお「もちろん、父さんがやってきた事は許されない事だよ。でも今は協力してこの状況を打破しないと!」


ユウ「・・・残念だがそれは出来ない。」


ユウゼンはしおんの提案を断った。



しお「なんで!?どうして!?」


ユウゼンはスマホをみてなにかを確認した。


ユウ「・・・随分早かったな…」


しお「・・・?どういうこと?」


その瞬間、ユウゼンの肩から血が吹き出る。


ユウ「グッ!!……上だ!伏せろ!!!」


しおんは一瞬何が起きたのか分からなかった。


しおんはわけのわからないままコンテナの陰に身を隠す。



しお「どういうこと!?何が起きてるの!?」


ユウ「グッ……ヤツらが来た……」





・・・時を同じくして、
よつばとカエデは埠頭の出口付近までたどり着いた。



よつ「もう少しで出れるッ!………ッ!?」



よつばは前方に車が止まっているのに気がついた。

その車から女が出てきて、銃口をこちらにむけて発砲した。


弾はバイクの前輪に当たり、コントロールを失う。


よつ「ヤバッ……!!」


バランスを崩したよつばはカエデとともに放り出された。


バイクは倒れて地面にスライドしていき、コンテナに衝突した。


よつ「く………カエデちゃん!大丈夫か!?」



カエ「うっ………は、はい……」


銃を撃った女がよつばとカエデのほうに歩いてくる。



カエ「・・・あっ……あの人………」


その時、カエデは気づいた。


銃を持ってこちらに歩いてきている女が、公園で出会った人だということを。



?「まさかこんな場所で再会するとはな……。」



女もカエデに気づいたようだった。


よつ「なんだ……知ってるの!?カエデちゃん!」


よつばはカエデに質問した。


だが、カエデの返事が返って来る前に、よつばは女の異様な雰囲気を感じ取って察した。


よつ「((間違いない……アイツがあの『リカ』だ……))」




カエデは信じられないような顔をして言う。


カエ「こ、公園で……一緒に子どもたちをみていた人………」



?「・・・残念だよ。私もこんな場所で君とまた出会いたくは無かった。」


女は銃口をむけて引き金に指をかける。



その瞬間、1台のワゴン車が猛スピードで現れた。


ワゴン車は女の元へ猛スピードで向かってくる。



?「ふっ…来たな。」



女はワゴン車にむかって銃を撃つ。


ワゴン車は女を轢く勢いで突進するが、女はワゴン車の突進をかわした。



ワゴン車は急ブレーキをかけて停止する。


降りてきたのはみつれだった。



よつ「みつれさん!?」



みつれの手には銃が握られていた。


みつ「お前、リカだな!?」



女は不敵な笑みをうかべ、答える。


リカ「あぁ。会いたかったぞ、便利屋。」



みつれは素早い動作でリカにむけて銃を撃った。


リカは弾を避け、撃ち返した。


互いにコンテナの陰に身を隠し、激しい銃撃戦が始まる。




よつ「くっ……カエデちゃん!立てる!?ここを離れるよ!!」


よつばはカエデを立たせ、急いでその場から離れようとする。


カエ「ま、待ってください!!」


カエデはよつばの手をはらう。


よつ「ここは危ないよ!流れ弾が当たるかもしれない!」


カエ「でもッ!!」


痺れを切らしたよつばはカエデの胸ぐらを掴んで、カエデに被弾しないようにコンテナの陰に移動した。


よつ「おい!アレ見てわからねぇのか!?アニメやドラマじゃねぇんだぞ!!マジで死ぬぞ!!」

しおん以外に聴かせない口調にカエデは少し驚いた。


よつ「ワタシはこういう事態は度々経験してきた!武器もなにもねぇのに居ても死ぬだけだぞ!!」


カエ「わ、わかってます。」


よつ「いや、わかってねぇ!厳しいこと言うけどな!お前が出来ることはここには無い!!!」


よつばの言葉にズキっと刺さるカエデ。


自分は便利屋『カモミール』の一員。
でも自分に出来ることは無い。足手まといまである。

しかし、よつばの言葉からあることに気がついた。


カエ「・・・わかりました。ここから脱出します。」


よつ「わかってくれたならよかった。ちょっとキツく言い過ぎたね…ごめん。」


よつばは掴んでいたカエデの胸ぐらをそっと離した。



カエ「いえ、私こそすみません。…でもよつばさんのおかげで気づけました。私に出来ることを。」


えっ?っとよつばはキョトンとした。



カエ「よつばさん、私をあの雑居ビルまで連れてってくれませんか?あそこにはしおんさんから預かったタブレットがあります。襲われる時に咄嗟に隠したんです。そのタブレットで私に出来ることをします!!」



今のカエデの姿をみて、よつばは思い出した。



カエデは子どもだけど、ただの子どもじゃない。
便利屋『カモミール』の立派な一員なんだと。




よつ「・・・わかった。けど距離があるからとりあえず安全な場所までは連れていく。後はカエデちゃんに任せていい?」

よつばはカエデに手を差し伸べる。


カエ「はい!お願いします!」



カエデはよつばの手を掴んだ。
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