『ブラックボックス』

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〜最終章〜

177.『未完成』

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公民館の廃墟の奥で、2人の闇医者が対峙する。


テロ組織の闇医者 エトはカオリの仕込んだ麻酔薬をくらい、身体が動かなくなっていた。



エト「あ?愛する娘?……お前のペットのことか?」


カオ「これ以上はアナタに話す気はありません。さぁ、どうしますか?」


カオリはエトの腕にメスを這わし、浅く切りつける。


エト「馬鹿にするな。クスリを渡したら私を殺すんだろ。だったら死んだほうがマシだ。リカ様に迷惑は掛けられない!」


エトは死を覚悟していた。
しかしカオリはエトを見て嘲笑う。


カオ「ふふっ……アナタが死んだら次はリカです。アナタが死んだ後、アナタのクスリを使って私のペットにしてあげます。」


カオリはそう言うとエトの顔色が変わった。


エト「て、てめぇ……ッ!」


カオ「安心してください。しっかり可愛がってあげますよ。アナタがしたかったようにね……」


カオリは不気味な笑みを浮かべながらエトを見下す。


エト「ま、待て!リカ様に手を出すな!!」


カオ「それはアナタ次第です。クスリを渡したらリカには手は出さないと約束しましょう。」


エト「・・・わかった。私の胸ポケットにある。」


カオリはエトの胸ポケットを確認する。
そこには袋に入った錠剤があった。


エト「それだ。だがそれを使っても刑事は戻らないぞ!」


カオ「えぇ、分かってます。ただ、このクスリが本物か試す必要があります。」

カオリはクスリを1錠取り出し、エトの口にいれた。


エト「んぐっ!?」

カオ「さぁ、どうなるのか私に見せてください。医者としてどんな作用が起こるのか興味があります。」


カオリはまじまじとエトの様子を観察する。


エト「く、くそ………がッ!?」


エトは苦しそうにまぶたを見開くが身体は動かずただ天井をみているしか出来なかった。


エト「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッ……ガア゙ア゙………グゥ……」


獣のような唸り声をあげるエト。
鼻血を出し、口からは唾液が垂れる。



エト「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙……リ……リカ……さま………あぁ…リカさま……」


エトの目は焦点があっておらず、まるで天井のその奥を見ているようだった。



エト「ま、待って!!行かないでください!!あぁ……リカ様……リカ様……」


カオ「なるほど、幻覚ですか。恐らく麻薬でも入れてるんでしょうか。」


顔を少し動かせれるようになったエトはカオリのほうを見た。


エト「あぁ…リカ様……そこに居たんですね……」


エトはカオリに向かって言った。


カオ「おやおや、私がリカに見えてるんですかね。」


カオリはしゃがみ、エトの顔を見つめる。


カオ「気分はどうですか?エト。」


エトにはカオリの言葉がリカの言葉に聞こえていた。


エト「く、苦しいですが…リカ様がお傍にいれば……なんてことはありません……ッ。」


エトはカオリが見たことのない笑顔をした。


カオ「ふふっ、そんな顔が出来るんですね。しばらく休みなさい、エト。私は何処へも行かないから。」


エト「あ、ありがとうございます……リカさま。」


するとエトは気を失った。


カオ「・・・これはダメですね。未完成もいいところです。お粗末過ぎます。最悪死んでしまいますねこれは…。」



カオリは袋に入った錠剤を見て呟いた。




カオ「さて、しばらく動けないようにしておきましょうか。」


カオリはエトを引きずって、再び廃墟の奥へと行った。



カオリは公民館の医務室のような場所に移動し、気を失ったエトの身ぐるみを全て剥がした。


カオ「持ち物はスマホ2台、鍵、クスリ、銃、ロケットペンダント……単独行動にしては軽装備ですね。」


カオリはエトのスマホをみる。
すると着信がはいった。


カオ「・・・」


カオリはスマホを投げた。


カオ「エトにはまだ聞くことがありますからねぇ。まだ見つかるわけにはいかない。」



カオリはエトを見てニッと笑った。







投げられたスマホの着信画面には『リカ様』と表示されていた。






リカ「・・・出ないな。」


エトに電話を掛けたリカはアジトの自室にいた。
そこにはシロサキもいた。


シロ「アイツが電話に出ないとは珍しいですね。お前もそう思うだろ?ユウゼン。」


ユウ「・・・えぇ。」


シロサキの後ろにはユウゼンが居た。


リカ「・・・ユウゼン、お前が何故ここに呼ばれたか分かるな?」


ユウゼンはゆっくりと頷く。


シロ「ちっ、馬鹿な男だよ。」



リカ「お前は組織に対する裏切り行為を行なった。いくらお前といえども見過ごすわけにはいかない、裏切り者は排除する。それが組織の決まりだ。」


リカは椅子から立ち上がりタバコをふかす。


リカ「だが、お前は組織においてかなりの貢献、実績がある。だからお前にチャンスをやる。便利屋を潰せ。そうすれば今回のことは不問にしてやる。」


ユウ「・・・わかりました。」


ユウゼンは頭を下げる。


シロ「・・・ハナが便利屋の事務所にヤツらを呼ぶよう指示を出した。そこで全員殺せ。」


ユウ「・・・」



ユウゼンはゆっくりと頷き、部屋を出た。




シロ「・・・ホントに裏切り行為を不問にするんですか?」



リカ「・・・いや、不問にする気は無い。裏切りは絶対許さない。」


リカはタバコを灰皿に押しつける。



リカ「ユウゼンがこの後どう動くのかはだいたい察しがつく。恐らく息子だけでも逃がす気だろう。そこでシロサキ、お前の出番だ。」



シロ「息子を殺してその後ユウゼンを始末する……ってことですね。」



リカ「あぁ。組織を裏切ったことを後悔しながら死んでもらう。」


シロ「わかりました。」



シロサキは一礼し、部屋を出た。


リカ「・・・」


リカはため息をつき、椅子に座った。



シロサキはハナに連絡をとる。


シロ「ハナ、そっちにユウゼンが行く。合流しろ。」


ハナ「かしこまりました、シロサキ様。」


シロ「・・・お前のやるべき事は分かっているな?」


ハナ「はい。リンを生け捕りにすることです。」


シロ「OKだ。間違っても殺すなよ。私もそっちに向かう。」



シロサキは通話を切った。



シロ「さぁ…決着つけようか、クソ刑事。」


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