『ブラックボックス』

うどん

文字の大きさ
上 下
174 / 190
〜最終章〜

168.『非人道的』

しおりを挟む



闇医者のカオリとよつばが協力してくれることになった『カモミール』一行は、エトが作り上げたクスリ『オビディエンス』について探る。


エトの情報を得るために、しおんはダメ元でユウゼンにメッセージを送る。


よつ「なぁ、この数字はなに?」

よつばはしおんが打ち込む数字の羅列を聞いた。


しお「父さんと僕だけの暗号だよ。昔、父さんが作った暗号なんだ。」

しおんは暗号をよつばに教えた。

しお「前に父さんから突然この暗号が送られて来たんだ。返信がくるかはわからないけど、これなら組織の人間に僕とやり取りしてるのはバレないと思う。」


よつ「なんでアンタの父親は暗号で送ったりしたんだ?敵じゃないのか?」


しお「んー……それが正直分からなくなってる。前に送られてきた暗号には組織にとって不利なことを教えてくれた。組織の人間からみたら裏切り行為だよ。」


よつ「よく分からないな。組織を抜けた訳じゃないんだろ?」


しお「うん。けど組織のやり方が気に入らない部分があるみたいなんだ。父さんのおかげで『ドッグオーディション』を潰せたし、父さんもそれを望んでた。」

しおんは暗号を打ち終えた。

しお「よし、送信っと。」

よつ「なんて送ったの?」


しお「エトについて教えて的なことを送ったよ。まぁダメ元だけどね。流石に教えてはくれないと思う。」


よつ「そうだった場合、相手は警戒するんじゃないのか?ワタシたちがエトを探してるのがバレるぞ。」


しお「それはそれで構わないよ。それでなんらかの動きがあればそこから探ればいいし、接触してきてもよつばさんが居るしね。」


しおんはニコッと笑った。


よつ「ったく、ワタシをなんだと思ってんだ……」


しお「仮に父さんが直接来ても、その分話しやすくなる。襲撃されるデメリットもあるけどそれなりのメリットもあるかもしれない。」


よつ「・・・前のアンタの怪我…父親にやられたんだろ?デメリットのほうが強い気がするけど……」


しお「まぁ向こうの出方次第だけどね。……よつばさんはあれからどうしてたの?元気してた?」


よつ「あぁ、ご主人様にずっとついてたよ。相手がヤクザばっかで少し疲れるけどね。」


しお「大変だねぇ。けど元気でやってるならよかった。」



するとピコンっとPCが鳴った。

しお「ッ!?返信が来た!」


しおんはメッセージを開く。


よつ「なんて書いてあるんだ!?」

しおんは送られた暗号を読み上げる。


しお「・・・『それより用心しろ。シロサキがお前らを始末しに動き始めるぞ。』…て書いてある。」


しおんは生唾をのんだ。


しおんは席をたち、みつれに伝えるため部屋に行く。


しお「みつれさん!父さんから返信が来た!」


みつ「・・・なんてきたんだ?」


しお「エトのことは教えてくれなかったけど、シロサキが僕らを始末しに動き始めるって……」


みつ「・・・わかった。用心するようにリンにも伝えておく。」


みつれは立ち上がった。


みつ「『オビディエンス』のこともだいたいわかった。だがやはり入手経路を辿るのは難しそうだな。」


カオ「そのクスリには一般に入手出来る物を配合して作ってます。つまり専門知識があれば誰でも作ろうと思えば作れます。」


しお「・・・そうですか…。じゃあ別の方法を考えるしか無いですね……」


するとカエデが口を開いた。


カエ「あの……ひとつ質問なんですけど、カオリさんはこのクスリを作れるんですか?」

カエデは恐る恐るカオリに質問をした。


カオ「えぇ。作ろうと思えば。」


カエ「あまりいいことではありませんが、カオリさんがこのクスリを作ってハナさんに飲ませれば元に戻る可能性があるんじゃあ……」


まさかの発想に全員が驚いた。
皆の様子に慌てふためくカエデ。


カエ「や、やっぱりよくないですよね!ごめんなさい……」


みつ「いや…ハナさんはこのクスリで精神を壊されてシロサキに再構築されてる。それをもう一度こちらで再構築すれば……」


カオ「面白い発想ですね。非人道的には非人道的にを…ですか。ふふふッ。」


カエ「や、やっぱりダメです!ごめんなさい。忘れてください。」


カエデは手をブンブンと振り、発言を撤回しようとする。


しお「・・・確かにカエデちゃんの言う通り、非人道的でよくないけど、やる価値は充分あるかも。…カオリさん、このクスリを飲ませてハナさんが戻る可能性はあるんでしょうか?」


カオ「断言はできませんが、可能性はあるかもしれませんね。」


みつ「・・・その方法をするにはハナさんを拘束しないとダメだな……」


一同はまた考えはじめた。

ハナを拘束することはかなり難しい。
警察を使い、逮捕しようとしても居場所が分からない。


シロサキを狙い、捕まえればハナは出てくる。

ハナを拘束するにはシロサキを狙うのが妥当とみつれとしおんは考えた。


しお「・・・みつれさん」


みつ「あぁ…。やっぱりシロサキを捕まえるしかない。シロサキを捕まえないとハナさんの身柄を確保するのは無理だ。」


しお「そうだよね。同じ考えだよ。」


2人とも意見は同じだった。


みつ「・・・カオリさん、『オビディエンス』を作ってもらえませんか?私たちはシロサキを捕まえてハナさんの身柄を確保します。」


カオ「ふふっ、わかりました。……よつば、みつれさんたちに付いてなさい。クスリの調合は私ひとりで十分です。」


よつ「かしこまりました。ご主人様。」


自分の発言で方向性が決まってしまったカエデはオロオロしていた。


カエ「ちょ、ちょっと待ってください!本当にそれでやるんですか!?」


みつ「あぁ。カエデ、お前の発想は凄い。お前のおかげで前に進める。」


しお「そうだよ。流石カエデちゃん!」


カオ「子どもの発想は大人の私たちより柔軟ですからね。面白いです。」



カエ「えぇ………」


カエデは褒められることに悪い気はしなかったが、ずっと困惑していた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

N -Revolution

フロイライン
ライト文芸
プロレスラーを目指す桐生珀は、何度も入門試験をクリアできず、ひょんな事からニューハーフプロレスの団体への参加を持ちかけられるが…

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

処理中です...