『ブラックボックス』

うどん

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〜第5章〜

128.『オーナー』

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翌日の朝。

みつれとリンは『カモミール』の事務所に戻った。


しお「みつれさん、リンさん。おはようございます。」


リン「おはようしおん君…。」

みつ「おはようしおん。何してるんだ?」


しおんは徹夜で作業をしていた。

しお「昨日カエデちゃんと廃ビル跡地に行って来て、カエデちゃんが僕のポータブルデバイスを見つけてくれたんだよ。」

しおんは修理中のデバイスを2人にみせた。

しお「これを直せばバックアップしたデータを見れるかもしれない。組織の情報がわかるんだ。」

みつ「ユウゼンのPCのデータか!?確かシロサキに破壊されたんじゃ…」

しお「幸い基盤は少し損傷してるけど直せば復活するかも知れない。データさえ見れればハナさんを助け出す大きな一歩になるかも。」

しおんは淡い希望を胸に修理を続けていた。


リン「しおん君……ありがとう……」

リンはしおんに礼を言った。

しお「どうしたのリンさん。らしくないですよ。」

しおんは明るく微笑んだ。


みつ「しおん、頼んだぞ。」

しお「データが残っているから分からないけど頑張るよ。」


しおんはいっそう気合をいれて修理に取り掛かる。


リン「・・・私は仕事に戻るよ。…みっちゃん…ありがとうね。」

みつ「あぁ、気をつけてな。リン。」

リンは事務所を後にした。


しお「・・・リンさん、だいぶ参ってるね。」

しおんはリンを心配した。


みつ「あぁ…。心配だ。」

みつれもしおんと同じ気持ちだった。


みつ「私はもう一度オキさんのところに言ってくる。一つ聞きたいことがあるんだ。」

しお「分かった。気をつけてね。」

みつ「行ってくる。」

みつれはオキの居る店に向かった。



リンが贔屓にしている店のマスター。
裏社会に詳しい情報屋でリンの協力者。


みつれはオキの店に到着した。


みつ「朝だからもしかしたら留守かもな…」

みつれが店の扉に手をかける。
鍵は空いていた。

みつ「すみません。」

みつれは恐る恐る店に入る。


するとオキが店の準備をしていた。


オキ「おや、みつれさん。おはようございます。今日は一人ですか?」

みつ「朝早くにすみません。一つお聞きしたいことがありまして。」

オキ「どうぞ。座ってください。」

オキは席に座るようにうながす。

みつ「失礼します。」

みつれは席に座り、オキはコーヒーを差し出した。


オキ「で?聞きたいことってなにかな?」

オキはグラスを拭きながらみつれに言った。


みつ「・・・オキさんは『ドッグオーディション』というのをご存知ですか?」

オキの手が止まる。
知っている様子だった。


みつ「・・・ご存知なんですね?」


みつれはオキを見つめる。


オキ「どこでそのことを?」
 
みつ「過去に私もそのオーディションに出たことがあります。」

オキは驚きを隠せなかった。

オキ「あなたが!?」


みつ「なにかご存知ありませんか?オーディションを開いてる場所とか。」


オキはしばらく沈黙する。


みつ「そのオーディションにハナさんが出される可能性があるんです。なにか知りませんか?」


オキは重い口を開いた。

オキ「あのオーディションは今はオーナーが代わって以前より完全極秘の会員制になっております。私は行った事はありませんが一応会員にはなってます。情報のためにね。」

みつ「今のオーナーは誰なんです?」


オキ「『トドロキ』…という人物です。」


みつ「ッ!?」


みつれは耳を疑った。

『トドロキ』は過去にみつれを組織に売った元軍人。
そのトドロキが今、ドッグオーディションのオーナーをしていた。


みつ「そのオーナーについて詳しく教えて貰えませんか?」

オキ「すまないけど…情報料は高いよ?なんせ極秘だからね…。」

みつ「構いません。教えてください。」

みつれは予めリンから渡されていた封筒をテーブルに置いた。

オキはその封筒を確認する。


オキ「分かりました。お話しましょう。」

オキは持っている情報をみつれに話した。


オキ「今の『ドッグオーディション』のオーナーである『トドロキ』という人物は、あなた達が追っているテロ組織の一員でした。」

みつ「『でした』?……どういう事ですか?」

オキ「テロ組織といっても彼は末端も末端。ほとんどテロ活動に関与しておりません。彼は組織の上層部から『ドッグオーディション』の管理を任されているそうです。」

みつれは絶句した。

自分と軍を裏切った見返りが、テロ組織の末端でテロ活動とは関係の無いところで活動している。
それもよりによって『ドッグオーディション』のオーナーを任されていることにみつれは怒りが込み上がる。


オキ「本人も不服だったのでしょう。『俺はこんな事をするためにいるんじゃない!』と愚痴をこぼしていたそうです。」

 みつ「・・・それで、今『ドッグオーディション』は何処で行われているんです?」


みつれは怒りを抑えてオキに質問した。

オキ「県境にある廃校舎で月に1回行われているそうです。」

みつ「廃校舎……。その場所を詳しく教えてください。」

オキはみつれに開催されている廃校舎の場所を話した。


オキ「今月はもう行われたので来月に開催されます。……行かれるんですか?」


みつ「もちろんです。そこでハナさんを助け出す。それとトドロキとも一度会いたい。」

みつれは席を立つ。


みつ「ありがとうございました。オキさん。」


オキ「来月の開催の日時が分かったら連絡しますよ。それくらいの料金を頂いたのでね。」

オキはみつれに微笑んだ。

みつ「ありがとうございます。失礼します。」


みつれは店を出た。


みつれはしおんに電話を掛ける。


しお「もしもし、どうしたの?」

みつ「しおん。すまないが少し遠くに移動するから事務所に戻るのは遅くなりそうだ。」

しお「それは全然構わないけど…なにかわかったの?」

みつ「手掛かりを見つけたかもしれない。今から送る住所を調べて欲しい。それとそのまわりの情報も調べておいてくれ。詳しいことは帰ってから説明する。」

しお「おっけー。わかったよ。気をつけてね。」


みつれは電話を切り、しおんに住所を送った。


みつ「よし。行くか。」


みつれはバイクに跨り、目的地を目指した。。。
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