『ブラックボックス』

うどん

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〜第3章〜

87.『〜裏切りの逃亡者編〜睡蓮』

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街の小さな葬儀屋。
そこでスイの葬式が行われていた。

しかし、スイに親族は居ない。
参列者はみつれ、しおん、よつば、カオリのみだった。


スイに手を合わせるみつれ。

他の3人も手を合わせる。

葬儀は粛々と行われ、火葬場へむかう。

みつ「悪いが火葬場へは私一人で行かせてくれないか…」

みつれは3人に頭を下げて頼んだ。

しお「わかりました。」
よつばとカオリも頷いた。

みつ「ありがとう。」

カオ「では私たちはカフェでお茶してましょう。」

よつ「はい。ご主人様。しおんさんも一緒に。」

しお「うん。」

3人は葬儀屋を出て近くのカフェに入った。


みつ「・・・ありがとう。みんな。」

みつれは火葬場へとむかった。




しお「あのみつれさんがスイを弔うって言った時は驚きましたよ。」

カオ「情でも湧いたのでしょうかね。」

よつ「・・・」

みつれを待つために3人はカフェで話をしていた。

しお「あんな悲しい顔をしたみつれさんは初めてみましたよ。あんなに恐れてた相手だったのに。」

よつ「・・・ワタシは少しわかるかも。」

カオ「分かるのですか?よつば。」

よつ「はい。なんとなくですが。」
よつばも元はカオリを敵と思っていたが今はカオリのことを愛している。
よつばはみつれと同じだと感じていた。


カオ「そうですか。確かによつばならわかるかも知れませんね。」
カオリはコーヒーを口にした。

しお「・・・カオリさん、よつばさん、今回はありがとうございました。」
しおんは2人に礼を言った。

カオ「お力になれてよかったですよ。まぁ私はなにもしていませんが。」

よつ「こちらこそありがとうございました。しおんさんとみつれさんのおかげでご主人様を助けれたし。」

よつばとしおんは見つめあった。
それをみたカオリはよつばとしおんの雰囲気を察した。

カオ「私は少し席を外します。2人はここでみつれさんを待ってあげてください。」

よつ「え!?ご主人様どちらに?」

カオ「少し野暮用です。ここでしおんさんと待っていなさい。」

カオリは席をたち、カフェを出ていった。

よつ「・・・ご主人様。」

しお「カオリさんについて行かなくていいの?よつばさん。」

よつ「ご主人様がここで待てと言ったんだ。待つに決まってんだろ。」

よつばは口調をかえてしおんにいい放った。

しおんはニコッと笑った。

しお「やっぱり僕はそっちのよつばさんが好きだな…。」

よつ「な、な、なに言ってんの!?」
よつばは顔が赤くなる。

今回の件で二人の仲は親密なものになった。
よつばも始めは意識してなかったが、ともに行動するにつれてしおんを意識するようになった。

けどそれももうすぐ終わる。
みつれを助け出したら、よつばはカオリの元に戻る。

しお「・・・よつばさん。」

よつ「な…なんだよ……」

しお「短い間だったけど、一緒に居れて楽しかったよ。」

よつ「ふっ……ワタシもだよ。」

2人は手を握りあった。

しお「みつれさんが戻ってきたら君はカオリさんの元に戻るんだね。」

よつ「そうだよ。ワタシは必ずご主人様の元に戻る。それは変わらない。」

しお「・・・寂しくなるね…。出来ればずっと一緒に居たかったけど…。」

しおんは寂しそうな顔をした。


よつ「・・・ワタシはご主人様のペット。それは死んでも変わらない。ワタシの全てはご主人様のモノ。…けど……」

よつばはしおんの目をみつめた。

よつ「しおんさんを想う気持ちは、ワタシだけのモノだ。」
よつばは優しい表情をしおんにみせた。

それは嘘偽りない彼女の本心だった。


しお「君を忘れない。いつまでもよつばさんを想う。」

よつ「ぷっ、なんだそのクサイセリフ。ドラマの観過ぎじゃないのか。」
よつばは思わず笑ってしまった。

よつ「ありがとう。しおんさん。」

するとしおんのスマホが鳴った。

しお「ん?誰だろ?…もしもし。………えっ!?本当ですか!?……はい。…はい。……ありがとうございます。……はい。失礼します。」

しおんは電話を切った。

よつ「どうしたの?」

しお「警察からだよ。リンさんが意識を取り戻したって。」

よつ「ッ!?本当に!?よかったぁ…」

2人は安堵した。
スイに2箇所撃たれて意識不明の重体だったリンがようやく意識を取り戻した。

しお「みつれさんが戻ってきたら報告しよう。」

よつ「そうだな。」

その後、みつれが来るまで2人は談笑していた。
まるで恋人同士みたいに楽しく笑いあった。




みつれは火葬場で火葬されるスイを待っていた。

みつ「・・・スイ……」
火葬場の近くの公園のベンチで座っているみつれ。

みつ「できるならもっとアンタと居たかったよ。スイ。」
みつれは空を見上げながら呟く。

屈辱を与えられ蔑まれた相手だったが、今は違った。

記憶を無くしていた時に見ていたスイの姿は本当に心の底から自分を愛してくれていたんだと感じていた。

スイも元々は自分と同じ事をされていた『犬』だった。
みつれとスイは同じだった。



スイ「ポ…ポチの家族の命を…奪ったのは……リカという女だ………」


みつれはスイの言ったことを思い出していた。

みつ「リカ………そいつが……黒幕…ッ!!」
みつれは拳をグッと握り締めた。

みつ「・・・アンタの無念は必ず晴らす。だから待っていてくれ。……愛してる。スイ。」

みつれは再び空を見上げて呟いた。

みつ「そろそろ時間だな。」
みつれは立ち上がり、火葬場へ歩いていった。


みつれが去った公園の池には美しい睡蓮の花が咲いていた。。。

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