『ブラックボックス』

うどん

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〜第3章〜

69.『私の娘』

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スイの逃走劇から一夜明けた次の日。

しおんはモニターに向かってキーボードを打っていた。

昨日のみつれのGPSを辿って、地下鉄駅とショッピングモールの防犯カメラをハッキングしてみつれとスイの姿をおっていた。

しお「・・・なにかおかしい…変だ……」
しおんは防犯カメラ映像をみて違和感を感じていた。

するとよつばが起きてきた。

よつ「おはよう…」

しお「よつばさん、おはようございます。もう動いても大丈夫なの?」

よつ「だいぶマシになったよ。すぐ治る。ワタシ身体は丈夫だからさ。…調べものか?」

よつばは椅子に座っているしおんの横に立った。

しお「うん。コレ見て。」
しおんはよつばにショッピングモールの防犯カメラの映像を見せた。

しお「昨日スイが逃げ込んだショッピングモールの防犯カメラ映像。人混みに紛れて出ようとしてる。この後ろにリンさんが近づいて行ってるね。」

しおんは指をさしながらよつばに説明する。

しお「リンさんがみつれさんの手を掴んだ後、スイがリンさんに気づいて発砲した。」

よつ「ん?なんかおかしいな…」
よつばもなにかおかしいと気づいた。

しお「気づいた?リンさんの反応もちょっとおかしいけど、みつれさんの様子がなんか変なんだ。」

よつ「初対面…みたいな反応だな…。リンさんも人違いみたいな反応してる。」

しお「そう。それにコレ見て。スイはみつれさんの手を握ってるんだ。」
しおんはスイとみつれの手元を指さした。

よつ「ホントだ…手を繋いでるみたいだな。まるで恋人みたいに。それになんかみつれさんの雰囲気が違う。」

しお「そこが僕も一番引っかかった。僕たちの知ってるみつれさんじゃないみたいだ。」

よつ「これは…どういうことだ……」

しお「分からない。リンさんもみつれさんの様子に気がついて反応が遅れていた。その隙を突かれて撃たれた…って感じだね。」

しおんは映像を止めた。

しお「リンさんなら分かるかも知れない。僕は今日病院に行ってみる。多分まだ面会は出来ないと思うけど…。」

よつ「ワタシは一度ご主人様に報告いれるよ。」

しお「わかった。ならこれを渡しとくよ。」
しおんは事務所の鍵を渡した。

よつ「いいのか?ワタシに貸して…」

しお「なに言ってんの。よつばさんは今『カモミール』の人間でしょ?だったら持ってないと。」
しおんはニッと笑った。

よつ「・・・そうだったね。ありがとう。」

しおんは病院へ、よつばはカオリの元へ。
2人は別々に行動した。






よつばはカオリが身を隠してる宿に向かった。


よつ「ご主人様!」

カオ「よつば。戻りましたか。……そんな感じでは無さそうですね。」
カオリはよつばの様子から察した。

よつ「申し訳ございません。みつれさんはまだ取り戻せていません…。」

カオ「・・・怪我してますね。みせなさい。」
カオリはよつばが怪我をしてるのに気づいた。

よつ「はい。ご主人様。」
よつばは服を脱ぎ、カオリに身体をみせた。

カオ「打撲ですね。なにしたんですか?」

よつ「・・・お話致します。」

よつばはこれまでの事をカオリに話した。


カオ「なるほど。それは災難でしたね。」
カオリはよつばを診ながら話を聞いていた。

よつ「だからもう少し時間が掛かると思います。すみません。」

カオ「かまいませんよ。待ってますから。」
カオリはそういうが口からは溜め息が漏れていた。


よつ「も、もしかして怒ってます?」

よつばは恐る恐るカオリにきいた。
雰囲気で察したのだろうか。



カオ「そうですね。テロリスト風情に『私の娘』がここまでされて何も感じないほど私は人間出来ていません。」



よつ「ご主人様…。」


カオ「徹底的にやりなさい。そして私の元に帰って来なさい。いいですね?」

よつ「はい!…それでご主人様、見てほしいモノが……」


よつばは例のショッピングモールの防犯カメラの映像をカオリにみせた。


カオリは現役医師だった頃、精神科医でもあったことから、カオリに見せればなにか分かるかもしれないとよつばはしおんに映像のデータを貰っていた。


カオ「・・・はっきりとは分かりませんが、記憶喪失とかの類いですかね。」

よつ「記憶喪失?」


カオ「元々みつれさんはスイに対して極度のトラウマを抱えてたはずです。あの時の様子からもそう見えました。スイに対する恐怖でいっぱいいっぱいな表情でした。でもこの映像のみつれさんは違う。別人のようですね。」

カオリは映像をみながら分析していく。

カオ「恐らくよつばのようなパターンではありません。薬かなにかで記憶障害を引き起こしてる可能性があります。そうでもしないとこのような表情になりません。」

よつ「・・・なるほど。」
よつばは少し納得がいった。

カオ「記憶障害には大抵なにかのキーワードや出来事がトリガーとなって記憶が戻る可能性があります。ただ、それでも戻らなかった場合はずっとそのままでしょう。」

よつ「・・・わかりました。しおんさんに報告します。ありがとうございました。」

よつばはカオリに深く頭を下げた。


カオ「よつば。相手はテロリスト。ヤクザと違って義理人情やルールなどは持ち合わせていません。気をつけなさい。」

よつ「はい!みつれさんを連れ戻して必ずご主人様の元に帰ってきます!!」

カオ「じゃあ行きなさい。」
カオリはよつばに痛み止め剤を渡して見送った。


カオ「・・・あんなに感情を揺さぶられるとは、私も変わってしまいましたね。」

カオリはフッと笑い、扉を閉めた。

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