『ブラックボックス』

うどん

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〜第2章〜

65.『〜ポチの鎖編〜糸』

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トラックとの衝突事故を起こし、
地下鉄に逃げ込んだスイ。

人ごみを掻き分けて奥へ進む。


スイ「とりあえず身を隠さないと……」
スイは出発する電車に乗り込んだ。


スイ「はぁ…はぁ…。とりあえず巻けたか…」
駅を振り返ると階段からリンが降りてきたのが見えた。

スイ「まだ生きてたか……」
スイはとっさに身を隠しその場を逃れた。


リン「くそっ!多分あの電車に乗ったな…」

リンはしおんに連絡する。

リン「少年!電車で逃げられたかも知れない!今位置情報確認出来る!?」

しお「ちょっと待ってください!……見つけました!高速で移動しています。電車ですね!」

リン「了解!駅で先回りする!ありがとう!」
リンは電話を切り、次の駅へ先回りをする。




スイはおぶっていたみつれを座らせる。

スイ「ポチ……。ぐっ…」
さっきの事故で腕から血が出ていた。
おそらくガラスで切れたのだろうか。

スイはみつれの横に腰を下ろした。

スイ「まだ…油断出来ないな……敢えて次の駅で降りよう……」

乗った電車は特急で次の駅までは約2分。
いくら警察でもそんな短時間では追いつけない。

電車に乗り続ければその分待ち伏せされる可能性があがる。
スイは次の駅で降りることに決めた。


スイ「・・・ポチ……。」
みつれはまだ気を失ったままだった。
目を覚ましたら記憶が戻ってるかもしれない。

スイは不安だった。


スイ「もう着くな……行こう。」
スイはみつれをおぶり、電車を降りた。

まだ警察は来ていない。
スイの読み通りだった。

スイ「((とりあえずどこかに身を隠そう…))」

スイは地下鉄を出ようと出口を目指した。



リンはスイが降りた駅へ車を走らせていた。

リン「緊急車両通ります!!」
サイレンを鳴らし拡声器を使って渋滞を抜けていく。

猛スピードで駅へ向かう。

スイは遠くのサイレンの音に気がついた。

スイ「もう来やがったか……」
スイは地下鉄駅から繋がるショッピングモールに入り、身を隠すことにした。


スイ「ここなら……とりあえずは……」
スイはトイレに身を隠した。

スイ「くそ……血が止まらない……」
スイはトイレットペーパーで血を拭った。

スイはベルトを外し、腕を縛った。

スイ「これからどうすればいい………ポチ……」
トイレの個室に2人。
スイは呆然としていた。

その時、みつれが目を覚ました。
みつ「うっ…あれ…ここは……スイ?」

スイ「ポチッ!大丈夫?」

みつ「うん…わたし…いつのまにか気を失ってたの?」

スイ「痛いとこは無い?大丈夫?」

みつ「うん。大丈夫。」

幸いなことにみつれは記憶がまだ戻っていなかった。
スイは少し安堵した。
しかし油断は出来ない。
スイはなるべくみつれに銃をみせないように注意した。


みつ「スイ…怪我してる………」

スイ「あぁ、大丈夫だよ。」
スイは不安にさせまいとみつれを安心させる。

みつ「・・・家に帰りたい……」

スイ「うん。そうだね…。」

帰るにも車はもう無い。
スイはどうやって見つからずに戻るか考えたがいい案は思いつかなかった。



一方、リンは地下鉄駅に到着する。

リン「くそ…これじゃあ分からない。」

リンは再びしおんに電話する。

リン「少年!今のみっちゃんの現在地はどの辺!?」

しお「さっきの地下鉄の駅から1駅で止まってますね。多分駅に繋がってるショッピングモールにいると思います。」

リンは電話を繋ぎながらショッピングモールの入口を探す。

リン「ここね!詳しい位置はわかる!?」

しお「ちょっと待ってください……。階数までは分かりませんが建物内の西側に止まってますね。」

リン「建物内の西側……。了解!電話繋いだままにしてて!」

リンはショッピングモールに入っていった。
辺りは人だらけで到底みつけれそうに無い。


リン「少年!とりあえず西側に来てみた。なにか動きはある?」

しお「・・・いや、動きは無いですね。ずっと1箇所に止まってます。」

リン「1人じゃとても見つけらない。応援を呼ぶよ。」
リンは警察無線でショッピングモールに応援を寄越した。

リン「こんなところで銃撃戦になったら間違いなく死傷者が出る…なんとかしないと。…そうだ!」

リンは施設のインフォメーションに向かい、事情を説明して場内にアナウンスを入れる。


『ただいま、火災が発生しました。場内にいる方は速やかに避難してください。繰り返します。場内に………』


リンは買い物客を避難させるのに成功した。
そのアナウンスはスイとみつれの耳にも入った。

みつ「火災だって!わたしたちも早く出よう!」

スイ「待って……。これは罠だ……」
火災なら警報やスプリンクラーが作動するはず。
だがそれらしい様子も無い。
スイは自分たちをおびき出す、あるいは人を避難させてこの建物全部包囲する気ではないか。

スイはそう考えた。

スイ「・・・だったら今のうちだな…よし、出ようポチ。」

スイは敢えて出ることを決めた。
人ごみに紛れて行けば、警察も無闇に発砲など出来ない。そう考えた。

スイとみつれはトイレを出る。
周りはザワついていて避難に急いでいた。

スイ「今がチャンスだな……行くよ。」
スイとみつれは人ごみに入り込み脱出をはかる。


スイとみつれの逃走劇。
この選択が運命を決めた。。。





65.

人を避難させることに成功したリンはしおんにみつれの位置を確認した。

リン「建物内の人を避難させた!なにか動きあった!?」

しお「はい!ゆっくり動いています!出口の方に向かってるかと!」

リン「人ごみに紛れて出る気なのか……。なら出口に着く前に見つけないと。」

出口は地下鉄駅に続く出口と正面玄関の2つがあった。

リン「応援はまだなの!?」
すると応援の警察官数名が到着した。

リン「良かった!あなたたちは地下鉄駅の出口を張ってて!私は正面玄関を張る!相手は銃を持ってる!一般人に危害が及ばないよう細心の注意をはらって!!」

「了解!!」

警察官数名は地下鉄駅の出口に向かった。


リン「どこにいる……」

リンは人ごみを見渡す。

すると人ごみの中からスイに手を引っ張られるみつれを見つけた。

リン「いた!!!みっちゃん!!」

リンはすぐに警察無線で正面玄関に向かうよう指示を出した。

リン「絶対逃がさない!!」

リンは人ごみの中に入り、掻き分けてスイ達に近づく。
リン「もう少しッ!……」
リンは手を伸ばし、みつれの手を掴んだ。

リン「みっちゃん!!!」

手を掴まれたみつれはリンのほうに振り返って目を合わせた。




みつ「・・・だれ?」




ザワつく人ごみの中、リンは時が止まったような感覚だった。

リン「え………」

みつれの目が、表情がいつものみつれでは無い事に気がついたリン。
その表情は中学の時の幼い表情だった。



脚が止まったみつれを振り返ったスイはみつれの手を掴むリンに気がついた。

スイ「クソっ!!!」
スイは咄嗟に銃を出し、リンを撃った。
2発の銃声が鳴った。

リン「え……みっ……ちゃ……」

右胸と腹部を撃たれたリンはその場で倒れた。

人ごみの中で悲鳴が響く。

スイ「ポチ!早く!!」
スイはみつれの手を引っ張り出口を目指す。

リン「み……みっ…ちゃ……」

みつれの方に手を伸ばすが、視界が暗くなると同時にみつれは人ごみの中に消えていった。


発砲音を聴きつけ、正面玄関で待機していた警察官はその場所にむかった。


「ッ!?撃たれてる!!救急だ!救急車を呼べ!」

辺りは大混乱になった。

そのおかげもあってか、スイ達はショッピングモールを脱出することに成功した。


スイ「追手が来るかもしれない!急いで離れよう!!」
走り出そうとするが、みつれは動かなかった。


みつ「スイ…あの人を撃ったの?なんで!?」
みつれは動揺していた。

スイはみつれの肩を掴み目を合わして話す。

スイ「今はとにかく逃げるんだ!私と一緒に!」
スイは強くみつれを見つめる。

みつ「・・・う…うん……」


手を繋いで2人は走る。

リンと会っても記憶が戻らなかったみつれ。
みつれはスイと共に行く。
『ポチ』という鎖は冷たく繋ぎ止めるモノではなく、
暖かく2人を結ぶ糸に変わっていた。








?「もしもし。やっぱりスイさんは始末します。…はい。……はい。…では。」

電話を切った女は物陰から出てきた。



シロ「覚悟してくださいね。スイさん。」





~ポチの鎖編~END.
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