30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま

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第一章

防犯の大切さ

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 ガタン

 箪笥が揺れた。一気に目が覚める。ばあちゃんベッドを麻袋に入れる。


 誰かが部屋に入ろうとしたってことだよね。鍵をかけてるから、鍵を持っている人だよね。


 ガタガタ震えが止まらない。宿屋の人が寝ている客の部屋に入るなんてありえない。

 箪笥を置いていて良かった。このまま目覚めなかったら、殺されていたかも知れない。

 童話かなんかであった話を覚えていて良かった。旅人を殺して、泥棒する宿屋の話を読んだことがあったんだよ。主人公は、ベッドの向きを逆にしてか何かで助かる話。

 異世界怖い。ガタブルガタブル。


 何時かわからないけど、(異)世界に1人の怖さがのしかかる。地球のように何かあってもポリスメンは来てくれないし、簡単に殺されたり、犯罪に巻き込まれるかもしれない世界。


 怖くて、怖くて震えが止まらない。誰も頼れる人がいない怖さ。そのまま、震えながら夜を明かした。


 「おい、ねーちゃん大丈夫か?」
 肉屋のお兄さんとおばちゃんが心配そうな顔をしてこちらを見ている。

 大袈裟にマヤってみたいけど、頼れる人がいないことを知ったらこの人たちは変わるだろうか?
誰にも言えない。


 スープを作って早く帰ろう。
 下処理して血抜きをした豚骨を下茹でする。アクを取り、お湯を捨てて血合などの濁りとなる部分をとる。香味野菜と合わせて炊いていく。色々な野菜が欲しかったけど、今回は人参の皮とキャベツの芯、玉ねぎになる。理由は、ここの市場で取り扱っていたから。本当はニンニクや生姜も入れたかったけど、見つからなかったのでこれだけ。
 肉屋のおばちゃんがどこからか持ってきた大きな鍋にぐつぐつ煮る。味は塩のみだが、旨味のあるシンプルなスープができた。香味野菜を取り出して、潰して具にする。骨の中の髄もしっかりと具にした。

 圧力鍋もないので、すっかり昼になった。肉屋のおばちゃんとお兄さんが味見をすると、とても感動していた。

 うん、出汁文化がないものね。でも、圧力鍋無しはきつい。鶏ガラの方が、使い勝手が良いかもしれない。

 交渉の結果、レシピは街が管理し使用料は街が回収することになった。街に搾取されるのかと思ったら、功績を称えて、名誉市民(街だから、街民?)になるらしい。税金が無料になり、何かあったら領主が手を貸してくれる。例えば、隣りの領で商売をしたい時の口利きなど。

 何気に嬉しい。何かあった時に助けてくれるのは、うれしい。お金はぼちぼち貯めればよい。地に根を張り生きて行きたい。

 残ったスープは、肉屋の前で器を持ってきた人に一杯銅貨2枚で売った。すぐに無くなったが、裏では、肉屋のおばちゃんが豚骨を砕く音がしていたので、明日から街の名物になるかもしれない。
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