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第一章

初夏のレモネード

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 明日、何を売るかを考えて、レモネードを作って売ることにした。少し汗ばむ気候なのでさっぱりした甘い飲み物は需要があるだろう。

 水は、戸籍があるので街で汲めるし持っていくのは、水差しとマドラーとレモンとハチミツ。レモンを切るためのナイフも用意する。ハチミツは、小壺に入れている。水差しと小壺は、ユーリさんの家にあった物。

 コップは、麻袋先生の出番。木を取り入れて、水分を抜きつつ薄くコップの形で取り出す。軽いコップの完成。全部で30個。

 街で果実水が銅貨3枚ほどで売られていたので、強気の銅貨5枚。ハチミツが入っているので余裕で売れるはず。コップを返してくれれば、銅貨を1枚返す。

 手間を考えれば、コップは返してくれない方がありがたい。

 全部売れれば、銀貨1枚と大銅貨5枚。コップを返されても、銀貨1枚と大銅貨2枚になる。これは、宿屋代ギリギリ2泊、または宿屋代1泊と豪華な食事2回分ぐらいかな?スリには合うかもしれないが、絡まれるような金額でもない。うん。完璧。


 完璧と思っていた時もありました。


 街に入り、閑散とした市場でレモネードを売り出す。服はワンピースに茶色の地味なスカーフで髪や顔を隠して、お客を呼び込む。


 なんでか、考えなければならなかった。何で街の市場が閑散としているのか。
 
 街は、食料不足だった。領の食を賄っている多数の村の街道に盗賊が出ており、食料の供給が不安定だったのだ。

 お腹に溜まらない飲み物だが、ハチミツが入った事で満足感が出る。最初の客が買うと同時に、残りのレモンとハチミツを購入したいと交渉してきた。それを聞いた通りがかりの人達が購入を希望する。レモネードにして、きっちり売った。コップはみんな返してきた。

 そして聞かれる、レモンとハチミツの入手経路。ハチミツは、死んだおじいさんが取ってきてくれていたもの。レモンは、森で見つけたと言い張った。

 森に食料があるのかと聞かれたので、蓬という草と菜蕗は食べられる話と食べ方を伝えておく。

 帰ったら、プラスチックのネットもせっかく貼ったけど回収しておこう。  


 街の市場では、萎びた葉野菜が大銅貨で売られていた。
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