【観覧注意】育児

ひさまま

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 昔は姉が嫌いだった。

 何をしてもできなくて、父に怒鳴られていた。たまに、殴られもしていたので、殴られたく無い私は全力でできる子アピールをした。

 幸い、勉強も運動もできた。一緒に遊ぶ友達もいた。

 水泳で、全国大会に行く時は、仕事を休んで家族で応援に来てくれたし、県数テストで100点を取ったり、学年で3番以内に入ると父は上機嫌でお小遣いもたっぷりくれた。

 その影で、成績が悪い姉は殴られていた。何でわからないかが理解できなかった。中学生でかけ算できないのは、人間辞めてるなと思った。

 時々変なことも言っていた。小人が見えるとか、裏山にある祠の下に神様がいるとか。漫画雑誌に、ミステリーものがあったので、それに影響されたんだと思った。姉は幼すぎる。

 姉のことで父と母が夜中に喧嘩するようになった。家の中が最悪の空気で逃げ出したかった。逃げる場所がないので父に甘え、塾に入れてもらった。

 姉のことがますます嫌いになった。

 中学2年の夏、姉が同級生から馬鹿にされていた。ほんの些細なこと。言葉で馬鹿だな。何で生きてるの?など傷つけられていた。

 本当にその通り、馬鹿だし何のために生きているのか。多分、言われても姉は傷ついていない。同級生は受験のストレスを姉にぶつけていたと思う。

 けど、気付いたら髪を掴んで腹を蹴っていた。1対3だったが、気付いたら相手が泣いていた。担任と体育の先生に叱られ、叩かれたので淡々と説明した。
 気がする。授業を最後まで受けて、掃除時間にベランダで泣いたのは黒歴史。従兄弟が見ていて、両親にチクられた。

 夜、学校の先生がお詫びに来た。暴力を振るったのは私なのに不思議だったが、水泳の先輩から職員会議があった事を聞いた。

 姉は、お前のせいでと父に叩かれていた。なぜか少し父が嫌いになった。

 姉と離れたくて進学校に行く。大学も県外を選び、就職も結婚も県外で行う。

 距離が離れ、大人になったらわかる。1番の被害者は姉。

 表面的な加害者は、父。昔の人で障がいが受け入れられなかった。今も受け入れられていない。祖父の会社を継いだのに、うまく経営できず、兄弟に感じる引け目を姉に当てていた。自慢できる私は可愛がってもらった。新聞に載ると、親戚中に自慢していた。小さい頃はうれし恥ずかしかったけど、今は別の視点で見てしまう。かわいそうな人だなと。

 間接的な加害者は、母。姉に何もできない人と刷り込んだ。お姉ちゃんは、できないのだからしかたがない。お姉ちゃんは、わからないのだからしかたがない。私がしてあげる。お父さんが嫌がるから、お父さんには内緒よ。優しい言葉で姉の自立心や自己肯定感を奪った。

 そして、もう1人の加害者は私。小さい頃は、マウントを取る事で姉を踏み躙り。大人になってからは県外に逃げて、たまに会う程度。家族の歪さに見ないふりをした。自分の家族を守るといい訳をして。

 遅すぎたのは対応。

 母が死んだ翌日、帰省した時は、姉はいなかった。
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