兄と異世界と私

第二章

別れ

　今日も今日とた肉を焼く。最近、暑さが厳しいせいか、レモン塩の売り上げが伸びて来た。BBQソースに迫る勢いだ。

　ダルにもやきもちを焼かれたので、ジョブチェンジしようかな？

　お客を女の子対象にして、甘いものとか？

　うん、ダルも甘いもの好きだし良いかも。

　フルーツジュースとか美味しいよね。美味しいフルーツあるし。でも被るんだよね。果実水を売っているお店が沢山ある。肉串のように値段設定高めにするのも良いけど、ん～。

　アイスやケーキは生活魔法でつくれるけど、それこそ貴族に目をつけられたら厄介だ。この世界、乳製品は微妙なので、ネットスーパーで購入して作ることになると、日本円の問題がでてくるし。

　そう。私はこの日々が続くと思っていた。

　いつか、ダルと結婚して子どもを作り、兄も近くで生活して世帯を持つ。ゆっくりこの世界に溶け込んでいくと。


　変わったのは夕方。兄が両足を無くして帰って来た。

　オーガの群れと戦っている時にらワイパーンに襲われたらしい。混戦状態になり、ソニアを庇おうとしてワイパーンに食いちぎられた。

　私には魔法がある。でも躊躇した。ここで暮らすうちに、治癒魔法は伝説の魔法で、教会預かりになる。家族と縁を切り、教会で一生を過ごすと知り怖くなり、今まで美容と兄の水虫にしか使ってこなかった。
　

　血は薬草で止まっているので、死ぬことはない。

　私が何もしなければ兄は両足を無くしたまま過ごしていく。兄はポジティブだし、なんだかんだで甘いので私には何も言わない。

　冒険者やめても最悪ネットスーパーで商売すれば良い。

　教会預かりになれば、ダルとも兄とも会えなくなる。

　保身の身勝手な考えが頭をぐるぐる回る。治さないで良い言い訳を考える自分が嫌になる。

　夜、治癒魔法を兄にかける。

　ダルごめん、たった1人の兄なんだ。