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9話
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ふぅ~、だいぶ人魂の扱い方がわかってきた。それにしてもきついな。感覚からしたら3つの画面を見ながらレースゲームをしている気分。
少しでも間違えると壁の中で迷子になりそうになる。壁の中って分厚いとどっちが下か上で、右か左か分からなくなるんだよな。
でも、何とか制御できるようになってきた。もう最初の方は乗り物酔いに似た様な気持ち悪さが襲ってきて、操作もままならないから地面の中に埋まったりと散々な状態だった。
「えーっと、部屋部屋っと」
壁の中を通るが何も見つからない。
「もしかしてこの屋敷はブラフなのか?」
『いえ、障壁はこの屋敷を中心としてます。おそらくはもっと別の所だと』
別って言ってもなぁ。
俺は人魂を解除して立ち上がる。
「フォルターさん、どこにもコアらしいものがないですよ」
白葉が近づいて言う。
「地下にも無さそうだ。うーん何処にあるんだろうなぁ」
「とりあえず上に行きましょう」
それもそうだな。俺と白葉は1階に戻る。
1階に出て玄関まで戻る。
そこにはシュンとしてお座りしているグリンブルモスがいた。
「どうしたのですか?」
「えっと、巨体のせいでほとんどの部屋と廊下が通れなくて戻ってきたようです」
俺はグリンブルモスが通ったであろう廊下を見ると物の見事に体のサイズピッタリな穴が空いていた。
「あぁ、ごめん。考えてなかった」
グリンブルモスはもっとシュンとしてしまう。
「あぁ!!違うよ!!別にグリンブルモスのことを忘れてたわけじゃないんだよ!!」
「フォルターさん。それはさすがに…」
「ちょ!!白葉!?」
グリンブルモスは後ろを向いて蹄で床をいじる。
「違うんだよグリンブルモス!!ね!!違うからね!!」
俺は必死に背中や頭を撫でる。
「ブルちゃん可哀想」
笑いながら白葉が言う。浄化しようかな?
「お願い1つ聞くからさ!!機嫌直して…ね」
グリンブルモスは「本当?」と言いたげな目でこちらを見てくる。
「本当本当、何でもしてあげるからさ」
最終手段の何でも券は効くのか。
体を起こして顔を俺に押し付けてくる。優しくだ。
「機嫌直してくれたのかぁ!!ありがとうねぇ」
全身を使って頭を撫でる。
「ブルちゃん良かったですね」
「…そう言えば…ブルちゃん?」
「グリンブルモスって長すぎますから略してブルちゃんです!!」
略称か。うーん、複雑な気分。しっかりと考えていい名前にしたと思うんだけどなぁ。
「おぉ!!それいいのじゃ!!グリンブルモス改めブルと呼ばせてもらうの」
アイシャさんがブルの牙を撫でる。
まあ、確かに長すぎたか。名前。
「正式名称扱いでいいか」
「何がです?」
「グリンブルモスって名前。ずっとそう呼ぶと長すぎるのは確かだしな。普段はブルと呼んで正式な場があればグリンブルモスで行くって感じだね」
「なるほど」
「ウロボルタもそうするか」
今この場にはいないが早めに決めておいた方がいいと思うし。
「ならボルはどうです?!」
「いやいやウロも良いだろ!!」
アイシャさんと白葉、名前ガチ勢すぎるだろ。凄い勢いで顔に近づいてくる。
「…間をとってルタでどうだ?」
2人は不満げに頷いた。納得してねえな。まあ、無視ということで。
「それにしてもコアはどこにあるんだ?この屋敷なのは確かなはずなのだが」
「えっと、フォルター様、心当たりがあるのですがよろしいですか?」
「え?あるんですか?」
「はい、こういう探している物って意外なところにあるということが多いと思うんですよ」
「なるほど」
スマホとかもそんな感じだもんな。
「屋根の上とか。この屋敷が中心なのであればこの屋敷のさらに中心。でもそこには何も無かった。なら上にあるのでは?」
なるほど。
「白葉頼める?」
「はい、行ってきます!!」
敬礼ポーズをして真上に飛んでいく。
数十秒したら白葉が降りてきた。
「それらしき水晶ありました!!」
「おお!!本当か!?アンドロス!!」
俺が名前を叫ぶと走って近づいてくる音が聞こえる。
「うぉん!!」
アンドロスが目の前にビシッとおすわりをする。
「この屋敷の上に水晶があると思うから取ってきてくれないかな」
「うぉふ!!」
やる気満々な様子で外に飛び出る。俺達もアンドロスに続いて外に出る。
「あ、忘れてた。ウロボルタ!!外に出るよ」
そう言った瞬間窓が割れる音が響いた。ショートカットしたな。
外に出るとアンドロスは玄関の扉の上にある屋根を足場にして1番上に登る。
そして数十秒経ってからフライヤウェイと言いたげに飛び出て落下してきた。
「…アンドロス、次からその降り方禁止」
「うぉふ!?」
なんでと言いたげな顔だな。周りを見ろ。全員咳き込んじゃってるよ、生きてる組全員が。
「もしかしてそれがコアか?」
2つの頭はガックリと頭を下げてるがコアを持ってる方の頭は褒めてくれると思ってるようでルンルンで渡してくる。
頭を撫でてコアを受け取る。
「使い方分かりませんし。メロア様どうぞ」
「わかりました」
メロア様はコアを受け取る。するとコアが光る。
「これは?」
「恐らくこの街の主になったのじゃろ」
「なるほど」
「えっと、どうすれば?」
「…好きなようにしていいと思いますよ」
「そうじゃの、民がいないのなら失敗しても大丈夫じゃろ」
「そう…ですかね?」
「とりあえず何が出来るか確認してみては?その間に屋敷の手入れしときますので」
「え?」
「我も手伝うのじゃ」
「え?え?」
「それじゃ椅子置いておくので」
「あの!?え!?」
「それじゃ行きましょう」
「「おー」」
俺はメロア様以外を連れて…
「アロンダイト、すまないがまたメロア様を守っててくれないか?一応」
「ウォフ」
「あ、そうだ。ウロボロス!!メロア様守っておいてね」
「シャー!!」
どこに行ってんだ?街の方から鳴き声が聞こえた気がしたんだが。何してんだ?
まあ、ツッコんでたら時間もなくなるし掃除に向かうか。
玄関の扉前に集合している。
「というわけで掃除をします!!」
「あいあいさー!!」
「あいあい?なんて?」
白葉はすごいノリノリだ。アイシャさんが戸惑ってるが気にしないでおこう。
「まず屋敷に入る前にブル!!君に仕事を与えよう」
「ぶも!!」
嬉しそうに尻尾を振る。
「屋敷に入ったら玄関の中心で2回ジャンプしてきて。衝撃は屋敷に満遍なく伝わるようにね」
「ぶも!!」
敬礼してんだろうなぁ。片足を上げて「はい!!」っていう感じになっている。
俺は扉を開けてブルを中に入れる。数秒経ってから屋敷が建っている丘が震えるほどの衝撃が来る。
「おお、震える震える」
「えっと、何をしているのじゃ?」
「中にあるホコリを全て浮かせました」
「ってことはこの中は」
「ええ、ホコリまみれでしょうねぇ」
「…ブルをしっかり洗ってやるのじゃぞ」
「それじゃ扉開きますね」
「無視!?」
扉を開くと同時に俺は横にズレる。アイシャさんの首根っこを掴み移動したから「グェ!!」という出してはいけない音が出ている。
「……」
アイシャさんは俺に文句を言おうと上を向くが自分がいた場所も目に入ったようで無言になった。
そこはもうホコリの霧と言っていいほどの量が舞っていた。
「目が痒くなってきたのじゃ」
「恐らく反射ですね。酸っぱいものを見た時にヨダレが出る、あれと同じです」
しばらく経ってからホコリが落ち着いてきた。少し量が少なくなったから覗こうとするとアイシャさんが止める。
「ちょっと待つのじゃ。落ち着いたからと言ってこの中を突入するのは危険じゃ。魔法かけるからちょっと待つのじゃ」
「魔法?」
アイシャさんは俺の疑問に答える前に目を瞑る。
『風の加護を今ここに』
《ウィンドアーマー》
俺とアイシャさんの周りに風が吹く。そして全身に絡みつく。
「これはどう言った魔法ですか?」
「これは風の鎧を身につけて毒霧や軽い物を体に触れぬようにする魔法じゃ」
へえ、便利な魔法。解体業者の方とかに必要そうだな。
白葉はそもそも霊体なので意味が無いということでかけられてない。少し不満そうだ。
魔法もかけられたということで中に入る。中はまだまだ埃が舞っていた。そして部屋の中心にブルが動かずに放心してるかのように動かない。
「ブル!!」
俺の声に反応して耳だけ動いた。そしてのっそりとこちらを見る。少し恨めしそうに見ている風に見えるのは気のせいだろ。
「ブル出ておいで」
ブルは言われた通りにのそのそと歩いて俺の横を通って外に出た。
埃が2cm以上背中に積もってたのは見なかったことにする。
「いやぁそれにしても溜まってましたねー」
床にはブルの背中以上に積もっていた。汚い雪って感じ。
「だるま作れそうだな」
「だるまとはなんじゃ?」
「いやなんでもないです。さてと、掃除しますか」
「…嫌なのじゃ」
「そんなこと言ってられないですよ。ほら行きますよ」
アイシャさんの手を引っ張って奥に行く。アイシャさんもやらないといけないということがよくわかっているので、微妙な抵抗をしながら一緒に行く。
白葉は1人楽しそうに屋敷の奥に消えていった。
数時間後
「やっと終わったのじゃ」
アイシャさんは綺麗になった寝室のソファーに倒れる。
魔法というチートを使いながら頑張ったけど、予想以上にホコリとか虫がいた結果分では終わらなかった。
「お疲れ様です。とりあえず外に出ましょう」
「うぅ…わかったのじゃ」
重い体を起こして俺と一緒に外に出る。
外に出ると綺麗になったブルを筆頭にしたウチの子達がメロア様を囲んでいた。メロア様は少し困りながらも楽しそうにしていた。
「あれ?白葉はまだいないのですか?」
「いえ、私はまだ見ておりません。それと町長として認定されたようです」
どうやら前の町長は本当にここを放棄したようで直ぐになれたらしい。
「フォルターさん、どこにいたんですか?」
「それはこっちが聞きたいよ」
「私は普通に掃除してましたよ。なのにお二人共どこかに行っていて、探したらお二人共追いかけっこしてたじゃないですか!!」
は?追いかけっこ?
「ちょっと待て、何言ってるんだ?」
「こちらが聞きたいですよ!!なんで真面目に私が掃除してたのにお二人で楽しく遊んでるんですよ!!」
ぷりぷりと怒りながら言う。
「いや、白葉殿よ。フォルター殿と私は本当に掃除をしていたぞ」
「え?」
「冗談抜きで掃除していたぞ?2階から1階にかけてやってたぞ」
「え?でも地下に」
おっとこれは。
「……メロア様行きましょうか」
「嫌です!!絶対になにかいらっしゃいますよね!?」
「白葉の親戚でしょう」
「それってダメじゃないですか!!」
涙目で縋られるが。死霊術士の能力でどうにかできるのか?
「そうじゃ!!フォルター殿、我らをこの地に運んでくれたことに対しての報酬がまだじゃったの」
「そう言えば」
メロア様が俺に抱きついたまんまアイシャさんを見る。
「今回の報酬、特殊スキルなのじゃが。『テイム』はどうじゃ?」
「『テイム』ですか?」
「そうじゃ。一応自力で獲得することができるのじゃが、今回はここまで世話をしてくれたから特別に技伝書を作成するのじゃ」
「えっと、順番に質問大丈夫ですか?」
色々と詰め込まれてるから流石に聞くか。
「いいのじゃ」
「まず『テイム』はその名の通り魔物とかを味方にするスキルですか?」
「そうじゃ。まあ、人によって相性が異なるのじゃが。心配はないじゃろ」
「今の言葉ですごく不安になりました。それでは次の質問です。技伝書とは何ですか?」
「技伝書とはスキルを簡単に獲得するための物じゃ。特定のスキルや職業についていないと作れないが私は持っている」
「スキルってなんでもいいんですか?」
「いや、作成する本人が持っているものしか与えられない。いくつか作成できないのもあるが…気にするほどのものでもないじゃろ」
「質問は以上です。ありがとうございます」
「うむうむ、勉強は大切じゃからな……それでは作成するぞ」
アイシャさんはそう言うとどこからか紙と筆を取り出した。紙を空中に固定するとそこに幾何学模様を描いていく。
うん、空中に固定している時点でなんだこれって思ってる。
数分経った。そしてアイシャさんは完成したのか動きを止める。すると紙が光り始めて数秒もしたら収まった。紙はくるっと意思があるように自分で筒状に丸まった。
アイシャさんは紙を掴み笑顔でこちらに渡してくる。
「完成じゃ!!」
「おおー」
白葉も感動したように拍手をする。
俺は紙を受け取るが、使い方がわからない。
「これどうやって」
「あぁ、普通に開けば大丈夫じゃよ」
言われた通りにクルクルと広げると紙から完成した時よりも強い光で周りを照らす。
屋敷の玄関の細部がはっきり分かるほどの光だ。
「技伝完了じゃ」
魔物図鑑NO.7
魔蛇
森の奥深くに住処を作る大蛇。その体は死ぬまで成長し続けるということで記録されている物で最大10kmまでの個体が観測されている。生態は細かく調査できていないため、謎に包まれていることが多々ある。今の所わかっていることは身体はドラゴンにも引けを取らないほどの筋力を保有し、一滴で国1つを滅ぼす程の毒を持つことだけである。進化も多様であり、スライムやゴブリンにも引けを取らないと言われている。進化で小さくなった者、空を飛んだ者、腕が生えた者、多種多様な進化を遂げている。色も様々あるので貴族からの人気もある。稀に卵が発見されることもある。孵化させても刷り込みはできない。だが、味は絶品なので高額で取引されている。「体は全て薬の素と成る」と言われる程多種多様な毒を保有している。
攻撃手段
・噛み付く
・絞める
・テールアタック
・体当たり
・魔眼(稀に)
・毒
・武器の使用
・丸呑み
・寄生
ドロップアイテム
・革
・肉
・牙
・瞳
・魔石
・毒腺
・デバフポーション(効果はランダム)
レアドロップ
・魔眼
・毒に染った牙
・毒に犯された心臓
・卵
・古代の財宝(数百年生きた個体のみ)
・毒液(瓶詰め)
・骨
超レアドロップ(数千年個体のみ取得可能)
・宝珠
・毒結晶
・万能薬
・古代の魔導書
・世界樹の枝
・毒苔
・髄液
少しでも間違えると壁の中で迷子になりそうになる。壁の中って分厚いとどっちが下か上で、右か左か分からなくなるんだよな。
でも、何とか制御できるようになってきた。もう最初の方は乗り物酔いに似た様な気持ち悪さが襲ってきて、操作もままならないから地面の中に埋まったりと散々な状態だった。
「えーっと、部屋部屋っと」
壁の中を通るが何も見つからない。
「もしかしてこの屋敷はブラフなのか?」
『いえ、障壁はこの屋敷を中心としてます。おそらくはもっと別の所だと』
別って言ってもなぁ。
俺は人魂を解除して立ち上がる。
「フォルターさん、どこにもコアらしいものがないですよ」
白葉が近づいて言う。
「地下にも無さそうだ。うーん何処にあるんだろうなぁ」
「とりあえず上に行きましょう」
それもそうだな。俺と白葉は1階に戻る。
1階に出て玄関まで戻る。
そこにはシュンとしてお座りしているグリンブルモスがいた。
「どうしたのですか?」
「えっと、巨体のせいでほとんどの部屋と廊下が通れなくて戻ってきたようです」
俺はグリンブルモスが通ったであろう廊下を見ると物の見事に体のサイズピッタリな穴が空いていた。
「あぁ、ごめん。考えてなかった」
グリンブルモスはもっとシュンとしてしまう。
「あぁ!!違うよ!!別にグリンブルモスのことを忘れてたわけじゃないんだよ!!」
「フォルターさん。それはさすがに…」
「ちょ!!白葉!?」
グリンブルモスは後ろを向いて蹄で床をいじる。
「違うんだよグリンブルモス!!ね!!違うからね!!」
俺は必死に背中や頭を撫でる。
「ブルちゃん可哀想」
笑いながら白葉が言う。浄化しようかな?
「お願い1つ聞くからさ!!機嫌直して…ね」
グリンブルモスは「本当?」と言いたげな目でこちらを見てくる。
「本当本当、何でもしてあげるからさ」
最終手段の何でも券は効くのか。
体を起こして顔を俺に押し付けてくる。優しくだ。
「機嫌直してくれたのかぁ!!ありがとうねぇ」
全身を使って頭を撫でる。
「ブルちゃん良かったですね」
「…そう言えば…ブルちゃん?」
「グリンブルモスって長すぎますから略してブルちゃんです!!」
略称か。うーん、複雑な気分。しっかりと考えていい名前にしたと思うんだけどなぁ。
「おぉ!!それいいのじゃ!!グリンブルモス改めブルと呼ばせてもらうの」
アイシャさんがブルの牙を撫でる。
まあ、確かに長すぎたか。名前。
「正式名称扱いでいいか」
「何がです?」
「グリンブルモスって名前。ずっとそう呼ぶと長すぎるのは確かだしな。普段はブルと呼んで正式な場があればグリンブルモスで行くって感じだね」
「なるほど」
「ウロボルタもそうするか」
今この場にはいないが早めに決めておいた方がいいと思うし。
「ならボルはどうです?!」
「いやいやウロも良いだろ!!」
アイシャさんと白葉、名前ガチ勢すぎるだろ。凄い勢いで顔に近づいてくる。
「…間をとってルタでどうだ?」
2人は不満げに頷いた。納得してねえな。まあ、無視ということで。
「それにしてもコアはどこにあるんだ?この屋敷なのは確かなはずなのだが」
「えっと、フォルター様、心当たりがあるのですがよろしいですか?」
「え?あるんですか?」
「はい、こういう探している物って意外なところにあるということが多いと思うんですよ」
「なるほど」
スマホとかもそんな感じだもんな。
「屋根の上とか。この屋敷が中心なのであればこの屋敷のさらに中心。でもそこには何も無かった。なら上にあるのでは?」
なるほど。
「白葉頼める?」
「はい、行ってきます!!」
敬礼ポーズをして真上に飛んでいく。
数十秒したら白葉が降りてきた。
「それらしき水晶ありました!!」
「おお!!本当か!?アンドロス!!」
俺が名前を叫ぶと走って近づいてくる音が聞こえる。
「うぉん!!」
アンドロスが目の前にビシッとおすわりをする。
「この屋敷の上に水晶があると思うから取ってきてくれないかな」
「うぉふ!!」
やる気満々な様子で外に飛び出る。俺達もアンドロスに続いて外に出る。
「あ、忘れてた。ウロボルタ!!外に出るよ」
そう言った瞬間窓が割れる音が響いた。ショートカットしたな。
外に出るとアンドロスは玄関の扉の上にある屋根を足場にして1番上に登る。
そして数十秒経ってからフライヤウェイと言いたげに飛び出て落下してきた。
「…アンドロス、次からその降り方禁止」
「うぉふ!?」
なんでと言いたげな顔だな。周りを見ろ。全員咳き込んじゃってるよ、生きてる組全員が。
「もしかしてそれがコアか?」
2つの頭はガックリと頭を下げてるがコアを持ってる方の頭は褒めてくれると思ってるようでルンルンで渡してくる。
頭を撫でてコアを受け取る。
「使い方分かりませんし。メロア様どうぞ」
「わかりました」
メロア様はコアを受け取る。するとコアが光る。
「これは?」
「恐らくこの街の主になったのじゃろ」
「なるほど」
「えっと、どうすれば?」
「…好きなようにしていいと思いますよ」
「そうじゃの、民がいないのなら失敗しても大丈夫じゃろ」
「そう…ですかね?」
「とりあえず何が出来るか確認してみては?その間に屋敷の手入れしときますので」
「え?」
「我も手伝うのじゃ」
「え?え?」
「それじゃ椅子置いておくので」
「あの!?え!?」
「それじゃ行きましょう」
「「おー」」
俺はメロア様以外を連れて…
「アロンダイト、すまないがまたメロア様を守っててくれないか?一応」
「ウォフ」
「あ、そうだ。ウロボロス!!メロア様守っておいてね」
「シャー!!」
どこに行ってんだ?街の方から鳴き声が聞こえた気がしたんだが。何してんだ?
まあ、ツッコんでたら時間もなくなるし掃除に向かうか。
玄関の扉前に集合している。
「というわけで掃除をします!!」
「あいあいさー!!」
「あいあい?なんて?」
白葉はすごいノリノリだ。アイシャさんが戸惑ってるが気にしないでおこう。
「まず屋敷に入る前にブル!!君に仕事を与えよう」
「ぶも!!」
嬉しそうに尻尾を振る。
「屋敷に入ったら玄関の中心で2回ジャンプしてきて。衝撃は屋敷に満遍なく伝わるようにね」
「ぶも!!」
敬礼してんだろうなぁ。片足を上げて「はい!!」っていう感じになっている。
俺は扉を開けてブルを中に入れる。数秒経ってから屋敷が建っている丘が震えるほどの衝撃が来る。
「おお、震える震える」
「えっと、何をしているのじゃ?」
「中にあるホコリを全て浮かせました」
「ってことはこの中は」
「ええ、ホコリまみれでしょうねぇ」
「…ブルをしっかり洗ってやるのじゃぞ」
「それじゃ扉開きますね」
「無視!?」
扉を開くと同時に俺は横にズレる。アイシャさんの首根っこを掴み移動したから「グェ!!」という出してはいけない音が出ている。
「……」
アイシャさんは俺に文句を言おうと上を向くが自分がいた場所も目に入ったようで無言になった。
そこはもうホコリの霧と言っていいほどの量が舞っていた。
「目が痒くなってきたのじゃ」
「恐らく反射ですね。酸っぱいものを見た時にヨダレが出る、あれと同じです」
しばらく経ってからホコリが落ち着いてきた。少し量が少なくなったから覗こうとするとアイシャさんが止める。
「ちょっと待つのじゃ。落ち着いたからと言ってこの中を突入するのは危険じゃ。魔法かけるからちょっと待つのじゃ」
「魔法?」
アイシャさんは俺の疑問に答える前に目を瞑る。
『風の加護を今ここに』
《ウィンドアーマー》
俺とアイシャさんの周りに風が吹く。そして全身に絡みつく。
「これはどう言った魔法ですか?」
「これは風の鎧を身につけて毒霧や軽い物を体に触れぬようにする魔法じゃ」
へえ、便利な魔法。解体業者の方とかに必要そうだな。
白葉はそもそも霊体なので意味が無いということでかけられてない。少し不満そうだ。
魔法もかけられたということで中に入る。中はまだまだ埃が舞っていた。そして部屋の中心にブルが動かずに放心してるかのように動かない。
「ブル!!」
俺の声に反応して耳だけ動いた。そしてのっそりとこちらを見る。少し恨めしそうに見ている風に見えるのは気のせいだろ。
「ブル出ておいで」
ブルは言われた通りにのそのそと歩いて俺の横を通って外に出た。
埃が2cm以上背中に積もってたのは見なかったことにする。
「いやぁそれにしても溜まってましたねー」
床にはブルの背中以上に積もっていた。汚い雪って感じ。
「だるま作れそうだな」
「だるまとはなんじゃ?」
「いやなんでもないです。さてと、掃除しますか」
「…嫌なのじゃ」
「そんなこと言ってられないですよ。ほら行きますよ」
アイシャさんの手を引っ張って奥に行く。アイシャさんもやらないといけないということがよくわかっているので、微妙な抵抗をしながら一緒に行く。
白葉は1人楽しそうに屋敷の奥に消えていった。
数時間後
「やっと終わったのじゃ」
アイシャさんは綺麗になった寝室のソファーに倒れる。
魔法というチートを使いながら頑張ったけど、予想以上にホコリとか虫がいた結果分では終わらなかった。
「お疲れ様です。とりあえず外に出ましょう」
「うぅ…わかったのじゃ」
重い体を起こして俺と一緒に外に出る。
外に出ると綺麗になったブルを筆頭にしたウチの子達がメロア様を囲んでいた。メロア様は少し困りながらも楽しそうにしていた。
「あれ?白葉はまだいないのですか?」
「いえ、私はまだ見ておりません。それと町長として認定されたようです」
どうやら前の町長は本当にここを放棄したようで直ぐになれたらしい。
「フォルターさん、どこにいたんですか?」
「それはこっちが聞きたいよ」
「私は普通に掃除してましたよ。なのにお二人共どこかに行っていて、探したらお二人共追いかけっこしてたじゃないですか!!」
は?追いかけっこ?
「ちょっと待て、何言ってるんだ?」
「こちらが聞きたいですよ!!なんで真面目に私が掃除してたのにお二人で楽しく遊んでるんですよ!!」
ぷりぷりと怒りながら言う。
「いや、白葉殿よ。フォルター殿と私は本当に掃除をしていたぞ」
「え?」
「冗談抜きで掃除していたぞ?2階から1階にかけてやってたぞ」
「え?でも地下に」
おっとこれは。
「……メロア様行きましょうか」
「嫌です!!絶対になにかいらっしゃいますよね!?」
「白葉の親戚でしょう」
「それってダメじゃないですか!!」
涙目で縋られるが。死霊術士の能力でどうにかできるのか?
「そうじゃ!!フォルター殿、我らをこの地に運んでくれたことに対しての報酬がまだじゃったの」
「そう言えば」
メロア様が俺に抱きついたまんまアイシャさんを見る。
「今回の報酬、特殊スキルなのじゃが。『テイム』はどうじゃ?」
「『テイム』ですか?」
「そうじゃ。一応自力で獲得することができるのじゃが、今回はここまで世話をしてくれたから特別に技伝書を作成するのじゃ」
「えっと、順番に質問大丈夫ですか?」
色々と詰め込まれてるから流石に聞くか。
「いいのじゃ」
「まず『テイム』はその名の通り魔物とかを味方にするスキルですか?」
「そうじゃ。まあ、人によって相性が異なるのじゃが。心配はないじゃろ」
「今の言葉ですごく不安になりました。それでは次の質問です。技伝書とは何ですか?」
「技伝書とはスキルを簡単に獲得するための物じゃ。特定のスキルや職業についていないと作れないが私は持っている」
「スキルってなんでもいいんですか?」
「いや、作成する本人が持っているものしか与えられない。いくつか作成できないのもあるが…気にするほどのものでもないじゃろ」
「質問は以上です。ありがとうございます」
「うむうむ、勉強は大切じゃからな……それでは作成するぞ」
アイシャさんはそう言うとどこからか紙と筆を取り出した。紙を空中に固定するとそこに幾何学模様を描いていく。
うん、空中に固定している時点でなんだこれって思ってる。
数分経った。そしてアイシャさんは完成したのか動きを止める。すると紙が光り始めて数秒もしたら収まった。紙はくるっと意思があるように自分で筒状に丸まった。
アイシャさんは紙を掴み笑顔でこちらに渡してくる。
「完成じゃ!!」
「おおー」
白葉も感動したように拍手をする。
俺は紙を受け取るが、使い方がわからない。
「これどうやって」
「あぁ、普通に開けば大丈夫じゃよ」
言われた通りにクルクルと広げると紙から完成した時よりも強い光で周りを照らす。
屋敷の玄関の細部がはっきり分かるほどの光だ。
「技伝完了じゃ」
魔物図鑑NO.7
魔蛇
森の奥深くに住処を作る大蛇。その体は死ぬまで成長し続けるということで記録されている物で最大10kmまでの個体が観測されている。生態は細かく調査できていないため、謎に包まれていることが多々ある。今の所わかっていることは身体はドラゴンにも引けを取らないほどの筋力を保有し、一滴で国1つを滅ぼす程の毒を持つことだけである。進化も多様であり、スライムやゴブリンにも引けを取らないと言われている。進化で小さくなった者、空を飛んだ者、腕が生えた者、多種多様な進化を遂げている。色も様々あるので貴族からの人気もある。稀に卵が発見されることもある。孵化させても刷り込みはできない。だが、味は絶品なので高額で取引されている。「体は全て薬の素と成る」と言われる程多種多様な毒を保有している。
攻撃手段
・噛み付く
・絞める
・テールアタック
・体当たり
・魔眼(稀に)
・毒
・武器の使用
・丸呑み
・寄生
ドロップアイテム
・革
・肉
・牙
・瞳
・魔石
・毒腺
・デバフポーション(効果はランダム)
レアドロップ
・魔眼
・毒に染った牙
・毒に犯された心臓
・卵
・古代の財宝(数百年生きた個体のみ)
・毒液(瓶詰め)
・骨
超レアドロップ(数千年個体のみ取得可能)
・宝珠
・毒結晶
・万能薬
・古代の魔導書
・世界樹の枝
・毒苔
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「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
婚約破棄からの断罪カウンター
F.conoe
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冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。
理論ではなく力押しのカウンター攻撃
効果は抜群か…?
(すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
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王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
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ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
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