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訓練はおしまい

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きっかり30分後に金木犀を持って大道芸のいつもアオが居る場所まで転移する

もう準備が終わって歌い始めるところだった



アオと目が合い視線で促された先はいつも歌う場所の台の上

横から歌っている場所が見えるところに椅子が老いてある

歌う場所に座るなんて事は初めてでなんだかドキドキする・・・悪い事をしているみたいだ



僕の目の中に入るようにアオが作った魔法陣が近づいてくる

見逃さないように細かく見ているとそれは認識阻害の陣だった

アオがかけてくれた認識阻害なら誰にも気づかれる事などないだろう・・・



人を避けていつものようにダボッとした服装をしたアオの横を通り過ぎて椅子に座る



この間の光る青と白の棒はなかった







スッ━━━━



アオが息を吸い込んで歌い出すと空気が変わる

最近はずっと踊っていたのに今日は踊らず音に合わせて言葉を乗せて歌うアオに初めて会った時の事を思い出す

あの時もこんな風に歌っていた



アオは色んな歌を知っているから聞いた事のない歌を歌うのも多い

今日も知らない音だったけど、すごく苦しそうに歌う



歩きたいのに先々には困難が溢れていて足を取られる・・・そんな歌



聞いている僕も苦しくなって泣きたくなってくる



けれど最後辺りで曲調が変わって歩く為に見つけたなにかと共に歩き出す

自分の足で歩きだす

そんな最後



アオの吐き出す息、吸う音、体の全ての空気を自由自在に操っている



一生懸命に歌い、一生懸命に生きている



そんな歌ばかりを歌うアオの横顔は綺麗で音だけじゃなく顔にも惚れる





朝のお散歩の時に言っていた事を思い出す



『歌う時は今の気持ちじゃなくて一曲の物語を自分の解釈で感情を乗せて歌うんだ、そうすれば音がズレていようと息が足らなくとも誰かの心には届くって信じてる』



だからこれは物語を歌っているのだと僕は知っているのに、どの曲もアオの心の声だと勘違いしてしまうように聞こえるのはきっとアオの事を少し知れたから





「ありがとう、今日は終わり」



ハッと顔を上げる

いつからか目を閉じて歌を聞いていたみたい



もう辺りは暗くなってしまっていた



なんだか今日の歌は体の力が抜ける・・・そんな音だった



「アズール?」

「・・・んん?」

「大丈夫?」

「・・・っ!大丈夫!ごめんね、なんだか力が抜けちゃって・・・」

「そっか、帰ろう?」

「あ、う、うん!・・・あ!待って!あの、これ、今日も凄く素敵でした!苦しかったけどでも最後は活力が湧いてくるような歌でした、今日もありがとうございます!」

「くすくす・・・どういたしまして」



金木犀を受け取ったアオは花に顔を近付けて匂いを堪能している姿はなんだか少し儚げだった





「「ただいま(戻りました)」」

「おかえりなさいませ」



「イーストン俺の不注意でお父様の体が冷えたんだ、先にお風呂入れて」

「かしこまりました」

「え!?ぼ、僕平気・・・」

「「平気じゃない(ありません)」」



そんなに体が冷えているとは思わなかったけど2人の圧に負けお風呂に浸かる





「はふ・・・・・」



お風呂から上がるといつもより少しだけ長く入ったからか少しボーっとする



トントントン………



「お父様調子はどう?」

「ん・・・大丈夫だよ」



「イーストン、今日はここで食事にしよう」

「っ!?体調が悪いのですか?」

「疲労かな?少しぼんやりしてるけどそんなに悪くはないよ、念のため今日はここで食事にして早めに寝かせて」



「僕大丈夫だよ?」

「知ってるよ、念のためって言っただろ?」

「ん・・・分かった」



食事を部屋でしてすぐに寝室に運ばれた

寝室の扉が開いているのはアオが寝室に居るから

心配だからここに居ると言ってくれたアオに体調が悪い気はしないけど甘える事にした



「お父様、どんな物語が好き?」

「・・・ふえ?」

「せっかくだから物語を読もうかなって」

「・・・・・冒険がいいな」

「ん」



少し考えてたアオはゆっくりと物語を紡ぎ出す

僕がアオの子供みたいだ



物語に集中したいけど凄く眠たくてすぐに寝てしまい朝まで起きなかった





****************





「眠られましたか」

「うん」

「こんなに早く寝てしまわれるとは、やはり体調が悪かったのですね」

「悪くなり始めだから今日ゆっくり眠れたら明日には元気になってるよ」



小声で話す私たちにも気付かず寝息を立てながら眠るアズール様を見つめながら話すアオ様の瞳は慈愛に満ちている



「アオ様から聞いたのですが・・・どこまでが本当です?」



「信じたい分だけ信じたらいいよ」



「・・・さようでございますか」



アオ様が人ではない神よりも尊いお方だと話すアズール様にレオリオス様も私も信じられませんでした

けれどそんな嘘をつく意味もアオ様にはない



それに信じて欲しいと思っている訳でもなさそうですし



「寝ている間に悪化しても嫌だから今日はここに居るよ」

「・・・・・しかし」



「寝ている相手に無粋な事はしないから」

「・・・・・かしこまりました、おやすみなさいませアオ様」

「ああ」



いつもは私のような立場の者にも目を合わせて話してくれるアオ様はアズール様しか見ておらず子供としてこの家に居るのはわずかかも知れないと思うと自然と口角が上がる





****************





王様へ魔法陣の話をして季節が1つ変わった頃には王城内はその事で持ち切りだとレオリオスが言っていた

未来へ繋ぐ為近隣諸国にも基礎だけだけど本を流す事にしたという噂を聞いて、面倒な事を避けれて助かったと安堵した





「お父様とめて」

「ん・・・・・ふぅ」



「お疲れ様、魔力の放出は合格だよ」

「本当!?」

「うん、問題ないよ」

「っっっありがとう!」

「どういたしまして」



アオが立ち上がり牛乳を温めてくれる

蜂蜜をたっぷり入れたカップを渡され熱い息を吐く



「あとは魔法陣の組み合わせとかは本を暗記して使いこなせるように馴染ませるよう使い続けるだけだから」

「ん・・・分かった」

「だから夜の訓練はおしまい」

「・・・・・そうだね」



そうだとは思ってたんだ

でも、これからは朝だけにしか会えないのかな・・・・・



はぁ・・・・・



「アオだいすき」

「はいはい」



今日も流される



でも明日からは流してくれる程傍にも居ない



「お父様、魔大獣の事なんだけど」

「っ・・・うん」

「しばらく出てきていないんだ」

「え・・・・・?」



「俺がこの世界に来た瞬間に魂がいたずらされないように加護を定期的にかけているから魂が奪えてないんだと思う、集めてた魂がなくなったのかあとわずかなのか・・・」



「他に何かあるの?」



「多分俺の絶望の瞬間を待ってる」

「え?」

「俺が一番苦しむような時がもしこの世界で訪れるなら絶対に待ってるんだけど・・・」

「けど?」

「そんな瞬間が訪れるとも思えないんだ」

「・・・そうなの?」

「対策はしてあるから奪われるような事は絶対にないんだ、だから苦しむ瞬間は来ないからもうすぐ姿を現して殺されに来ると思うんだ」



「なんで分かるの?」

「ずっとそうされてるからかな」

「・・・・・感情の欠片ってそんなにたくさんあるの?」

「さあ?どれくらいの量かは分からないんだ」

「でもされ続けるくらいは欠片を殺してきたんだね」

「そうだね」



「アオの奪われる物って何か聞いてもいい?」

「・・・・・アズールだよ」



「・・・・・え?」





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