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初めての友達
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アオが養子になって屋敷も僕自身もその環境に慣れた頃
研究所でいつものように研究成果や報告書を読んではサインしていた中にアオが夜会に招かれた際の報告書も挟まれていた
あの時の貴族の男は得体の知れない魔石みたいなモノを所持していただけで他は何も知らなかった
強く問いただししばらく牢に入れたままにしても何も吐かなかった、吐かないではなく本当に何も知らないようだった
あの魔石のようなモノの解読は進んでない
そしてなぜあの貴族の男が持っていたのかも分からない
アレをどう使うモノなのかも分からない
あの場で魔大獣を発現させたのも結局誰が何の為にしたのかも分かっていない
何も分からない、とても情けない結果になってしまった
「アズール魔導長」
「・・・どうしました?」
「いえ、お茶でもどうかと思いまして」
アーモンドアイにはめられているエメラルドグリーンの瞳を細めて笑う彼は最近研究所に配属されたイロス魔導師、名は・・・忘れちゃった
髪色が黒にも見える深く暗い緑にアオを思い出してつい視線を向けた時偶然に目が合ってしまいそこからちょくちょくこうやって声をかけてくる
「ありがとう、でも大丈夫」
「そうですか・・・では私はこちらでお茶をしますね」
そして少し困った事に、お茶を断り、食事を断っているのに僕の側でお茶をしたり食事をしたりするんだ
僕に近付く人間なんてわずかだけど、この距離が変なのは分かる
分かるんだけど、どうしたらいいかは分からないんだ
だからいつも目の前でお茶をするイロス魔導師を視界の端に入れて仕事をするのがここ最近の当たり前になっている
「アズール魔導長は金木犀がお好きなのですか?」
今日も買ってきた僕の机の上にある金木犀を見ながら訪ねる
「貢ぎ物だよ」
「貢ぎ・・・というと噂の養子になったという歌い人への?」
「う、うん・・・そんなに有名なのかな」
「アズール魔導長が引き取った魔力の高い魔人、これだけでも騒がれていますからね」
歌い人じゃなくて僕の養子で噂になってるんだ・・・
「確か名前は・・・アオ様、ですか?」
「え、うん・・・名前まで広がっているんだね」
「一部で、ですけどね」
アオに迷惑がかかっていないだろうか
歌いずらくなっていたりしないだろうか
「一度歌っているところを拝見した時の感想になりますが、彼には薔薇がよく似合う気がしますね」
薔薇・・・
確かに、あのオニキスには赤い薔薇もよく似合うと思ったんだ
けれど、たくさんの花言葉がたくさんあるし、それに赤い薔薇には愛の言葉がたくさんちりばめられていて誤解されてしまったらどうしよう・・・と悩んでやめた内の1つだ
「そうだ・・・ね」
居ない・・・・・
考え事をしている間にイロス魔導師は仕事に戻ったようだ
そして、イロス魔導師は必ず僕の分のお茶を作ってから離席するんだ
しょうがなくいつも飲むけれど、とても美味しくて堪能している事は内緒だ・・・
僕はアオが歌い始めた2回目からずっと聴いているけど、イロス魔導師を見かけたことはない、あの夜会でも
・・・あれだけの人だかりだからきっと見逃している時もあるだろう
散漫してしまった考えを報告書に向けて仕事に戻そうとした僕の元に珍しい客人が現れた
「おい!あいつは家に居んのか!?」
「レオリオス団長、あいつとはアオの事ですか?」
「あいつに言っとけ!勝負すんぞ!今からだ!」
「・・・はい?」
「負けっぱなしは嫌なんだよ!」
負け・・・この間足払いをされた事を言ってるのか
「今からは・・・アオは家に居ないでしょうし」
「ああ?あいつは遊び歩いてんのか」
「いえ、そういう訳では・・・」
「チッ・・・なら家に行くから待たせてろ!」
「はい!?あ、ちょっと待って下さい!」
バタン!!!
乱暴に扉を閉めたレオリオス団長はアオに子供のようにあしらわれた事に腹を立てていたらしい
レオリオス団長からの言付けに僕はアンクレットの飾りに魔力を通し事の顛末を告げる
あとは、返事がくるまで待てばいい
「ただいま戻りました」
「おかえり、お父様」
「アオ!?」
いつも迎えてくれる家令イーストンの横にニコニコとしながら立っている
「お父様の事出迎えるのは久しぶりだね」
「う、うん・・・あ、あの!レオリオス団長の事なんだけど!」
「とりあえず部屋に行こう」
スッと差し出された手にエスコートされる
アオはなんでもスマートに行動するからきっとモテるんだろうなぁ・・・
「イーストン客人が来たらよろしくね」
「心得ております」
アオがイーストンに声をかけているのを見るとレオリオス団長の来訪は屋敷中に広まっているようだ
イーストンが部屋から出るとアオが話し出す
「ふふ、イーストンがね?お父様が初めて友達を招いたって喜びながらもてなしの準備をしてるんだ」
「・・・友達って訳じゃ」
「じゃぁこれから友達になれるね」
「これから・・・・・アオは?」
「うん?」
「アオに友達はいるの?」
僕の質問にアオは一瞬だけど苦痛な表情を浮かべた顔に聞いてはいけない事だったと後悔した
「どうだろうね・・・そうだ!ならお父様が友達になってくれる?」
「へあ!?ぼ、僕が!?」
「うん!」
「で、でも僕は一応父親で・・・!」
「親が友達になってはいけないなんて事はないよ?」
「で、でも、僕なんか友達になってもいい事なんて一つもないよ・・・・・」
「そう?なら友達になって決めてもいい?俺がお父様の友達に相応しいかも見極めてくれたらいいよ」
「ええ!?そ!僕はそんな偉そうな立場じゃ!」
「それを言うなら俺もだけど・・・いいじゃん、一緒の時間共有して同じ好きな事を話したり自分にない部分を知って新たな楽しみを見つけられると思うよ、お父様となら」
「そ・・・・・う、うん・・・アオがそう言うなら」
「ふふん」
僕がアオの友達・・・・・嬉しさで顔が緩む
「・・・・・お父様は可愛いから心配だな、もしいい人が見つかったら俺に報告してね?」
「そっっ!ぼ、僕に声をかける人なんて居ないよ」
「お父様は綺麗だから」
「きっっっ!?そ、そ、そ、そんな!そんな事絶対にないよ!」
「お父様ってバカだよね」
「へあっ!?」
「そんなところも可愛いけど」
「なんっっ!?」
「今のところ変に声かけてくる人は居ない?」
そう言われてイロス魔導師を思い出すけどそういうつもりじゃないだろうと頭を振る
「お父様?」
「居ないよ!そんな事よりアオにもいい人が見つかったら教えてね?」
「もちろん、友達として父親として相談に乗ってもらうかも」
「ふわあああ・・・それってなんだか友達っぽい!」
「くすくす・・・ぽいじゃなくて友達でもあるでしょ?」
「そ、そうだった!」
授業ではどうしても魔力を扱う事に集中してしまうからこんな話も出来なかったけど、イーストンにレオリオス団長の訪れを知らされるまで僕たちの会話が途切れる事はなかった
研究所でいつものように研究成果や報告書を読んではサインしていた中にアオが夜会に招かれた際の報告書も挟まれていた
あの時の貴族の男は得体の知れない魔石みたいなモノを所持していただけで他は何も知らなかった
強く問いただししばらく牢に入れたままにしても何も吐かなかった、吐かないではなく本当に何も知らないようだった
あの魔石のようなモノの解読は進んでない
そしてなぜあの貴族の男が持っていたのかも分からない
アレをどう使うモノなのかも分からない
あの場で魔大獣を発現させたのも結局誰が何の為にしたのかも分かっていない
何も分からない、とても情けない結果になってしまった
「アズール魔導長」
「・・・どうしました?」
「いえ、お茶でもどうかと思いまして」
アーモンドアイにはめられているエメラルドグリーンの瞳を細めて笑う彼は最近研究所に配属されたイロス魔導師、名は・・・忘れちゃった
髪色が黒にも見える深く暗い緑にアオを思い出してつい視線を向けた時偶然に目が合ってしまいそこからちょくちょくこうやって声をかけてくる
「ありがとう、でも大丈夫」
「そうですか・・・では私はこちらでお茶をしますね」
そして少し困った事に、お茶を断り、食事を断っているのに僕の側でお茶をしたり食事をしたりするんだ
僕に近付く人間なんてわずかだけど、この距離が変なのは分かる
分かるんだけど、どうしたらいいかは分からないんだ
だからいつも目の前でお茶をするイロス魔導師を視界の端に入れて仕事をするのがここ最近の当たり前になっている
「アズール魔導長は金木犀がお好きなのですか?」
今日も買ってきた僕の机の上にある金木犀を見ながら訪ねる
「貢ぎ物だよ」
「貢ぎ・・・というと噂の養子になったという歌い人への?」
「う、うん・・・そんなに有名なのかな」
「アズール魔導長が引き取った魔力の高い魔人、これだけでも騒がれていますからね」
歌い人じゃなくて僕の養子で噂になってるんだ・・・
「確か名前は・・・アオ様、ですか?」
「え、うん・・・名前まで広がっているんだね」
「一部で、ですけどね」
アオに迷惑がかかっていないだろうか
歌いずらくなっていたりしないだろうか
「一度歌っているところを拝見した時の感想になりますが、彼には薔薇がよく似合う気がしますね」
薔薇・・・
確かに、あのオニキスには赤い薔薇もよく似合うと思ったんだ
けれど、たくさんの花言葉がたくさんあるし、それに赤い薔薇には愛の言葉がたくさんちりばめられていて誤解されてしまったらどうしよう・・・と悩んでやめた内の1つだ
「そうだ・・・ね」
居ない・・・・・
考え事をしている間にイロス魔導師は仕事に戻ったようだ
そして、イロス魔導師は必ず僕の分のお茶を作ってから離席するんだ
しょうがなくいつも飲むけれど、とても美味しくて堪能している事は内緒だ・・・
僕はアオが歌い始めた2回目からずっと聴いているけど、イロス魔導師を見かけたことはない、あの夜会でも
・・・あれだけの人だかりだからきっと見逃している時もあるだろう
散漫してしまった考えを報告書に向けて仕事に戻そうとした僕の元に珍しい客人が現れた
「おい!あいつは家に居んのか!?」
「レオリオス団長、あいつとはアオの事ですか?」
「あいつに言っとけ!勝負すんぞ!今からだ!」
「・・・はい?」
「負けっぱなしは嫌なんだよ!」
負け・・・この間足払いをされた事を言ってるのか
「今からは・・・アオは家に居ないでしょうし」
「ああ?あいつは遊び歩いてんのか」
「いえ、そういう訳では・・・」
「チッ・・・なら家に行くから待たせてろ!」
「はい!?あ、ちょっと待って下さい!」
バタン!!!
乱暴に扉を閉めたレオリオス団長はアオに子供のようにあしらわれた事に腹を立てていたらしい
レオリオス団長からの言付けに僕はアンクレットの飾りに魔力を通し事の顛末を告げる
あとは、返事がくるまで待てばいい
「ただいま戻りました」
「おかえり、お父様」
「アオ!?」
いつも迎えてくれる家令イーストンの横にニコニコとしながら立っている
「お父様の事出迎えるのは久しぶりだね」
「う、うん・・・あ、あの!レオリオス団長の事なんだけど!」
「とりあえず部屋に行こう」
スッと差し出された手にエスコートされる
アオはなんでもスマートに行動するからきっとモテるんだろうなぁ・・・
「イーストン客人が来たらよろしくね」
「心得ております」
アオがイーストンに声をかけているのを見るとレオリオス団長の来訪は屋敷中に広まっているようだ
イーストンが部屋から出るとアオが話し出す
「ふふ、イーストンがね?お父様が初めて友達を招いたって喜びながらもてなしの準備をしてるんだ」
「・・・友達って訳じゃ」
「じゃぁこれから友達になれるね」
「これから・・・・・アオは?」
「うん?」
「アオに友達はいるの?」
僕の質問にアオは一瞬だけど苦痛な表情を浮かべた顔に聞いてはいけない事だったと後悔した
「どうだろうね・・・そうだ!ならお父様が友達になってくれる?」
「へあ!?ぼ、僕が!?」
「うん!」
「で、でも僕は一応父親で・・・!」
「親が友達になってはいけないなんて事はないよ?」
「で、でも、僕なんか友達になってもいい事なんて一つもないよ・・・・・」
「そう?なら友達になって決めてもいい?俺がお父様の友達に相応しいかも見極めてくれたらいいよ」
「ええ!?そ!僕はそんな偉そうな立場じゃ!」
「それを言うなら俺もだけど・・・いいじゃん、一緒の時間共有して同じ好きな事を話したり自分にない部分を知って新たな楽しみを見つけられると思うよ、お父様となら」
「そ・・・・・う、うん・・・アオがそう言うなら」
「ふふん」
僕がアオの友達・・・・・嬉しさで顔が緩む
「・・・・・お父様は可愛いから心配だな、もしいい人が見つかったら俺に報告してね?」
「そっっ!ぼ、僕に声をかける人なんて居ないよ」
「お父様は綺麗だから」
「きっっっ!?そ、そ、そ、そんな!そんな事絶対にないよ!」
「お父様ってバカだよね」
「へあっ!?」
「そんなところも可愛いけど」
「なんっっ!?」
「今のところ変に声かけてくる人は居ない?」
そう言われてイロス魔導師を思い出すけどそういうつもりじゃないだろうと頭を振る
「お父様?」
「居ないよ!そんな事よりアオにもいい人が見つかったら教えてね?」
「もちろん、友達として父親として相談に乗ってもらうかも」
「ふわあああ・・・それってなんだか友達っぽい!」
「くすくす・・・ぽいじゃなくて友達でもあるでしょ?」
「そ、そうだった!」
授業ではどうしても魔力を扱う事に集中してしまうからこんな話も出来なかったけど、イーストンにレオリオス団長の訪れを知らされるまで僕たちの会話が途切れる事はなかった
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