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あれから1日と空けず来る日もあれば3ヶ月も空く事もある
魔王様はお忙しいから仕方のない事だけど

俺はすっかり体も心も調教されてしまった気がする
それも当然だろ
だってあの魔王様だ
誰もが憧れ一目見て欲しいと乞い願う相手に何度も抱かれればそうなるのも当たり前だろう

飽きずに通ってくれて5年は経つ

それまで俺は他の客を取った事がない
金の必要もなければ体は魔王様だけを…心も魔王様だけを求めているんだから

それと同時にツラくもなる

サフィネス様はこんな気持ちで抱かれていたのかと思うと嫉妬に狂ったのも理解が出来る
むしろ魔王様に殺されてしまいたいとも願っただろう

他の娼妓や男娼を相手にしたと聞いた事はまだないけど、いつか俺にもその日がくるんだろうか




「はぁ…」
「まーた魔王様の事で悩んでんのかよ」
「ダリオン…お前も同じ立場になってみろ」
「嫌だよ、お前見てれば分かるけど魔王様に侵食されたくねぇ」
「なんでだ?」

同じ男娼でもあるダリオンと呑みに出てる最中そんな事を言われる

なんで魔王様に侵食されるのが嫌なんだ?

「当たり前だろ、魔王様に近付きたいとも思わねぇ」
「なんでだ?」
「恐ろしくねぇの?お前」
「え?」
「魔王様は素晴らしいお方だがそれと同じくらい恐ろしい方でもあるだろ」
「恐ろしい…」

そうか?
魔王様は恐ろしいというより優しいと思うんだが

「一夜だけでも、とは思うけどそれだって夢に思うくらいで行動に移せるのは狂った奴か先がねぇ奴らだけだ」

そういうものなんだろうか

「そんな風に悩んでねぇで客でも取ったらどうだ」
「あ?」
「別に引いてもいいんだろ?」
「ああ」
「他の奴を相手にしたら気になんなくなるかもよ」
「……それもいいかもしれないな」
「呑み終わったら立つか」
「………そうだな」

たまには客を引いてみるか
許可は出てるし問題はないだろ

ダリオンと1時間ほど呑んでから店前に立つ

俺が魔王様のお気に入りだという事は誰もが知っている
嫉妬の目はあるが、行動に移されないのはサフィネス様の件がまだ記憶に新しいからだろう

そんなお気に入りの俺が店前に立つと興味本位で声をかけてくる奴は居るが魔王様が恐ろしいのか買われる事もない

1時間ほど過ぎた当たりでやっと客がついた

「おい」
「はい」
「いくらだ」
「5万です」
「安いな」

魔王様に抱かれてるから価値が上がってると思われてるのか

「買ってやる」
「ありがとうございます」

久しぶりにあの部屋以外へと足を踏み入れる

「下を脱げ」
「はい」

なんだか懐かしい

こういう風にされて満足するまで腰を動かされるのが当たり前だったのに今では違和感しか感じない

脱いでベッドに四つん這いになった時に心臓が嫌な音を出す

駄目だ

魔王様以外に抱かれたくない

「も、申し訳ございません、やっぱり無理です」
「…」
「申し訳ございません…返金致しますから…どうか、どうか」
「分かった」

あっさりと引き下がった客に安堵する

「あ、ありがとうございます」
「お前の尻は見てねぇ」
「は…」
「いいか?お前の肌を俺は見てない、いいな?」
「は、はい」
「よし、帰る!」
「え?」

そういえば脱いでもいない客は部屋からバタバタと出て行き取り残された俺は返金もしていない…

どうしたらいいかと悩んだが取りに戻ってくるだろうとオーナーにお金を渡していつもの部屋へと戻った

「え?」
「早かったな」
「まお、さま…」

いつものように煙草を吸ってソファに座っている魔王様

来る時は必ず連絡してからなのに

どうして、よりも嬉しさが表に出る

「魔王様お待たせしました」
「いい、座れ」
「はい」

俺の前には当たり前のようにぶどうジュースが置かれる

顎を掬われて魔王様の方へと向かされる

「客を引いたな」
「あ……は、はい」
「何故やめた」

俺が怖じ気付いた事も知っているみたいだ

「まお、さま、いがいに、だかれたく、なくて…」
「抱くのはいいか」
「へ?」
「お前が抱くのはどうだ」

言われている意味が分からない

「勃つとも思えません」
「その辺は考えるな」
「…抱きたいとも思えません」
「俺がしろと言ったら?」
「します」
「お前はいい、どこまでも俺を喜ばせてくれる」
「あ、ありがとうございます」
「連れ帰る」
「…へ?」
「今までと変わらない、俺に抱かれてる以外は好きにしろ」
「は……」
「俺はフィーノルド以外抱かない」
「ほ、ほんと、に?」
「側に居ろ」
「は、はい!」

手を引かれて部屋を出る
オーナーを呼べと言われて走り出そうとする手を離してくれない

「側に居ろと言っただろ?もう忘れたか」
「い、いえ」

顔が赤くなるのをやめられない

近くに居た男娼仲間にお願いして店の外へと歩みを進める魔王様に着いていく

「魔王様!」

走ってきたオーナーに魔王様が話しかける

「これは抱かれるだけじゃなくなった」
「は、はい!」
「俺の物だ、言い聞かせておけ」
「か、かしこまりました!」
「部屋と金は好きにしろ」
「あ、ありがとうございます!」

ぱっと目の前からオーナーが居なくなりどこかの部屋に連れられた…けど

「え?」

さっき客として来てた男が高そうなソファに座ってた

「俺はなにも見てねぇ!」
「別にいい、こいつはそういう事にも興奮しそうだ」
「え?」
「なら今度楽しむか!」

なにか恐ろしい事が勝手に決められていく

「ヴァリス」
「なあに?」

ヴァリス様は魔王様と契約している悪魔様だ
真っ白の髪と真っ白な瞳は有名で、一目見て悪魔様だと分かる

「フィーノルドを案内しろ」
「はあい、行こ」
「は、はい」
「終わったら戻って来い」
「はい!」

ヴァリス様と一緒に浮いて案内されるけどやっぱりここは魔王城らしく広い屋敷に俺の部屋を作ってくれていたらしい
寝室は魔王様と一緒だ

どうしてこんな事になってるのかふと考えてしまうけど魔王様が俺を望んでる

それだけで充分だ

そういえばあの方は魔王様に頼まれて俺を買ったんだろうか

「フィー?」
「は、はい!」
「終わったよ、覚えたー?」
「はい!ありがとうございます」
「いいよー、戻ろ」
「はい」

さっきの部屋は魔王様の執務室らしくほとんどそこに居るらしい

「戻りました」
「フィーノルド」
「は、はい」
「好きに使え、暇ならここに居ろ」
「はい!」
「フィーせっかくだ呑もうぜ」
「え?え?」
「やっぱ蒸留酒だろ!」

魔王様はさっさと仕事に戻ってるからいいのかと思ったけど気にしてないようなので頂く

どうやら目の前の方は次代の領地様らしい
四天王ではないけれど、とりあえず任されたらしいヘルツ様は俺が客を引いてると魔王様に報告した後買って来いと言われて俺を買ったんだと言われた

魔王様の意図はまだ分からないけど俺は魔王様の物になったみたいだ



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