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「先生!今日は剥ぎ取り講習の依頼受けなかったのか?」



「ぁあ、今日は採集に着いてったよ」



「そういや、薬屋のじいさんが騒いでたな」



「ぁあ、人使いが荒い爺だよ」



「まったくだ!先生は今日も自炊か?」



「・・・・・ぁあ」



「たまにはどっか店でも入ってくれよ!」



「そのうちな」



森から降りれば昔から店をやってる店主に声をかけられる

薬草の他にも魔力を纏っているモノがある事に気付いてから、なんの違いがあるのか試していたら野菜の旨味や魔獣の倒し方、魚の良し悪しにも魔力が関係していると薬屋の爺に話したら、色んなモノの目利きについての依頼も入るようになり街の奴らにも気安く話しかけられるようになった



「「剥ぎ取り屋ー!」」



「どうした」



「明日の依頼もう受けちゃったー!?」



「いや、これから戻るところだ」



「「良かったー!」」



「僕たちと」

「久しぶりに」

「パーティー組もうよ!」



「ぁあ、それは助かる」



「「こちらこそ!」」



「にしても、面白いよね」

「魔力の扱いはうまいのに」

「それを攻撃に活かせないなんて」



「まぁ、体が鈍らなくていい」



「相変わらず筋肉だねー」

「じゃぁ、僕たちでギルドに申請しておくねー!」



「ぁあ、助かる」



「「あしたねー!」」



前に相談した魔術士2人は双子でもなんでもないのに、いつも息ぴったりだ

緑髪のエリーと紫髪のイリー、2人が出会った時からあだ名を決めてそう名乗ってるらしい、おかしな連中だ



俺は相変わらずCランクの剣と盾だ

魔術はどうも放出が苦手らしくあれからたまに教えてもらってるがなんの上達も見られない、体が鈍らないように鍛えてそしてパーティーを組むと感覚も鈍らないからパーティーを組める時は喜んで誘われている



「爺」



「・・・・・爺!」



「うるさいっ!なん!・・・・お前か」



「採取終えたぞ」



「ふん、まぁまぁだな」



「そりゃ、どうも」



「金を持ってくる・・・」



薬屋の爺はあいつが何か伝えてたみてぇで俺が採集するのを分かってたみたいだ

それが関係あるか分かんねぇが俺には少し態度が柔らかい



「持たせたな」



「またよろしく」



「あの子はまだ帰ってこないのか?」



「知らねぇよ」



「・・・喧嘩したか知らんがまた戻ってくるよう伝えてはくれんか?」



「喧嘩もなにもあいつとはそんな関係じゃねぇよ」



「・・・・・そうかい」



爺はたまにこういう事を言ってくる

なんで俺が許してねぇ前提で話してくんだ



周りの者はあいつの家に住んでる事を知っている、それを裏でごちゃごちゃ言われてるのも変な勘違いをされてるのも知ってる

だが、何もなかったなんて言い返したい気力は3年経ってもない



ガチャッ

家に帰ると灯りが着く

その度に帰って来てるんじゃねぇかと思っちまう、でもこういう仕様なのは3年間で嫌という程知っている

俺が歩く先は勝手に灯りが漏れいつの間にか消えてる、変な家だ



洗浄をして入るがあいつがしてくれる洗浄が快適すぎて自分がしてもまだ汚れてる気がして毎日風呂に入って体を洗って浸かるのもすっかり癖付いた



魔力を少し流せば一瞬で貯まる湯、止めるまで流れ出る湯、減らない洗剤



「ふぅ・・・」



風呂から上がれば食事が保存されてる箱を開けて目の前の飯を取る、ご丁寧にそのまま捨てられる仕様になっているから楽でいい

ついでに酒も取る、毎日ランダムだ

けれど、どうせ全部美味いんだからどれでも同じだ



飯を食う、いつもの場所で立って食う

なんでか座る気になれねぇ

よく外食に誘われるが、この箱がどういう仕様になっているか分からない

食べないとなくなってしまうかも・・・なんて恐ろしい事を考えるとどうしたって外で食う気がしねぇ

好きな奴が居ないと飯も不味くなるなんて聞いた事あるがありゃ俺には適用しねぇな



だって今日も飯がうまい



この家を探索したら他にも寝室があり、自室のスペースも作れそうだった

ふと、思い出した

今はもう帰っていない寒々しい家を買った時は内装を好きにしようと

隙間風が多くてそこの修繕ばかりに気を取られていたが一丁前にそんな事を思っていたなと、そこから家具屋に言ったり人に聞いたりしてみたが、何故か行動に移せない





嘘だ





分かってるよ





あいつの色が少しでもなくなるとあいつが居ない気がして怖いからだ

それに、俺はやっぱりあの寝室に戻るんだ

今も足取りはあの寝室に向かう

開ければあいつが居るんじゃねぇかって期待しちまう

それで、笑うんだ





笑うしかねぇだろ





いつも清潔なこの家はあいつの匂いがする場所なんてない

控えめで、けれど1度嗅いだら忘れられない花の匂い

酒をベッド横に置く、横になる



こんなに広いベッドなのに端に寄る

あいつが居た時だって別に端に寄ってねぇ

だが、いつの間にか端に寄ってた馬鹿みてぇに端に寄る



「ふっ、ふぅぅ、ぐす、うえぇ、ふ、ふ」



なんで帰って来ねぇんだ、なんで俺の家になってんだ、なんでなんでなんでなんで・・・



疑問がいっぱいになるといつも取り出す小さな石、“俺の事で呼ばれたらいつでも行く”なんて言われた石

魔力を流せばいつだって来てくれるんだ

でもそれすら嘘で、もしかしたら来ないかもしれない

今では唯一の繋がりになった石を見つめて今日もやめる

魔力を流して来なかったら諦められるかもしれない











「うっ、ふぅぅっっ、イヴ、会いたいんだ」

















朝起きると頭が痛い・・・眠る前に泣くのはやめたい・・・



横の水差しに魔力を注ぐと果実水が入ってそれをグラスにいれる、たまに味が変わる果実水は今日もうまい



朝からイヴが俺の為に用意した服を着る

食事を取って昼食用の持ち運び出来る食事も取って熱々のスープと共に食う

小さな石を今日もきちんと持ってるか確認して家を出る







これが俺の3年の全てだ









「あー!それすると買い取り少なくなるじゃん!」

「しょうがないじゃん!今危なかっただろ」

「もー!!!」



「落ち着け、命が全てだと習っただろう」



「「はーい、ごめんなさーい」」



エリーとイリーも疲れが溜まってきたように見える



「今日はここまでにするぞ、だいぶ狩れただろ」



「ね、今日こそは」

「「飲みに行かない!?」」



「遠慮する」



「「えー」」

「いい男紹介するよー?」

「屈強な男を突っ伏したいという奴居るって言ったじゃーん」



こいつらは相談で俺が受けだと気付いたらしく時には飲みで、パーティーを組んで俺と誰かをくっつけようとする



「気分じゃない」



「「えーーー」」



「帰るぞ」



「「・・・・・・はあーい」」



今日は早めに終わったからギルドに戻ったらトレーニングでも「おい!」



「あ?」



「「ザッカリー!」」



「こっち来い!まずいぞ」



「「僕たちは無視ー??」」



「なんだ?」



「上に領主様が来てる」



「・・・・・そうか、お疲れさん」



「お前、呼ばれてるぞ」



「・・・・・心当たりがねぇな」



「しかも、相当怒ってるみてぇ」



「はぁ・・・骨は拾ってくれ」



「任せろ」



ザッカリーから離れるとギルドの職員に案内される、3階建てだが3階まで来た事はない

せいぜい2階までだ



「お連れしました」

恐恐と職員が声をかける



中から扉が開く

「何があっても入ってくるな」

前も見た領主様の護衛が職員に告げる



バタンッ

扉が閉まる、空気が重い・・・・・

挨拶をしようとしたが、護衛に肩を押され床に膝をつく

久しぶりに見た領主様は前よりも少し多めにシワを携えて、けれども相変わらずの美丈夫だった



「あいつを呼べ」



あいつとは、あいつか・・・・・

また、あいつかどいつもこいつもなんなんだ



「知りません」



「ふざけるな!!!」



「俺の旦那に会ってるんだ、居るんだろうどこだ!?!?」



は?

旦那に会ってる?どこで?なにが?飽きたら次?は、はは…



「会ってるんなら、俺は飽きられたんでしょう」



「っっっふざけるのも大概にしろ!抑止力として、脅しとしてあの時から会ってると聞いた!!」



「は?」



「あの時の細工が原因だろう!?俺の旦那は関係ない!」



「なに?」



「お前なんかを守るためにこの俺を脅すなどふざけるのも大概にしろ!!!!!!」



俺を守る?なに?



領主様が動く・・・・・魔力を纏わりつかせて近づく



あー



こりゃ、死んだな

















バチンッッッ!!!











「「は?」」



「お前、なにして」



俺が領主様を弾いた気がした・・・

なんだ今の・・・

だってなにもしてないなにも・・・

なんで領主様が倒れて・・・





「お前!なにをした!!!」



護衛に蹴られる

俺だって訳分かんねぇわかんねぇよ!

ずっとずっとわかんねぇことだらけなのに俺が1番わかんねぇよ!!!



「死ね!」























「「「ジャクスティン!!!」」」



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