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ヒギュアアアアアアア!!!!

ザシュッザシュッ



あれからやはりパーティーを組めなくなった

あの魔導士の男は俺なんかにフられた腹いせに回りの魔導士に愚痴を溢している・・・らしい

昔からよくあることだ、その間はパーティーを組んでくれる奴が極端に居なくなる

だが、じっと黙っていればちらほらと組んでくれる奴が出てくる

そしてまた告白されて今みたいになる、これは王都もこの街も変わらない・・・

王都の方が人が多い分ここまで1人で討伐することもなかったか・・・

ふぅ・・・と溜め息を溢す、正直夢だった英雄にもなれず誰にも抱かれず仲良くなった友達は伴侶が出来て疎遠になっている・・・



父ちゃんと母ちゃんは元気にやっているだろうか・・・手紙を送れば必ず2人から返ってきて暖かい言葉をもらえる、物を贈るには遠すぎて無理だが今の俺にはその手紙が唯一の命綱みたいになっている

     

       帰りたいな



帰ろうかな、俺がここに居るより田舎に帰って力仕事を手伝ったほうが役に立つんじゃないか?恋人も伴侶も諦めて残りの長い人生独りで暮らしてもポツ・・・・



ん?と気付いた時には遅かった、そういえば天気が崩れていたから今日は早めに帰ろうと思っていたのに、そんなにボーッと突っ立っていただろうか?

いけない、討伐中にぼさっとするなんて

いつ命を落とすか分からない職なのは理解してるつもりだったが、“つもり”だったらしい

明日からまた気を引き締めて討伐に向かおう

そう考えながら山を下る、自分の周りに膜を張ってもいいがこう気分が不安定な時に不慣れな魔法は使うべきではないと体に染みついている為濡れながら下る

足元が崩れてきたな・・・・・

丁度いい洞穴を見つけて入ってしまったがこんなところに洞穴なんかあったか・・・?



違和感はあったが警戒しつつ中を進む

こんなに広いなんて・・・・・

その時暖かい風と光が見えた、剣はずっと抜いていたのでいつでも翔ける準備は出来ている・・・・・

ん?焚き火?人か?

「だれかいるかっ!?」

思ったよりも自分の声が響いた・・・・・

焚き火の前まで着けば採集の男が横に丸まって寝ていた・・・・・



起こそうとは思ったけど、あまりにも気持ちよく寝ているのとこないだのザッカリーの言葉で自惚れだが、惚れられても嫌だな

と考えて起こすのはやめた、起きたら焚き火を借りている事の礼を言おう

にしても、とても暖かい・・・・・

俺の家より暖かいんじゃないか?

20分くらいすると壁が光り出す・・・・・なんだ?こんな現象は聞いたことがないぞ

そんな時、洞穴のもっと奥から甘ったるい花の匂いがした

身構えた時に、寝ていた男が突然起き上がり

「キタ!!!!」

と言いながら洞穴の奥に進んで行く

つい呆気に取られたが甘ったるい花の匂いが危険なモノだとしたら・・・

そう考えたら男の後ろを追うように洞穴の奥に進んでいた



奥に進むと壁がキラキラと一層輝きを増す

外よりも明るいな・・・にしてもこんな幻想的な洞穴は噂として回ってきそうだが・・・

ハブられているからか?とあまりにも今日は嫌な方へ考えてしまう

光の先に男がしゃがんでいるのが見えた

男の手には花・・・・・か?

男の体の半分くらいあるぞ、それとも鉱石か

こんなに近寄っても判断が出来ないくらい幻想的すぎて息が詰まる

「おい」

着いてきてしまったのだから仕方がない、声をかける

「なに?」

「ここはなんだ?」

そう問いかけると男はこちらを向いた、光のせいで男の瞳の色が何十色にも輝いて見えた

そのままじっと顔を見られたと思ったらまた花に視線を戻す

「薬屋に頼まれたんだ」

「花の採取か?」

「いや、蜜だよ」

「花は持っていかないのか?」

「そんな勿体ない事はしないよ」

「そんなもんか?」

「うん、ここにあればいつでも蜜が取れるけど持って行ってしまったらいつかはなくなるでしょ」

確かに、と思った



立ち去り方も分からなくなりじっと見つめていたけれど、いつの間にか採り終えたみたいで、すっと立ち上がった

遠目から見るよりは背が高いな180くらいはあるのか?



「帰るけど、どうする?」

「あ、ぁあ、いや俺も帰る」

そのまま先を歩く男の後ろを着いて行く



「死にたかったんじゃないの?」

「は?」

こいつはいきなりなにを言うんだ



「え?違うの?ここ死にたいとか気分が沈んでるとあの花に誘われるところだからてっきりそうなのかと思った、お兄さんも蜜欲しかった?」



・・・・・・・・・・・

確かに今日は気分が落ちていたけれど



「いや、雨宿りの為に入っただけだ」

「?雨は降っていないよ?」

「いや、さっきふ・・・・・・」



そういえば濡れてない・・・・・焚き火で暖まってもこんなにすぐ乾くはずは

ぞくっ、とした

俺は死に場所を選ばされたのか?



その時ぎゅっと手を繋がれた

「なっ!?」

「大丈夫だよ、寝てたところに戻ったらお茶をいれてあげる」



怖かった気持ちがゆっくりとなくなっていく

人肌とはこんなにも心まで暖かくなるものなのだな、と思った



焚き火の場所まで戻ったらすっと手が離れた

なんだか、また寂しくなった

どこからか紅茶のセットを取り出しサンドウィッチまで出てきた



「はい、美味しいよ?」



魔法の残留が見えなかった・・・・・





「お前は、死にたいと思ったからここに来れたのか?」



そんな事言われると思わなかったという感じで目を真ん丸にしてこちらを見る

いや、初対面のような奴にこんな事聞かれても困るか、あやま「ふふ、そうかもしれないね」

なんてキラキラしい顔で笑った



そのまま紅茶も淹れてもらい美味しい食事をこんなところで出来ると思わなかった

体が温まると自分の置かれてる状況に冷や汗が出る



「ふふ、お兄さん分かりやすいね、お兄さんが入ってきた入口は確かになくなっているけど俺の帰り道を残してあるから大丈夫」



「そうか・・・・・」



「すまない、自己紹介がまだだったな、今更だが俺の名前はジャクスティンこの街に来て6年経ったところだ」

「ありがとう、俺は一月前に来たイヴだよ」

そう言いながら人懐っこい笑みで握手のための手を差し出された



「ぁあ、よろしく」



男が、イヴが紅茶を飲み終わったら出ていくことになった、それまで世間話をしようと声をかけた



「今回はイヴがここに居て助かった、少し気分が落ちてたから誘われたらしい」

「いいよ、俺も紅茶を人と飲めて嬉しいから気にしないで」

「いや、でも・・・・・そうだな酒でも奢らせてくれ」

「うーん」

「命の恩人になにもしない訳にはいかない」



そう伝えると目をぱちぱちと瞬かせてその後猫のように目を三日月のように歪ませた「!?」

「んーじゃぁさ試しに寝てみない?」

「は?」

「割と溜まってて、だめ?」

「・・・・・いや、悪いけど」



「ちなみに、俺抱く側なんだけどどう?気持ち良くなれる自信あるよ?」

「・・・・・は?」



とさっといつの間にか寝転がっていた・・・

あ?なにが「ちゅ」

「は?」

「ふふ、とりあえずお試しって事で」



そう言いながらイヴは俺の腹の上に乗って楽しそうに顔を近付けて顔に似つかない濃厚なキスをお見舞いされた



「ん、いいねその顔最高に可愛い」

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・あ?」

「うんうん、混乱してていいよ好きに楽しむから」
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